scene:4 アウレバス天神族の宇宙樹
ソウヤたちは船が係留ポートに接岸すると部屋から開放された。三人は船で一番親しくなった教授に会うために、急いで回収品保管倉庫に行く。
そこには女神のように美しい女性が、ソウヤたちと同じ作業服を着て端末を睨んでいる。教授というあだ名らしいのだが、『姉御』というのが相応しいように思える美女だった。
「何度見ても、教授は美人さんだよね」
「そうやな」
モウやんとソウヤが話していると、教授が苦笑し。
「褒めてくれても、何も出せないよ」
ソウヤたちは教授と初めて会った時、その美しさに度肝を抜かれた。そんなソウヤたちを見て、教授は様々なことを教えてくれるようになる。船長たちやモフィツは種族独自の美的感覚があるので、教授を美人だとは思わないらしい。
故郷では絶世の美人として周囲から注目を集めていた教授は、この船での扱いに不満が溜まっていたようだ。
「教授、今度はどこに着いたんや?」
ソウヤが質問すると、教授は首を傾げる。
「ソウヤ、いつも思うんだけど、同じ言語素子ナノマシンを注入したのに、どうして訛っているのかしら?」
教授が不思議そうに尋ねる。ソウヤは誇らしそうに胸を張り。
「俺の関西弁は祖父さん譲りの筋金入りやでぇ」
意味不明の返答を聞いて教授は溜息を吐く。教授は同族に近い美的感覚を持つソウヤたちに親しみを感じ、様々なことを教えている。だが、地球人には謎が多いと感じているようだ。
「まあいいわ、ここはミクナイル星系。アウレバス天神族の宇宙樹が存在する星系よ」
「アウレバス天神族? 宇宙樹って何?」
モウやんがすかさず質問する。ソウヤやイチも訊きたかったことなので教授の答えを待つ。教授は端末を操作し、モニターにエルフ耳のマッチョマンの姿を表示させた。ボディービルダーのようなムキムキの身体に不釣り合いな繊細な顔、金髪の長い髪、身体が細ければエルフだと思っただろう。
「げっ! マッチョエルフ」
モウやんが声を上げた。
「これがアウレバス天神族よ。天の川銀河全域に渡り活動している第一階梯種族で、オリオン渦状腕を中心とする宙域での支配者種族の一つなの」
「凄い種族なんですね。会ったらどうしたらいいんです」
イチが気になった点を尋ねると、教授が笑う。第四階梯種族の自分たちが天神族に会う機会などないそうだ。文字通り住む世界が違う。天神族がいるような場所は、少なくとも遷時空跳躍船でないと辿り着けない星系であり、下級民の自分たちが天神族に出会すことなどないらしい。
「宇宙樹というのは、アウレバス天神族が開発した宙域封鎖用植物で、一種の結界装置なの。アウレバス天神族は戦利品として得た航宙船から、ストレージ筐体と呼ばれる記憶装置を剥ぎ取り、ガス雲の中に建造した研究施設まで運んで、中に入っている知識や情報を吸い上げたと聞いているわ」
ソウヤたちは驚き、代表してイチが尋ねた。
「宇宙樹が宙域封鎖用植物というのはどういう意味です」
「宇宙樹から放出されるガスは、通常エネルギーのほとんどを吸収し、遮断する効果があるのよ。敵の目から研究施設の存在を隠すのが、目的だったんじゃないかしら」
それを聞いたモウやんが「ふ~ん」と頷き。ソウヤは首を傾げてから。
「教授、研究施設は存在したと過去形で言ったよな。今はないんか?」
「ええ、大昔に別の場所へ移され、アウレバス天神族はここを廃棄したと言い伝えられているわ」
ソウヤは研究施設がないと聞いて、疑問が浮かぶ。
「なあ教授、研究施設がないんやったら、何が目的で船長はここに来たんや?」
「宇宙樹が作り出した特殊ガス雲には、研究施設で調査済みとなったストレージ筐体が、捨てられているの。その中にある知識や情報を、サルベージするためよ」
