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Red JAPAN 赤い日本  作者: 扶桑かつみ
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フェイズ03「ソ連対日参戦と沖縄決戦」

 1944年6月9日、マリアナ諸島近海で日本軍とアメリカ軍の決戦が行われているまさにその時、ソ連は日本に対して宣戦を布告した。

 無論狙い澄まして宣戦布告したのであり、ヨーロッパでのアメリカに対する負の感情が強く影響していたと言えるだろう。

 

 ソ連赤軍は、自らが手を出すことのできる、満州国、内蒙古、朝鮮、南樺太、千島列島への侵攻を開始し、総兵力は満州になだれ込んだ兵力だけで169万人に達した。

 総兵力は、200万人を優に超えていた。

 

 一方日本軍も、漫然とソ連との開戦を迎えた訳ではなかった。

 支那からの大幅な補強などにより、満州には約80万人の大部隊を配備していた。

 華北や内蒙古方面の大きく強化された。

 千島列島先端部の占守島にも、十分な兵力を置いていた。

 防衛が希薄だった南樺太にも、各地からの転進で2個師団分の戦力が配備された。

 日本側の目算としては、陸軍部隊が防いでいる間に、海軍がアメリカとの決戦に勝利して何とか講和もしくは停戦に持ち込もうというものだった。

 

 しかし、余りにも懸絶した物量の差を覆すことはできなかった。

 ソ連赤軍は、ドイツ軍と相対した時とほとんど代わらない軍備を維持して、日本との開戦を迎えた。

 無論日本に向けられた戦力は、数にして延べ300万人ほどだが、その300万人とはソ連赤軍の中でも殆どが精鋭部隊に属していた。

 陸海軍二つが並び立ち、双方が対立し合った状態の日本軍に敵う道理がなかった。

 

 日本側が予測も出来なかった約一ヶ月という短い時間で、満州国の過半と朝鮮北部沿岸を奪われることになった。

 

 侵攻を急いだソ連側にも満州内だけで約50万人もの死傷者が出たと言われているが、結果は日本軍の惨敗だった。

 無敵と宣伝されていた関東軍は、ここに潰えた。

 戦死者の数も、軍人だけで50万人以上に達した。

 ロシア人の戦争特有の残虐な行為を含めると、日本人の死者の数は80万人に達すると言われている。

 

 千島列島先端部は、ソ連軍の稚拙さにも助けられて二ヶ月以上にわたり何とか保持されたが、地上でのソ連軍は日本軍とは比較にならないぐらい強かった。

 主力部隊の壊滅した大陸では、開戦から二ヶ月目には既に満州から華北地方にまで入り込みつつあった。

 


 一方アメリカ軍も、前進を強化した。

 

 欧州から大軍をアジア・太平洋方面に移動しつつあり、戦争は米ソどちらが早く日本本土に達するのかというのが争点となりつつあった。

 

 日本の敗北は、連合軍の中ではすでに確定事項だった。

 いつ降伏するか、誰が占領するかが問題だった。

 

 その日本は、海軍主力を燃料不足から南方に配置して、次なる決戦の準備を彼らなりに進めた。

 

 手を挙げる方法を知らなかったが故の愚かさだった。

 

 そして皮肉というべきか、日本近海のシーレーンをまだ保持していたため、各地への兵力移動は比較的順調だった。

 次の戦場になることが間違いない北海道、沖縄双方には、最低でも軍(軍団)クラスの戦力が置かれ、日本本土も急速に本土決戦の準備に入った。

 フィリピンからの兵力移動はかなりの妨害に合ったが、それでもフィリピンに配置した兵力の約半数が、日本本土、沖縄、台湾に移動した。

 もはや南方航路やシーレーンの保持どころではなかった。

 

 まだ何とか維持されている海上交通線も、全力を挙げて日本本土への物資輸送を行った。

 

 また支那戦線はさらに大きく縮小され、残された兵力は沿岸部や黄河流域、朝鮮半島に集中し、かなりの数が満州を食い尽くしたソ連赤軍と対峙するようになる。

 

 そしてソ連軍が占領地の地固めと日本本土の渡洋侵攻の準備に入って停滞すると、今度はアメリカ軍の動きが活発化した。

 

 この頃の日本は、アメリカで言うところの「ガントレット」状態だった。

 

 石油の豊富なシンガポール近辺で訓練に明け暮れていた聯合艦隊主力は、ブルネイで最後の補給を済ませると、可能な限りのタンカーを護衛しつつ日本本土への帰路を急いだ。

 

 そして日本の大本営は、日本本土近辺での決戦のための作戦、「決号作戦」の発動準備に入った。

 

 マリアナ諸島からアメリカ軍の超大型爆撃機群が押し寄せるか、北海道にソ連が侵攻するまでのこの数ヶ月が、日本にとっての戦争の帰趨を決する最後のチャンスだった。

 

 少なくとも日本人達のかなりがそう考えていた。

 

 そして幸いな事に、日本海軍の主要艦艇にまだ損害はほとんどなく、一定の戦闘力は保持されていた。

 

