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天の川銀河の屠龍戦艦  作者: 月汰元
第2章 太陽系航路編
44/55

scene:44 選択する国々

遅れてすみません。

予約投稿をミスしていました。

 日本が単独で異星人と交渉したことを知った各国は、軽率だと非難する声明を発表した。だが、一刻でも早く交渉の内容を知りたがった。そこで、アメリカが主要二〇ヶ国で首脳会議を開くことを提案した。

 各国首脳が承諾し、アメリカで首脳会議を開くことになる。小寺総理は交渉内容を分かりやすく纏めた資料を用意するように命じた。


 その資料作りに参加することになった芹那。航空宇宙センターに泊まり込んで、スマホで撮った宇宙の光景を編集した。

 官僚と航空宇宙センターが作った資料が揃い、首脳会議の日取りが決まる。

 小寺総理はアメリカに飛んだ。


 アメリカが用意した会場は、国際連合本部ビルだった。警備の都合上ここしか用意できなかったのだ。

 会場に集った首脳たちの視線は、小寺総理に集中した。

 小寺総理はユピテル号に招待された経緯を説明。そして、ユピテル号内部での出来事と異星人の姿を語った。首脳たちは興味を持って聞いている。


 総理の話が宇宙クラゲに関するものに移り、その数を告げた時、会場全体に重い沈黙が広がった。

 ポーカー大統領が厳しい顔をして声を上げる。

「それは本当なのか?」

 小寺総理は、ユピテル号でもらった宇宙クラゲの分布図を会議室の壁にあるモニターに映し出した。その分布図を使って、総理が説明した。


 イギリスのエメライン首相が、額にシワを作って問う。

「ユピテル号のクルーは、どんな援助をしてくれると言っているのですか?」

「まずは、技術的援助を申し出てくれました」

「その具体的な内容を教えてください」


 小寺総理は、スペース機関砲・ヒムラルエンジンのことを説明した。

「それだけなのですか?」

 エメライン首相が失望したような声を上げた。

「ですが、この二つがあれば、地球と宇宙を往復する小型攻撃機が製造可能だと言っていました」


「なるほど。地球に近づく宇宙クラゲは、その小型攻撃機で始末できるというわけですね」

 エメライン首相は納得してくれたようだ。


 その援助を受けるためには、ユピテル号と条約を結ぶ必要があることを、小寺総理が伝えた。

 理由として、恒星間基本法の例外条項について説明する。それを聞いた各国首脳は考え込んだ。条約を結ぶということは、重大事項である。

「最後に申し上げますが、条約を結んでいない国にユピテル号から提供された技術情報を渡すことはできないそうです。理由は、天神族が禁止しているからです。宙域同盟の知的生命体にとって、天神族は絶対的な存在なのです」


 小寺総理は最後に芹那と袴田理事が撮影したプラネットシャトルからの光景をモニターに映し出し締めくくった。

 月が次第に大きくなり、その裏側がモニターに映し出される。各国首脳が同時に息を呑んだ。


 国際連合本部ビルでの首脳会議が終わった直後、メルギス種族の探検船から申し出があった。リュリアス号に各国首脳もしくは代理を招待するというものだ。

 アメリカ・中国・ロシア・イギリス・フランスの首脳が招待された。アメリカと中国、ロシアは代理が参加し、イギリスとフランスは首脳が参加した。


 二日ほどの日程で、リュリアス号で過ごした各国代表は、ウサギを擬人化したような異星人と交渉したらしい。地球に帰還した各国代表は、国連加盟国の代表を国際連合本部ビルに集め報告会を開いた。

