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天の川銀河の屠龍戦艦  作者: 月汰元
第2章 太陽系航路編
39/55

scene:39 バルゾック主力艦隊

 バルゾック主力艦隊の旗艦ゲルオールでは、指揮官のメゾルバ中将が分派艦隊の戦闘記録を分析していた。

「分からん。なぜ、バッセル准将は負けたのだ」

「もう一度、戦闘状況を表示いたしましょうか」

 参謀のベガ大佐が戦闘指揮センターのメインモニターに、分派艦隊の動きを表示した。お互いの有効射程に入った瞬間、味方艦隊のほとんどが大破する様子が映し出された。

「ほとんど一瞬で、勝敗が決まっている。奴らは何をしたのだ?」


 ベガ大佐はモニターを睨みながら口を開いた。

「強力な兵器が使用されたのだと、思われます」

「まさか、天神族の船ではないだろうな?」

「あのデザインは、天神族ではないと思われます」

「ならば、同じ第二階梯種族の船か。用心せねばならんな」


 その時、通信回線に戦艦ユイヴォスから通信が入った。

「モニターに出せ」

 メゾルバ中将の命令で、メインモニターに戦艦ユイヴォスの艦長ギヴォルの顔が映し出された。

「何の用だ、ギヴォル少将」

 モニターには赤銅色の鬼が映し出された。教授の故郷であるスクリル星系で、ユピテル号が戦った戦艦の艦長である。


「敵艦なのですが、見覚えがあります」

「何だと……何者だ?」

「スクリル星系で我々が戦った奴らです」

 メゾルバ中将の眉間がピクリと反応する。

「報告は読んだ。相手はスクリル星人だと報告にあったが、間違いないのか?」

「敵艦のフォルムは、一部を除いて同じです」

 その一部というのはモノポール亜光速ガトリング砲のことだろう。


「相手をスクリル星人だと判断した理由は?」

「奴らは、スクリル星人が隠していた施設を知っていました」

 ギヴォル少将が言っているのは、教授の父親が縮退炉を隠した施設である。

「そんな奴らが、なぜこの星系へ?」

「相手はスクリル星人です。我らを憎んでいるはず」

「ふむ、それだけとは思えんが……」


 そんな会話をしている間に、多用途戦闘機と砲撃艇アンバーの距離が縮まった。

 砲撃艇アンバーの内部では、陽気なファレル星人たちが戦闘準備をしていた。

「ミョル、先頭の奴から仕留めるずら」

「了解ずら」

 砲撃艇アンバーに搭載されている武器は、モノポール粒子砲の他にも一二口径レーザーキャノン四基がある。チェルバはレーザーキャノンの照準を多用途戦闘機へ向けた。


 多用途戦闘機に搭載されている九口径レーザーキャノンが、アンバーを狙って放たれた。アンバーに対して核ミサイルを使おうとはしないようだ。

 ミサイルはユピテル号に向かって使用するように命じられているのだろう。それは大きな判断ミスだった。アンバーは四層装甲鈑を持つ戦闘艦である。

 九口径レーザーキャノンでは、そのバリアを貫通することはできない。


 アンバーのレーザーキャノンが多用途戦闘機に命中し、その機体を貫通し大破させる。アンバーの照準装置は優秀であり、命中精度は高かった。

 多用途戦闘機が一機また一機と撃破される。

 それを見ていた旗艦ゲルオールのメゾルバ中将が、アンバーを無視してユピテル号へ核ミサイルを撃ち込むように命じた。


 残り八隻の多用途戦闘機が、アンバーを避けながらユピテル号に迫る。自動照準装置により、ボソル荷電粒子砲の照準が設定される。

 ユピテル号から七条の光る荷電粒子が放たれ、多用途戦闘機へ伸びる。攻撃を探知した多用途戦闘機は、回避しようとした。しかし、回避に成功したのは三隻だけ。

 四隻の多用途戦闘機が爆散した。


 ただユピテル号のボソル荷電粒子砲による攻撃は、初回だけ有効だった。生き残った多用途戦闘機は、ランダムなジグザグ航行に移り、照準を難しくしたからだ。

 惑星上の戦闘機同士の航空戦では、一度ロックオンされると外すのは難しい。だが、光の速さでも一秒ほどかかるような遠距離での戦闘では、ロックオンを外すことなど簡単だった。