ストレージ筐体というのは、コンピュータの記憶システムで、地球のパソコンで例えるとハードディスクに相当するものらしい。
「宇宙空間に捨てられたんだろ。壊れてるんじゃねえの?」
モウやんが当然の疑問を口にする。だが、宇宙を航海する船に積まれている装置は、真空の中でも壊れるような作りにはなっていないと説明される。
「昔からあったのですから、すでにほとんどが調査済みではないのですか?」
イチが尋ねると教授は首を振り否定する。
「規模が違う。これを見なさい」
教授が端末に出したのは、宇宙樹の全容である。直径一キロほどもある幹が真空の宇宙に伸び、その枝葉は直径一千キロ以上の宇宙空間を占拠していた。
「バカじゃねーの!」
モウやんが宇宙樹のあまりの巨大さに叫び声を上げる。こんなデカイ樹を作るような奴は正気じゃない。とモウやんは言いたいのだろう。それには後の二人も同意する。
因みに宇宙樹の栄養源は、恒星系内に漂うガス雲だそうだ。ガス雲を栄養として光合成を行い、幹や枝葉、さらには特殊ガスを作り出しているらしい。
宇宙樹の根元付近に漂っているのが普通のガス雲で、宇宙樹の幹や枝の周りを漂っているのが特殊ガス雲である。
「広大な宙域に、何十万個にも上るストレージ筐体が、散らばっているらしいわ」
イチが疑問に感じた点を口にする。
「でも、大量のロボットとかを使って探させたら……」
「ダメよ、宇宙樹から発せられる特殊ガスが存在する限り、ロボットや機械装置は使えないわ」
ソウヤは自分たちが連れてこられたことに関係するんじゃないかと思い付き。
「俺たちも、この宇宙樹に関係しているんやろか?」
教授がいいところに気付いたと相槌を打つ。
「そうよ、この特殊ガス雲の中を調査するには、アバター具現化装置を使うしかないの。でも、その特殊装置を扱うにはある特別な能力が必要なのよ」
その特殊ガスは電気や熱などほとんどのエネルギーを吸収し、あらゆる機械装置を停止させてしまう。その唯一の例外がボソル粒子が関連する天震力というものだそうだ。
ソウヤは何故か予感がした。教授のいう特別な能力というのが、自分たちに関係するんじゃないかと思えたのだ。
「それはボソル粒子を感じる力……ボソル感応力よ」
地球では発見されていない思考に反応する素粒子であるボソル粒子は、驚くべき可能性を秘めたものだ。ボソル粒子は高次元で『天震力』を吸収し、通常空間に運び込むことが可能である。天震力とは高次元エネルギーの一種で、原子力エネルギーを凌駕するエネルギー源となる。
「そのボソル感応力ってのは、俺たちに関係あるんか?」
ソウヤが教授に尋ねた。教授は大きく頷き。
「大ありよ。船長が君たちを買ったのは、ボソル感応力を持っていると言われたからなの」
「ええ~っ、そんなの持ってないよ」
モウやんが声を上げた。イチは溜息を吐いて、モウやんの間違いを指摘する。
「モウやん、日本で『ボソル感応力』なんて調べたことないでしょ。調べたこともないのに、持っているかいないかなんて分からないよ」
教授に自分たちがどれ位ボソル感応力があるか尋ねると。
「三人ともレベル1。才能があっても本格的な訓練をしていない者は、皆そうなの」
レベル1だと言われてもソウヤたちには、それがどれほどなのか分からない。
「レベル1だと、なんとか思考制御型ツールを動かせる程度。レベル2だと、大型思考制御型装置を動かせる。レベル3だと、ボソル思考型航宙船の操縦が可能となり、レベル4だと、思考制御型ツールを作製可能となる。そして、レベル5だと、複雑な思考制御型装置を作製可能なほどなの」
