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我が家緊急事態宣言!姉が勇者で兄は聖者、妹の私は転生者

作者: 牧野りせ

 気が付けば私は生まれていたらしい。赤ちゃんに。


 生まれて数か月がたった。


 令和の世界で今日も今日とて伝染病患者がうんたらかんたらとかオリンピアな運動会がどうしたとかを遠い他人事のようにニュースを聞いていたのに。


 気が付いたらあかさんっすよ。あかさん。


 体が動かない。ち。


 とにかく私はなぜか死んで生まれ代わった赤ちゃんであるらしい。


 「ミュー。おっきした?」


 「ミューかわいいねぇ。」


 よじよじとベビー別途を除く金髪蒼眼の少女は5歳上の姉でリリーというらしい。素子とその横から同じようにこちらを見る銀髪碧眼の少年は3歳上の兄ロズというらしい。


 その後ろからロズそっくりの女性がこちらを覗いている。彼女は今の母で辺境女伯ネモフィラというらしい。


 「おやおや、今日もみんなお揃いだね。」


 そういって顔を出したのは姉に似た優男。つまり父でクリスという。そして私は末っ子次女のミュゲ。たしかスズランのフランス語がミュゲだったか。毒花やんけ。


 この五人家族。


 ほかに三人のメイドさん?侍女さん?がいて、ほかに騎士と思われる人がいっぱい出入りしているらしい。らしいってのは私が寝ている部屋には今のとこ入ってこないから直接見たことないからである。


 そんな私は妖精と言われるのもが見える。最初は黒い虫だと思った。


 この世界には6つの属性があって、ゲームでおなじみの火、水、風、土、光、闇となっててそれぞれ精霊がいて、その精霊のかごで魔法が使えるらしい。


 いわゆる異世界転生か!これは極めてチートを目指そうではないか!ってわけで手足バタバタしながら精霊とコミュニケーションをとるべく脇目も振らずやっていたら半年でハイハイを覚え、八か月にはヨチヨチ歩きを覚え、一才になるころにはそこそこにしゃべり始めた。


 前世の知識あるんだから理解力は任せとけ。


 そんな私の最初にできたお友達はイモリだかヤモリだかと思われる小さいやつで、庭で見つけては話しかけてノエルって呼んで話しかけていたら私についてくるようになった。


 なお会話は成立しない。返事とか聞こえん。


 「にょえる、はえはきたないよ。ぺっぺしなちゃい。」


 そういうとノエルは「えー!」って不満たらたらな感じ、でんべぇって出した。舌長いね。


 最初は家の人たちもノエルを引いた感じで見てた(というか悲鳴上げてた)けど、うちに出入りする騎士団の人たちが豪快に笑っていたし、母さんもいたずらっ子めって笑うだけだったから気が付いたら私とノエルはセットで扱われている。


 んで、私が二歳を迎えたころ姉ちゃんが7歳の祝福の儀って言われる協会の鑑定を受けたんだけど(ラノベのテンプレか)そこで勇者の称号があるってことがわかった。


 なんせ姉ちゃん世にも珍しい4属性持ち。そのうち聖剣探しに行くとか言い出すんじゃね?


 元々国境を守る辺境伯家の長女なので武芸はすごいらしい。おまけにここ数年は魔物が活性化しているらしいから、本人はとても喜んでる。


 いつも私に「ミューは私が守るからね。」って言ってくれる。


 そんな姉ちゃんの無事を祈り続けた兄ちゃんが七歳になるとなんと聖者の称号があるらしい。だと思ったよ。だって私が転んでけがしても全力ヒールでケロリンパだもん。つまり光属性持ち。


 知ってた。


 だって私いつの間にか鑑定スキル生えてるから。


 そうなると見ちゃうよね。自分のスキル。


 見なきゃよかった。マジで。


 【ミュゲ 勇者の妹、聖者の妹、魔王、闇精霊王の契約者、エンシェントドラゴン(ノエル)の主】


 おっとぉ~?おっとっと~???


 え、待って。私姉ちゃんと兄ちゃんに討伐されるのかな?


 まだ4歳なのにこの運命ひどくない?


 「はは~。はは~。」


 さすが幼児の体、感情のままに涙があふれてぎゃんぎゃん泣いてぽてぽてと廊下を歩いているとあまりの異常事態に家族が大集合。


 「ミュー、どうした!?」


 「いつもお利口でおとなしいのにミューどうしたの!?」


 「お腹痛い!?」


 「ミュー!?」


 体は子供で中身は大人な私はけして騒ぐ子供じゃなかった。だからこそのこのギャン泣きに家族はパニック。


 「ごめ、ごめんなしゃ。」


 おまけに誤ってばかりで話に要領を得ないから根気強く背中を撫でてくれた。


 「みゅぅはねぇねにやっつけられるの。」


 なんとか出た言葉はそれで、心外だといわんばかりに慌てたのは10歳のリリーねぇちゃん。


 「私はミューを傷つけたりしないわ!」


 「じゃぁ、にぃににやっつけられるの。」


 「ぼくだってそんなことしないよ!」


 母に抱っこされながら、背中をとんとんされる。


 「どうして、ミューはそんなこと思うの?」

 

 あーとんとん気持ちいいぞ。


 「だって。」


 眠くなってきた。


 「ん?」


 ちゃんと話さないといけないのに。


 「みゅぅはまおーだから。」


 『は?』


 それだけ言ってしまうと泣き疲れたミュゲは寝てしまい、ネモフィラは高位鑑定持ちの夫と頷きあうと、クリスは末娘の体に手をかざす。


 「どうなの?」


 「間違いない。ミュゲは魔王の称号持ちだ。」


 「なんですってぇ!?」


 「我が家の天使が……。」


 「き、緊急事態宣言!!緊急会議を行う!緘口令を発令!なんとしてもミュゲは守るわよ!」


 などと家族の慌てぶりを知らないミュゲは知恵熱を出して三日三晩眠り続けた。



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