 そして不幸な事に、日本人達が自分たちはまだ戦えると考えていた根拠の最も大きな柱こそが、日本海軍が一見健在だった事だった。

 


 1944年10月20日、アメリカ軍は多くの作戦を端折って、一気に沖縄に侵攻した。

 

 アメリカ軍としては稚拙な攻撃で、近在にマリアナ諸島以外の拠点がないので陸軍機が使えなかった。

 数だけは揃えられた上陸部隊の訓練と準備も中途半端だった。

 

 とにかく日本本土に足をつけることを優先したため、パラオ諸島、台湾もしくはフィリピン、硫黄島の攻略は後回しにされた。

 急な作戦で不足する強襲上陸兵力も、各地から可能な限り集められた。

 

 幸いにしてヨーロッパからの兵力移動は順調であり、ハワイやオーストラリアには、既に日本本土侵攻のための部隊が作戦準備に入っていた。

 準備不足は仕方ないが、戦力の多さが多くの欠点をカバーできると考えられた。

 否、考えることにされた。

 ソ連との日本占領競争に後れを取ることは、戦後政治の失点になるからだ。

 

 そしてアメリカとソ連にとって、日本との戦争は既に戦後処理問題と新たな世界での争いであった。

 

 様々な言葉で飾られていたが、日本は既に政治的に利用されるだけの価値しかなかったのだ。

 

 しかし生け贄となった日本に、選択の余地はなかった。

 まずは最も強い侵攻部隊を追い返さない限り、明日は切り開かれないのだ。

 

 ここで日本海軍は、燃料の枯渇もあって全力出撃を決意する。

 さらに特攻を中心とした航空総攻撃でアメリカ軍との決戦に及んだ。

 

 死命を賭けた総力戦だった。

 


 沖縄本島周辺での戦いは10月21日から23日にかけて行われ、かつてないほどの激しい戦闘となった。

 

 このときの戦闘は、日本航空戦力の自爆攻撃と水上艦隊による総攻撃が、アメリカ軍の予測を越えた攻撃だったため予想以上の戦果を挙げた。

 艦船5000隻、総兵力50万人、上陸兵力18万人と言われた史上空前の侵攻部隊は、特に主力上陸部隊において壊滅的打撃を受けることになる。

 

 また高速空母21隻を擁した米英の空母機動部隊は、神風攻撃隊を含む激しい波状攻撃を受けて、損害の多さから特攻攻撃を防げなくなった。

 

 一時的には半壊状態に追いやられた。

 

 このため制空権の面で戦線を維持できなくなって、上陸作戦中にも関わらず一部艦隊が後退を余儀なくされた。

 

 防御力に劣る護衛空母群約20隻にも損害も続出し、こちらも半壊に近い損害を受け、同じく戦線維持に不安を感じて後退と再編成を強いられた。

 つまり沖縄近辺での連合軍の制空権に、大きな不安が発生していた。

 

 そこに日本海軍が全力で突っ込んできた。

 

 しかも空母を主軸とした艦隊決戦と見せかけた、水上打撃艦隊による「殴り込み」だった。

 

 世界最強を誇っていた連合軍艦隊は、インディアンの群に翻弄される幌馬車の群に成り下がってしまったのだ。

 

 矢面に立たざるをえなかったのは、上陸援護に回っていたアメリカ軍の旧式戦艦部隊だった。

 空母部隊を護衛していた高速戦艦群も各艦隊から分離して急行しつつあったが、余りにも予想外の日本海軍の攻撃に間に合わなかった。

 

 制空権崩壊の間隙を突いて突進してきた日本海軍主力部隊は、貧弱な航空攻撃を自らの防御力で耐え抜くと、旧式戦艦部隊めがけて突進。

 

 輸送船団撃滅を命令されていた主力艦隊は、「天佑」を叫びつつ旧式戦艦部隊を力任せに粉砕した。

 


 その間、アメリカ軍の高速空母部隊から分派された新鋭戦艦部隊は、その犠牲の上に上陸部隊の間に割って入ったが、騎兵隊の登場とはならなかった。

 

 一度の艦隊決戦で傷ついた日本海軍打撃艦隊だったが、戦意は異常な程高かった。

 今回の戦いで勝利を重ねてきた上に、空母の護衛だった有力艦艇群が、途中空母部隊から分離して主力部隊に合流していたからだ。

 

 また制空権を奪われていないので、上空援護を連れていた。

 しかも上空援護ばかりではなく、艦隊と共に突撃する多数の神風攻撃部隊が、アメリカ軍の最も悪いタイミングで突撃していった。

 これほどタイミング良く日本軍が攻撃出来たのは、空母部隊が我慢して攻撃隊を放つのを待っていたからだった。

 

 そしてアメリカ艦隊の陣形は、艦隊決戦のために単縦陣となって対空密度は低下していた。

 しかも水雷戦隊が日本艦隊に突撃を開始したところで、低空から殺到した「カミカゼ・ストライク」の察知となった。

 

 既に日本海軍の誇る「ミステリアス・ヤマト」のマストが目視できる距離だった。

 

 そしてアメリカ軍の高速空母部隊から分派された新鋭戦艦部隊は、逃げることを許されなかった。

 