 まずは日本がユピテル号の様子と条約の条件について説明し、次にリュリアス号から戻った代表たちが報告した。


 大体の内容は、ユピテル号と同じである。ただリュリアス号から地球人に渡される技術情報は、ユピテル号より多かった。

 リュリアス号はスペース機関砲と旧式のロケットエンジンの他に、旧式のレーザー砲や原始的な操縦システムも提供すると提案した。


 報告が終わり、イギリス首相が最後に告げる。

「条約を結ぶかどうかの回答期限は、一〇日後になりました。そして、ユピテル号と条約を結んだ国とは条約を結べないそうです」

 その言葉に小寺総理が反応した。

「なぜですか?」

「リュリアス号のクルーは、混乱を避けるためだと言っています」


「意味が分からない。なぜユピテル号とリュリアス号の両方に条約を結べば、混乱が起きるというのです」

「我々も理解したわけではないが、宇宙には複雑な状況があるのだろう」

 各国はどちらと条約を結ぶべきか協議した。圧倒的にリュリアス号と条約を結ぶべきだという国が多い。


 リュリアス号との条約に積極的なのは、アメリカと中国である。最初に英語と中国語でコミュニケーションを取ろうとしたことを重視しているらしい。

 それにリュリアス号は第二階梯であるメルギス種族を代表する船であるが、ユピテル号は一介の屠龍猟兵の船にすぎないという点も重視していた。


 納得できる理由である。しかし、小寺総理はユピテル号の艦長がリュリアス号について警告していたことを思い出した。

 ユピテル号に対抗するように、各国代表を船に招待し技術情報を渡すことを提案。そして、ユピテル号と条約を結ぶことをやめさせようとするような条件追加。小寺総理は腑に落ちないものを感じた。

 各国は自国に持ち帰り、どちらと条約を結ぶか政府内で話し合うことになった。


 日本ではどちらの船と条約を結ぶべきか大きな話題となっていた。ソウヤの家族も話題とすることが多くなった。

「姉さんはどう考えているの?」

 妹の美穂が、ユピテル号に乗船した芹那に尋ねた。

「もちろん、ユピテル号よ。信用できるもの」

「へえ、姉さんがそんなに信頼する艦長さんに会ってみたい」


 芹那は艦長のオルタンシアを信頼しているわけではなかった。ソウヤたちなら、地球を見捨てないだろうと考えていただけである。

「どちらが科学技術は上なの?」

「そうね。メルギス種族は第二階梯種族だから、リュリアス号かな。でも、今回の場合は関係ないのよ。そんな進んだ技術は恒星間基本法によって、譲渡禁止なんだから」


「お父さんはどう思う?」

「そうだな……私なら芹那の目を信じるよ」

「そんなんじゃダメよ。自分で考えなきゃ」

「そういうお前はどうなんだ?」


 美穂は首を傾げて考える。

「やっぱり、ユピテル号かな。人間ほどの大きさがあるウサギなんて、ちょっと不気味じゃない」

 芹那は深い溜息を吐いた。

「宇宙には様々な知的生命体がいるのよ。姿形で決めるべきじゃない」

 日本の各家庭で、同じように議論が起きたらしい。


 日本政府は話し合い、小寺総理がユピテル号と条約を結ぶことを決定した。日本国民の世論も、ウサギよりエルフのような女性異星人と条約を結ぶべきだという声が多かった。

 日本以外は、リュリアス号と条約を結ぶべきだという意見が多いらしい。

 最終的に、ユピテル号と条約を結ぶと決めた国は、日本と台湾、インドネシア、インド、それに開発途上の数ヶ国だった。インドは最近中国との仲が悪く、中国とアメリカが主導するリュリアス号との条約を拒否する国民が多かったようだ。