思考制御型というのだから、考えただけで機械を動かせるのだろう。ソウヤは何だかワクワクしてきた。
「因みに、この船は思考型なの?」
イチの質問に教授が首を振る。
「そんな高級船に見える。船舶用制御脳の補助を受け、航宙士が手で操縦する通常型の船よ」
イチは意外に思った。科学が発達した世界において、手で操縦する必要があるのかと考えたのだ。その点を聞くと教授は笑い説明してくれる。
「通常の航行なら、船舶用制御脳に任せても大丈夫。でも、非常時には人の判断が必要な場合もある。特に宇宙怪獣が出た場合は、センサーが役に立たなくなることが多いので尚更よ」
ソウヤたちは「へっ!?」と奇妙な声を出して驚く。余りにも意外な言葉を聞いたからだ。子供向けのテレビ番組じゃあるまいし、宇宙怪獣はないだろうと三人は思う。
「宇宙怪獣やてぇ、そんなんおるんか?」
ソウヤが思わず大きな声を出す。教授は当然という表情で。
「正式な名称は『敵性大型宙域適応生物』よ。普通『宇宙怪獣』とか『星害龍』とか言われているわ」
「星害龍……ドラゴンなの?」
モウやんが急に目を輝かせて教授に迫る。
「最初に作られたのがドラゴン型だったから、星害龍と呼ぶようになったと聞いている」
教授によると星害龍は、アウレバス天神族によって作られた生物兵器だという。遥か昔、三つの天神族同士で戦いが起こり、アウレバス天神族が宇宙空間に適応し、敵を攻撃する生物兵器を開発。
それがドラゴン型の生物兵器である。その後、様々な生物兵器が開発され、戦いに投入された。だが、戦いは膠着状態に陥り、休戦協定が結ばれた後、ほとんどの生物兵器は幾つかの星系に集められ、星系ごと封鎖。
後に、生物兵器の価値に注目したある種族が封鎖シールドを破壊したことから、生物兵器である星害龍たちが逃げ出し、野生化した生物兵器が多くの種族の脅威となった。
「創り出したアウレバス天神族が、責任を持って始末すればいいのに」
モウやんが思ったことを口にする。
「天神族たちが競い合うように、銀河全域に活動範囲を広げている時期だったのが災いし、星害龍の始末は後回しにされたの。傍迷惑な話だけど、大いなる知識と力を手に入れた天神族にとって、星害龍などその程度の存在でしかなかったのよ」
その後、星害龍と呼ばれる生物兵器は、オリオン渦状腕の全域に生息域を広げ、繁殖し数を増やしたのだそうだ。
「星害龍の存在は怖いが、災いばかりではない。星害龍の身体の一部は、高価な薬や工業製品の素材となると分かったの。星害龍を狩って生計を立てている者たちもいるほどよ」
星害龍を狩る者たちを『屠龍猟兵』と呼び、組合みたいなものがあるそうだ。ソウヤはライトノベルに出てくる冒険者ギルドを連想する。
オリオン渦状腕で活動する知的生命体は、天神族の下で緩い同盟関係を結び、星系間問題に対応している。この同盟の正式名称は『オリオン渦状腕宙域文明同盟』であるが、一般には『宙域同盟』と呼ばれている。
その宙域同盟に所属する星系には、必ずと言っていいほど屠龍猟兵組合が存在した。それほど星害龍は一般的な存在であり、知的生命体が活動する宙域に寄ってくる性質を持つ星害龍は、星系政府にとって身近な災害なのだ。
星害龍は、アウレバス天神族により星間航行能力を付与されている奴もいる。具体的にいうと遷時空スペースに遷移する能力なのだが、星害龍のほとんどは遷時空スペースでの推進能力が低レベルなので、人間の航宙船ほどの移動速度はない。
その時、持たされていた端末に船長からの呼び出しが入った。
『地球の小僧どもとオルタンシアは2番ハッチに来い』
教授が席を立ち出口へと向かう。
「君たちも呼ばれてるんでしょ。行くわよ」