 但し、それは多用途戦闘機にとっても同じであり、核ミサイルを確実に命中させるために、至近距離まで近付く必要があった。

 航宙戦闘における至近距離とは、ミサイルの有効射程と同等である。

 ソウヤたちはボソル荷電粒子砲を何発か発射した。だが、激しく回避飛行を行う多用途戦闘機には、命中しなかった。

 そして、じりじりと多用途戦闘機が距離を詰めてくる。


 至近距離まで近付いた多用途戦闘機が、四発の核ミサイルを発射。ミサイルはグングンと加速し、ユピテル号へ近付く。それを見たソウヤたちは、数少ないレーザーキャノンで迎撃を開始する。

「チッ、迎撃用の武器も追加すれば良かった」

 モウやんが嘆く。それを聞いた教授が、

「泣き言を口にする暇があったら、アクティブ・シールドの準備をして」


 レーザーキャノンの光条がミサイルを捉えた。その瞬間、モニターに眩しい輝きが現れ膨れ上がる。

「核爆発……」

 イチが呆然とした感じで呟いた。

「ボーッとしている場合やないで」

 ソウヤはイチに気合を入れてから、ボソル荷電粒子砲の全門斉射を行う。


 その全門斉射で、二発の核ミサイルが蒸発した。残りの核ミサイルは一発。

「出番よ」

 教授がモウやんに声をかけた。

「よっしゃー、アクティブ・シールド起動」

 モウやんがシールドを核ミサイルの軌道上に移動させる。最後の核ミサイルがシールドに当たって爆発。ユピテル号はシールドとバリアに守られ無事だ。

 そして、核ミサイルを発射した多用途戦闘機は、アンバーの追撃で撃破された。


 バルゾックのメゾルバ中将は、多用途戦闘機の攻撃が失敗したことに落胆した。だが、負けるとは露ほども思っていない。

 こちらは戦艦二隻を擁する艦隊である。最後には力押しで決着をつければ良い。中将はそう考えていた。

「仕方ない。戦艦二隻で制圧するぞ」


 メゾルバ中将の命令で戦艦が進み出た。戦艦ユイヴォスは三〇〇メートル級の戦闘艦であるが、旗艦ゲルオールは四〇〇メートル級の大戦艦である。

 駆逐艦程度の大きさしかない屠龍戦闘艦なら、短時間で撃破できると戦艦の乗組員は誰もが思っていた。

 だが、逃げもせずに距離を詰めてくる敵に、不気味なものを感じ始める者たちもいた。その一人であるベガ大佐は、積層装甲鈑のバリアに回すエネルギー配分を増やすように進言した。