 その結果をソウヤたちは受け取り、ちょっとがっかりした。

「何でや。日本て、そんなに人気ないんか」

 ソウヤが嘆いた。それを聞いて教授が笑う。

「日本が人気がないんじゃなくて、ユピテル号のクルーである我々が信用されなかったのよ」


「どうしてだよ。あんな探検船より、ユピテル号の方が強いぞ」

 モウやんも不満なようだ。

「そういう問題じゃない。リュリアス号はメルギス種族の政府が派遣した探検船だけど、ユピテル号は単なる屠龍戦闘艦だというのが問題なのよ」

 アリアーヌが指摘した。


「でも、国連に加盟している国は一九三ヶ国だよ。なのに、ユピテル号と条約を結ぶと決めたのは、たったの一三ヶ国」

「一三ヶ国か。何か不吉な数字だな」

 イチが覇気のない声で言った。教授が笑った。

「宇宙クラゲから地球を守るのには、一ヶ国の協力があればいいのよ。日本は五本の指に入る経済規模を持つ国なんでしょ」


 チェルバがひょこっと顔を出す。

「これからどうするんずら?」

「もちろん、一三ヶ国と条約を結ぶわ」

 ソウヤたちは条約を結んでからのことを相談した。


 五日後、教授はプラネットシャトルに乗って地球に降りた。

 羽田空港近くにあるホテルで調印式が行われ、条約が締結された。その後、教授と各国首脳による話し合いが行われる。

 小寺総理が主導して会議を進めるようだ。

「まず、各国にお願いしたいことがあります」

 教授が声を上げた。


 総理が何だろうという顔をして教授を見る。

「我々専用の着陸施設が欲しいのです」

「それは土地が欲しいということでしょうか?」

 小寺総理の問いに、教授は首を振った。


「海上に浮かぶ着陸施設を造ろうと思っています」

「それだと時間がかかるのではないですか?」

「材料さえあれば、時間はかかりません」

「材料ですか。どれほど必要なのでしょう?」

「金属資源を含んだ小惑星から採掘する許可をもらいたい。それがダメなら、大型タンカー三隻を造るのに必要な金属材料を用意して欲しい」


 小寺総理は難しい顔になった。小惑星から採掘という提案は、日本としては手間がかからないので一番簡単なのだが、一三ヶ国以外の承認が得られるかどうかが問題だった。

「小惑星に関しては、他国と協議する時間をください。ダメな時は日本が責任を持って金属材料を用意します」

 総理は小惑星について難しいだろうと思いながら、返事をした。


 翌日、小惑星についてアメリカと中国に打診した。予想した通り良い返事はもらえなかった。小寺総理は経済産業省に連絡して、金属材料を用意できるか確認した。

 製鉄会社や金属精錬会社、商社などに問い合わせて、何とか集められると分かった。小寺総理は膨大な宇宙クラゲ対策費の中から、金属材料の購入費を捻出して、買い集めるように指示した。


 政府が買った鉄を始めとする金属は、広大な工場跡地に集められた。

 その連絡を受けたソウヤたちは、ユピテル号を地球に降下させ、工場跡地から金属材料を拾い上げ宇宙へと運び上げた。

 全部を宇宙まで運ぶのに、三往復する必要があった。


 ソウヤたちが造ろうとしているのは、傘の開いた松茸のような形をした海上都市である。都市というほど大きくはないのだが、三〇〇〇人ほどが生活できる施設になる予定だ。

 そして、各国政府には秘密にするがステルス潜水艇と脱出用シャトルを搭載することになっている。ステルス潜水艇は、ソウヤたちが日本に上陸するためのものだ。


 ユピテル号はステルスバリアを展開した。その瞬間、望遠鏡でユピテル号を見ていた者は、消えたと思っただろう。

 バリア内部で、異層ストレージに収納してあった万能型製造システムを取り出し、リビングベースの下部に接続した。まるで、親亀の上に子亀が乗っているような格好になる。


 日本が手配した金属材料を万能型製造システムに装填する。ソウヤは海上都市『マレポート』の設計データをシステムに入力した。

 四分割されたマレポートが完成するまで一六時間。四つに分かれた部分を接合するのに、九時間が必要だった。

 それからステルス潜水艇と脱出用シャトルを製作し、マレポートの内部に隠した。


 組み込んだ重力制御装置を使って、マレポートを地球に降下させるのも大変な作業だった。日本が指定した海域に着水させる。

 重力制御装置は譲渡禁止になっているものだ。重力制御装置を回収して、ユピテル号に戻った。

 マレポートは日本政府により回収され、一三ヶ国により運用されることになる。


 マレポートは円形の傘部分と円柱部分に分かれていた。直径三〇〇メートルの傘部分が、プラネットシャトルの着陸施設と移住区になっている。

 円柱部分は機関室や倉庫、水タンクなどだ。

 マレポートの内部に組み込まれている装置は、地球の科学技術で製作可能なものばかりで、恒星間基本法には違反していない。一三ヶ国で運用できるように工夫したのだ。


 地球人たちは僅か数日で、これだけの海上都市を建造した異星人の科学力に畏怖した。一三ヶ国の科学者と技術者が綿密に調査し、海上都市として機能することを確認した。

 マレポートはステンレスよりも頑丈で錆び難い合金で出来ている。姿勢制御装置を動かす動力源は、高効率の太陽電池と水素を使った燃料電池で、地球でもお馴染みのものだ。

 但し地球のものより性能が良い。これらの技術は問題ないと判断された。


 一方、一三ヶ国以外の国々とリュリアス号は、アメリカのモハーヴェ砂漠を拠点として交流することになったようだ。

 中国とロシアは反対したが、アメリカに押し切られたらしい。



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