表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

序章 始まりの記録

「なろう主人公もすなる異世界転生といふものを、我もしてみむとてするなり」

とでもいうべきなのだろうか?

 気が付けば俺は、亜人・魔法・剣・魔物といった、異世界ファンタジーで有りがちなテンプレートな異世界に転生していた。

 元々は日本で平均以下のルックスと、平均以下の能力(知的にも身体的にも)。そして勿論、特殊な能力もなければ、異性にモテたこともない、極々普通で平凡以下の凡人だった俺は、これまたテンプレな展開的に、どこの誰とも知らない赤の他人の子供を助けようとして交通事故にあい、それを不憫に思った異世界の神様に所謂チート能力を与えられて、その神様の管理する異世界に転生させられた。

 その後、これまた異世界転生もののテンプレ宜しく、500年ぶりに復活するという魔王が蘇る15年前に転生した俺は、数々の冒険を繰り返し、昨年魔王を討伐し、そしてつい先ほどそのバックにいた大魔王とやらを討伐したところだ。

 その冒険譚が聞きたい?

 悪いが、その話はまた別の機会にしてくれ。

 終わったことだ…正直さっさと忘れたい…。

 といっても、どこかの吟遊詩人だとかが、尾ひれを付けて面白おかしく、ハラハラドキドキするような冒険譚として語り継がれるんだろうな…人の気も知らないで…。


 それはともかく、俺はこれから、生まれた国やら世話になった国や人々。そして、仲間たちを故郷に送り届けないといけない。

 少しは休ませてほしいところだが、今は文句を言うよりさっさとするべきことを終わらせて楽になりたい…。

 そんな気持ちが先立っていた。


 理由?

 そんなものは明白だ。


 神様からチート能力を貰って異世界で無双する。

 それは良い。

 その過程で出会った女の子に、何故かモテる。

 まぁ、それも良い。テンプレだからな。

 仲間が増え、その人間関係に神経をすり減らす。

 …まぁ、仕方ない事だと諦めもつく。

 色々な国に世話になり、それらの国々におけるゴタゴタや政治闘争、権力争いに巻き込まれる。

 …まぁ、それもよくある展開では有るし、既に通った道だ。今更どうこう言っても仕方がない。

 その権力争いや政治闘争の余波で、新しい国の国家元首に任命される。

 …まぁ、それもなろうの異世界転生ものでは有りがちな展開では有るし、大魔王を倒して世界を救った勇者(?)が特定の国に所属するのは、それ以外の国にとって都合が悪いことではあるだろうし、国同士の力関係のバランスを考えれば、独立した小さな国を宛がう方が、それぞれの国にとって都合がいいことも分からなくもない。

 それに伴って、俺を慕ってくれていたパーティーメンバーの女性と別れさせられ、各国の王女や皇女、貴族令嬢等、各国及びそれに関係する組織の要人の娘達と婚約させられる。

 …それはないだろう?

 まぁ、各国の国家元首達の言い分も分からなくはない。

 各国のパワーバランスを維持する為にも、それぞれの国や貴族といったこの世界における要人の娘達を俺と結婚させる。早い話が政略結婚だ。それで、新しい勇者の国(仮)における発言力を持つことが必要だということ。その中に、平民。しかも冒険者の娘が紛れ込めば、その娘は勇者パーティーのメンバーとしては尊重されるだろうが、各国の王侯貴族の娘がその下に側室のような形で入るわけにはいかないし、身分の違うその冒険者の娘はやがて居場所をなくして、いたたまれない思いをするだろうということ。

 そうなる可能性は否定できない。

 何より、彼女はお姫様や貴族令嬢達と違って社交界の恐ろしさや、政治闘争・権力争いの恐ろしさを全く知らない。そんなことに、彼女を巻き込みたくなかったという、俺の個人的な我儘もあった。

 純粋で素直で、素朴で優しい彼女が、その中で上手く立ち振る舞えるかと言われると、俺も唯々諾々と各国のお偉いさん方に従うしかなかった。

 下手に逆らえば、この世界における俺の居場所がなくなってしまうし、大魔王を倒した末に国家同士の争いに巻き込まれて暗殺されるなんてエンディングは嫌だった。


 俺と結婚するお姫様たちも、性格は兎も角として、見た目だけは悪くはない女の子が多かったので、俺は我を通さず、各国の国家元首や要人達のの意向に従うことにした。

 その結果が、あんな事になるなんて、最初は予想もしていなかった。


 え?

 大魔王を倒せる位の力があるなら、自分の意に沿わない国なんて滅ぼせば良い?

 そんなわけにはいかない。

 確かに俺のチート能力を使えば、この世界に存在する全ての国を滅ぼすなんてことは、そう難しい事ではない。

 しかし、滅ぼしてそのあとどうする?

 誰も居なくなった世界で、愛する女と二人っきりで過ごせというのか?


 それも一つの手段かもしれないが、各国の王侯貴族達も決して悪人ばかりではない。

 中には嫌な奴も確かにいたものの、清濁併吞した大人が殆どだ。

 だから、そんな人達を殺したりは出来なかったし、何よりそれらの国々に住む国民達には関係ないことだ。

 俺がチート能力言う名の暴力を使えば、国に仕える多くの人や、そこに暮らす大勢の人々を犠牲にするのは避けられない。


 俺が愛する女性と添い遂げることが出来ないという程度で、そんな人たちにやっと訪れた平穏な日々を奪うわけにはいかなかった。


 それに、俺が愛した女性もまた、それを望まなかった。

 彼女もまた、王侯貴族と共に俺の妻になったとしても、身分的に良くて側室。

 そして、仮に側室になったとしても、権謀術数渦巻く社交界には自分の居場所はなく、一人の女としての幸せよりも、一人の人間として幸せになれる道を探したいと言って、俺の元から去っていった。

 そしてそれを、俺は引き留めることなどできなかった…。


 こうして俺は、異世界転生をしてチート能力を手に入れ、大魔王を討伐し、各国の王侯貴族の姫君達と結婚・または婚約して新たな国家の国家元首となったのであった。

 代わりたいという奴が居たら代わってほしい…。

 何もなくても毎日が平穏だった日本に俺は戻りたい…。

予約掲載を取り入れています。

しばらくは、書き溜めた分を毎日0時に投稿する予定です。

短い話になるかもしれませんが、よかったらお付き合いください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