一話 ⑥
食事をしながら、今日見聞きした情報を頭に浮かべる。
「パティスリー家が新しいデザートを作って、それが今度の新店で発売されるんだって。デート行こうね」
「へー、新しいデザート。なんだろう」
「うふふ、なんだっけ。ゼリーを使ったものだって言ってたけど、詳しくはオープンしてお店に来てって言ってた。商売上手~」
「うん、そうだね」
「あと、えーと、そうだ。今度、サンゴショー家の領地に視察に行こう」
「サンゴショー家?」
「うん。すーんごい秘密を聞いちゃったから、気になっちゃった。たぶん、普通では集められないから、視察じゃないとね」
「すごい秘密か。何か、重要なことそうだった?」
「いや、ううん。違うの」
食事をしていた口を止めて、目を開けた。そのまま、エリックの顔を見つめる。
「うん。これは浮気じゃないからね!」
エリックの腰に手をまわして、抱きしめる。エリックは不思議そうな顔をして、レベッカの頭を撫でる。
「サンゴショー家の三男にセオドアって人がいるんだけど」
「うん。聞いたことがあるよ。イケメンなんだってね」
「決して浮気じゃないからね!」
「わかってるよ」
「彼ね~。なんていうのかな。うーん」
どう言葉に表そうか悩む。これは、至極デリケートな問題だろう。
「男色家の人……と似ているというか。なんだろう、普通の人じゃなさそうだった」
「そうなんだ」
「うん。別に悪いことをしているわけじゃないから、皇室に話はしないけど……。そうだな。なんか、辛そうだったんだよね」
言いながら、セオドアの様子を思い浮かべる。
意気消沈とした様子でベッドに座り込み、人の目を気にして、騎士にもたれかかることもしなかった。そんな彼は、とても、生きづらそうに見えて。
「なんか、あたしみたいだなって」
その言葉を聞いて、エリックの眉が八の字になった。優しく、愛しく、髪の毛を漉きながら頭を撫でる。言葉はいらない。ただ、愛を与えて、彼女を慈しむ。
「ふふ。弱音はここまでね。よーし、ごはん食べてお風呂入って寝るぞ」
エリックから離れて、勢いよくごはんを食べだす。
離れてしまった暖かさに寂しさを覚えながら、エリックは微笑んだ。
「ゆっくり食べて。ほら、水も飲んで」
「ありがと」
もぐもぐと口を動かし、瞬く間にお皿が空になっていった。
「今日も美味しいごはんをありがとうね!」
そういって、レベッカはお風呂に入りに行った。エリックはお皿の跡片付けをするために立ち上がった。