ソウヤは教授の本名が『オルタンシア』だというのを思い出した。三人は教授の後を追い2番ハッチへ向かう。宇宙船の通路というのは狭い、それに複雑な形状をしていることが多いと教授から教わっている。限られた空間を有効活用しようとすると必然的にそうなるらしい。
四人は曲がりくねった通路を船首の方へ進む。居住区画や作業区画以外は、人工重力が存在しないので無重力の状態で移動する。床や壁を蹴って飛翔するように進むのだが、このやり方を覚えるまで三人は苦労した。
2番ハッチの前にゲロール船長とゲコジブ、それに一人の美少女が待っていた。カエル人間と美少女の組み合わせは、ミスマッチ感が強い。ソウヤたちはブロンドで青い瞳をした少女の出現に驚く。今まで船の中にいた異星人は、カエル人間とか豚人間がほとんどで、唯一の例外が教授だった。なので、こんな美少女がいるとは思わなかったのだ。
この少女はアリアーヌという名前らしい。ソウヤたちと同世代の少女で背丈は一五〇センチほど。ほっそりした少女で深窓の令嬢という感じだ。
「遅いぞ、貴様ら!」
ゲコジブがソウヤたちに怒鳴り声を上げた。ゲロール船長はゴミ屑でも見るような視線をこちらに向ける。
「もういい、急いで行くぞ」
2番ハッチから宇宙ステーションに入った一行は、広い通路を通ってホテルのフロントのような場所へ到着。ソウヤたちは宇宙ステーションの内部なので未来的な機械で埋め尽くされているのかと想像していたが、機械と呼べるようなものは数えるほどしか無く、本当にホテルのようだ。
宇宙ステーション全域には地球の八割ほどの人工重力が存在しており、ソウヤたちにとっては動き易い。
ソウヤたち以外にも大勢の異星人の姿がある。髪や眼の色、肌の色は様々だったが、自分たちと同じ人間? ……だった。
ソウヤたちは船長の後について五分ほど歩き、第一センターと書かれているドアを開け中へ。中は銀行の受付のような部屋になっている。
ゲロール船長が真っ白なカウンターがある受付の所まで行き、額に小さな角のある受付嬢に話しかける。見掛けは綺麗な女性なのだが、怪しい雰囲気満点の女性で魔女のようだという第一印象をイチは抱く。
後で知ったが、ミニュル種族の女性で寿命が平均三〇〇年ほどの長寿種族らしい。
「ケビスダール星のアリアーヌ・ヴァン・ロンジールが、所有しているアバター具現化装置の使用時間を使いたい」
「登録ナンバー1245871257のアリアーヌ・ヴァン・ロンジール様ですね」
ゲロール船長が「そうだ」と答える。
「本人であることを確認するため、生体パターン認識装置へ体の一部を乗せてください」
微笑みを浮かべた受付嬢は、カウンターの隅にある機械を指差した。その機械は四角い台座の上に直径二〇センチほどの金属球が乗っているような形状をしており、台座に小さな表示装置が付いていた。
ゲロール船長は、大人しく従ってきた少女に手を乗せろと命じる。その横では、ゲコジブが懲罰スイッチが組み込まれている腕輪型端末を脅すように突き出す。
少女は嫌々という感じで手を生体パターン認識装置へ乗せる。金属球が微かにブーンと振動する。一〇秒ほどで結果が出た。
「確認が取れました。アリアーヌ・ヴァン・ロンジール様」
ゲロール船長がニヤリと笑い、満足そうに頷く。
「アバター具現化装置の使用時間は、どれくらいになる?」
ゲロール船長が尋ねると受付嬢が。
「二一時間の契約となっております」
後で教授から説明を受け『アバター具現化装置』とは何かをソウヤたちは知る。知的生命体の精神を取り出し、ボソル粒子で作った仮想ボディに移す装置で、仮想ボディなら特殊ガス雲の中でも自由に動けるのだそうだ。
