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狐の嫁入り流れ星

作者: さばみそ

狐の嫁入り。天気雨。

森に入ってはいけない。

えらい狐の妖怪さんが、嫁入り行列真っ最中。

森に入ってはいけない。

邪魔してはいけない。覗いてもいけない。

昔から伝わる約束事。


そんなことは、まだ知らない女の子。

うっかり雨宿りに森の木の下。

しばらくすると、なにやら楽しげなお歌が聞こえる。

木の影から覗いて見ると、狐の嫁入り真っ最中。

「うわぁ…」

きれいで、めずらしくて、おどろいて、

うっかり声を出してしまった。

うっかり者の女の子。

狐たちが回りを囲む。

「見られたぞ!」「捕まえろ!」「約束を破ったぞ!」

狐たちが怒っている。ごめんなさいも聞いてもらえない。


女の子が怖くて申し訳なくて泣いていると、行列の前からお爺さん狐がやってくる。

狐たちが道をあける。幼い女の子にも、えらい狐さんなのだとわかる。

「お嬢さん、どうしてここにいるのかな?」

やさしく聞いてくるお爺さん狐。

「ごめんなさい。知らなくて。雨宿りしてたの」

女の子はたどたどしく答える。

「そうかそうか。ならば仕方ない。ここで見たことは絶対に内緒だよ。約束してくれるなら帰って大丈夫」

女の子に笑顔が戻る。

「ただし、約束を破ったら… 大変なことになるからね」

女の子は大きくうなずいて走って行った。

途中で何度も振り返り、大きく手を振って。

「ありがとう。さようなら」

と大きな声で帰って行った。


お爺さん狐は長老狐。

お嫁さん狐のお爺さん。

待ちに待ったお嫁入り。楽しく過ごしてもらいたい。

やさしいお爺さん狐。

だけどもお爺さん狐には秘密があった。

誰も知らない、お嫁さん狐も知らない秘密。

その夜、他の狐たちがお酒を飲んで眠ってしまった頃。

お爺さん狐は夜空を見上げて思い出す。

まだ若かった頃の出来事を。


お母さんとケンカして、家出をしてきた女の子。

森で出会った二人は友達になりました。

夜空を見ながら、いろんなことをお話ししました。

すっかり仲良しになった二人。

大人になったら結婚しようと約束しました。

流れ星を見つけてお願いをしました。


あれからずいぶん時間がすぎた。

人と狐は時間の流れが違う。

私はすっかりお爺さん。

あの娘はやっと大人になった。

お母さんと仲直りして、幸せに暮らしているようだ。

「やっぱり親子だ。似た者同士。森に迷うのも似ているね」

私はすっかりお爺さん。孫娘はお嫁入り。

あの娘はやっとお母さん。娘は同じく森に迷う。


約束は守ることが出来なかったけど、

きみも私も幸せになれてよかったね。

お爺さん狐は夜空を見上げる。

女の子が無事に戻ったお母さんも夜空を見上げる。

二人とも昔のことを思い出す。

二人ともお互いのことを思い出す。


流れ星がひとつ


お爺さん狐は何かを願う。

女の子のお母さんも何かを願う。

二人は笑顔で何かを願う。

きっと明日はいい天気。

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― 新着の感想 ―
[一言] ほのぼのしました! 優しい狐さん、好き!
2023/04/23 18:22 退会済み
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