 彼らのすぐ後ろには、嘉手納湾から逃げようとパニック状態の上陸部隊がどうにもならない状態でひしめいていたからだ。

 


 戦闘の結果、日本海軍は二度目の伝説をうち立てた。

 

 合わせて20隻も投入されたアメリカ軍の戦艦は、新旧合わせて10隻以上が海の藻屑と消えた。

 生き残りの殆ど全ても損傷を負って後退を余儀なくされた。

 文字通りの「全滅」だった。

 

 二度の艦隊決戦を乗り切った日本海軍も、戦力の半数近くを既に失っていたが、もう関係なかった。

 

 獲物はもう目の前だった。

 しかも上空には、輸送船団に狙いを定めた特攻部隊が殺到しつつあった。

 

 「勝利」は目前だった。

 


 全ての防衛網を突破した残存日本艦隊は、上陸作戦が既に開始されていた嘉手納湾に突入。

 特攻部隊がアメリカ軍の混乱と損害に拍車をかけた。

 上陸部隊と支援部隊は、逃げることもままならず洋上待機を含め5個師団とそれを乗せていた輸送船団が、文字通りの全滅といえるほどの壊滅的打撃を受けることになる。

 

 一連の戦闘によって米海軍は、一時的とは言え壊滅的打撃を受けた。

 しかも上陸部隊の壊滅により、沖縄からの撤退を余儀なくされた。

 特に水上打撃戦力は、一から再建しなければならないほどの損害を受けた。

 

 間違いなく、日本海軍の戦略的勝利だった。

 

 これが最盛期のアメリカ合衆国とアメリカ軍でなければ、戦争の帰趨すら決していたかもしれない。

 

 結局アメリカ軍の進行スケジュールは、半年は遅延したと言われることになる。

 多くが損失ではなく損傷で済んだ高速空母部隊の再建ですら、最低三ヶ月は必要と判定された。

 

 半年の遅延で済むのも、欧州からの兵力と物資、兵器の転用が行えたからだ。

 太平洋に存在する戦力だけなら、一年以上は戦争スケジュールが遅延しただろう。

 


 そして勝利した日本海軍だが、損害はアメリカ海軍以上に大きかった。

 

 侵攻船団殲滅のため最後まで戦闘継続した戦艦群は、沖縄本島各地に座礁して放棄された。

 生き残って日本本土に帰り着いた艦艇は、戦力枯渇で引き返した空母部隊の一部を除けば、僅かな数の巡洋艦と駆逐艦だけでしかなかった。

 

 戦艦に例外はなく、作戦参加した11隻の戦艦たちは、二倍以上の数を誇った米戦艦部隊と対決して各個撃破の形で勝利し、さらに侵攻船団と差し違えてその使命を全うしたのだった。

 

 そして自らの壊滅と引き替えに勝利を掴んだことで、アメリカ軍は日本海軍に勝利することは二度とできなくなった。

 アメリカ軍が勝ちたくても、日本海軍の実質はもう存在しないのだ。

 何をどうしようが、アメリカ軍が勝つことは不可能だった。

 


 なお、米英軍の最終的な人的損害つまり戦死者数は、作戦参加者全体の約3分の1に当たる18万人近くにも達した。

 



※備考 「沖縄決戦時 日本海軍作戦参加艦艇」


 第二艦隊


第一遊撃部隊 第一部隊(栗田健男中将)


・第一戦隊:戦艦《大和》《武蔵》《長門》《陸奥》

・第四戦隊:重巡洋艦《愛宕》《高雄》《摩耶》《鳥海》

・第五戦隊:重巡洋艦《妙高》《羽黒》

・第二水雷戦隊:軽巡洋艦《能代 》 駆逐艦:9隻


第一遊撃部隊 第二部隊(鈴木義尾中将)


・第三戦隊:戦艦《金剛》《比叡》《榛名》

・第七戦隊:重巡洋艦《鈴谷》《熊野》《利根》《筑摩》

・第十戦隊:軽巡洋艦《矢矧》 駆逐艦:6隻


第一遊撃部隊 第三部隊(西村祥治中将)


・第二戦隊:戦艦《山城》《扶桑》 

・第十六戦隊:重巡洋艦《最上》《青葉》 軽巡洋艦 《鬼怒》

駆逐艦:5隻



 第三艦隊(小沢機動部隊)


 第一群


・第一航空戦隊:(艦載機約200機)

 正規空母《信濃》《瑞鶴》《飛龍》《雲龍》

・第四航空戦隊:航空戦艦《伊勢》《日向》

・巡洋艦戦隊:軽巡洋艦《多摩》《五十鈴》

・第三十一戦隊:軽巡洋艦《大淀》 護衛駆逐艦:4隻 防空駆逐艦:4隻


 第二群


・第三航空戦隊:(艦載機約150機)

 軽空母 《隼鷹》《千代田》《千歳》《龍鳳》《瑞鳳》

・第二十一戦隊:重巡洋艦《那智》《足柄》

・第一水雷戦隊:軽巡洋艦《阿武隈》 駆逐艦:7隻



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