「お前、こいつらを機能整形クリニックに連れて行って、記憶領域追加処置を施せ、一人五万クレビットもあれば十分だろう」
教授は承知したと頭を下げ、ソウヤたちを連れて機能整形クリニックへ向う。場所はタブレット端末で調べ、すぐに分かった。
宇宙ステーションだというのにショッピングモールのような場所だ。人通りも多く、地球人と同じ姿の知的生命体が多数行き来している。
教授に宇宙ステーションの人口を尋ねると、二万人ほどが住んでいると言う。
「教授、このまま逃げられないの?」
モウやんが教授に尋ねる。教授は周りを見回し監視装置の類がないのを確認。
「不用意なことを言ってはダメよ。調教端子の有効範囲は、それほど広くないけど、微弱な電波を出しているの。探知機で探せば、すぐに発見される。待っているのは懲罰スイッチ、死ぬような苦しみを味わうことになるわ」
調教端子は専門の医療マシンでないと取り出せないらしく、教授は諦めろと言う。
通路を歩きながらイチが教授に、
「教授、記憶領域追加処置というのは何です?」
「脳の一部を有機記憶素子に変換し、外部から情報の出し入れを可能にする処置よ。以前に言語素子ナノマシンを使って、公用語を覚えさせられたでしょ。あれに似てるわ」
ソウヤたちは不安そうに教授を見る。やはり脳を弄られると聞くと平気でいられない。
「大丈夫、安全な処置よ。あたしも同じ処置をしているから安心しなさい」
教授はそう言ったが、本当は危険な処置だった。失敗する確率が一割ほどあり、この処置を受ける知的生命体は余程必要に迫られているか、ソウヤたちのような下級民に限られている。
但し、その危険を最小限に抑える方法がある。裕福な者は細胞レベルで徹底的に自分の身体を調査し、処置に耐えられるかどうかを確認した上で行うのだ。
「外部と情報のやり取りするんやろ。どうやってするんや?」
ソウヤが疑問に思った点を訊くと、教授は自分の耳を見せた。そこには銀色に光る小さなピアスホールがあり、それが接続端子となっているようだ。
「うちの小学校はピアス禁止なのに……」
モウやんがしょうもないことを言う。イチが呆れた顔をしてから、肝心な疑問を問う。
「そんな処置が、何で必要なんです?」
「精神は肉体とつながっている。仮想ボディに精神を移し活動させ、有用な知識を持って帰る場合に、知識の入れ物が必要なのよ」
機能整形クリニックは歯科医の治療室に似ていた。白い壁に囲まれた空間に治療用の椅子が一つあり、腕が四本ある医療ロボットが待機している。
教授は医療ロボットへ記憶領域追加処置を依頼する。
「二〇ピルラの記憶領域を二つ直列につないだ形で、追加処置して頂戴」
ピルラとは、地球の単位であるテラバイトに相当する単位らしい。
「記憶領域ヲ二ツニ分ケマスト追加料金ガ発生シマスガ、ヨロシイデスカ?」
「構わない」
「一つでいいんじゃないの?」
モウやんが不安そうに言う。
「これには訳があるのよ。後で説明するから早く処置をしてもらいなさい」
三人はビビりながらも順番に椅子に座り、医療ロボットの処置を受けた。処置は簡単で調整されたナノマシンが入っている注射を首に打たれただけである。
記憶領域が形成されるのに一時間ほど時間がかかるというので、クリニックの待合室で長椅子に座って待つ。
そのうち強力な睡魔に襲われた三人は気を失うように眠り込んだ。そして、目が覚めた時、異変に気付く。頭の中にポッカリ穴が開いていたのだ。
もちろん物理的に空いている訳ではない。そう感じるほど空虚な空間が脳の中に生まれていたのだ。ソウヤたちは知らなかったが、この処置により二〇パーセントほど脳全体の回転率が上がり、知能が向上していた。