「ベガ大佐、慎重すぎるのではないか?」

 メゾルバ中将が苦笑しながら反論した。

「しかし、相手は一瞬で分派艦隊を壊滅した相手なのですぞ」

「ふむ、謎の巨大兵器というのも気になる。いいだろう」

 旗艦ゲルオールだけは、バリアに回すエネルギー量を増やした。


 同じ頃、ユピテル号の内部ではソウヤたちが先手を取ることを決めていた。

「敵の旗艦、滅茶苦茶デカくないか?」

 モウやんが大声を上げた。

「まあ、そうね。主砲は五六口径荷電粒子砲みたいだわ」

「五六口径……そんなのが命中したら、一発で終わりじゃん」


「そやから先手必勝で、モノポール亜光速ガトリング砲をぶっ放すんや」

 教授が頷き、イチに指示を出す。

「アンバーが帰還したら、ジグザグ航行に移って」

「了解」

 多用途戦闘機を撃破したチェルバたちは、意気揚々とブリッジに戻ってきた。


「見てたずらか。おらたちの活躍を」

「見事やったでぇ」

 ソウヤが褒めた。教授は苦笑しながら、砲撃艇アンバーを異層ストレージに収納する。

「これからが本番よ。ソウヤは設定が終わったの?」

「終わった。あのデカブツには一〇発叩き込んだる」


 ただ一つ問題があった。敵の五六口径荷電粒子砲の射程が、モノポール亜光速ガトリング砲の射程より長いのだ。当然、敵戦艦が先に砲撃を開始することになる。

「イチ、頼むぞ」

「そやで、命中したら承知せんぞ」

 モウやんとソウヤの掛け声がブリッジに響いた。


 旗艦ゲルオールの五六口径荷電粒子砲が火を吹いた。強力な威力を秘めた荷電粒子の光条がユピテル号へと伸び、かなり離れた場所を通過する。

 ユピテル号は加速し突撃速度を上げる。その間にも、五六口径荷電粒子砲の砲撃が何度も近くを通り過ぎた。

「今のは、危なかったんじゃない」

 モウやんの顔が青い。それほど至近距離を荷電粒子が通過したのだ。


 そして、ついに荷電粒子がユピテル号を掠めた。バリアが弾いたが、凄まじい振動がユピテル号を襲う。

「きゃあああ……ソ、ソウヤ、まだなの?」

 アリアーヌの悲鳴のような声が、ソウヤを急かす。

「もう少しや」

 ようやく戦艦にロックオンできた。自動照準装置は次々に敵艦をロックオンする。


「砲撃準備」

 モノポール亜光速ガトリング砲の多砲身が回転を始め、それぞれのカートリッジにモノポールが充填される。

 教授は敵の全艦をロックオンした瞬間、砲撃命令を出す。

「砲撃開始!」


 モノポール亜光速ガトリング砲が、死と破壊を撒き散らす。

 戦艦ユイヴォスのバリアに食らいついたモノポール亜光速弾が、内包するエネルギーをバリアにぶつけた。バリアに負荷がかかり戦艦が震える。

 そこにもう一発のモノポール亜光速弾が弾着し、バリアを攻撃する。二発の攻撃に耐えた戦艦のバリアは、それが限界だった。


 三発目のモノポール亜光速弾で戦艦のバリアが破れた。続いて次々に命中弾が戦艦の装甲を貫通。八発目で、ついに動力炉に命中した。

 戦艦ユイヴォスが爆散。その破片が後続の駆逐艦のバリアにバラバラと当たる。


 旗艦ゲルオールでは、メゾルバ中将が呆然とした様子でメインモニターに映る僚艦ユイヴォスの姿を凝視していた。

「そ、そんな馬鹿な……」

 ベガ大佐がゴクリとツバを飲み込んだ。敵艦の次の標的が自分たちだと分かったからだ。

「バリアに……」

 何かを命じようとした途中で、モノポール亜光速弾が旗艦のバリアに命中。


「バリアの消費エネルギーが急上昇しています」

 メゾルバ中将が敵艦を睨み、反撃を命じる。

 だが、続けざまに敵の攻撃が命中し、バリアの警告音が鳴り始めた。

「クソッ、後手に回った」

 旗艦は七発目までのモノポール亜光速弾に耐えきった。だが、八発目にバリアが破れる。不運なことに、九発目のモノポール亜光速弾が、旗艦のエンジンを貫いた。

 エンジンが爆発し、船尾に大きな穴が開いた。


 後続の駆逐艦は、数発のモノポール亜光速弾で大破。ユピテル号の完勝である。

 ユピテル号の内部では、ソウヤたちが歓喜の叫びを上げていた。

「でへへ……勝っちゃった」

 モウやんが嬉しそうに声を上げた。

 ソウヤたちが見ていると、旗艦から脱出艇が飛び出した。一隻だけではなく何隻もだ。教授は追撃の命令を出さなかった。


「いいんですか、教授」

 イチが確認すると、

「あんな小物を殺しても、後味が悪いだけよ。ブルーアイに調査を命じます」

 五〇体のブルーアイがユピテル号を飛び出し、大破している戦艦に入っていく。そして、凄いものを発見した。遷時空跳躍装置である。


 遷時空跳躍装置が設置されていた区画は、周りの区画が破壊されていて遷時空跳躍装置も破壊されたと思われたらしい。

 そうでなければ、必ず脱出時に破壊するか持ち出されたはずだ。その証拠に航宙船用制御脳と記憶装置であるストレージ筐体は破壊されていた。


 ソウヤたちは、大破した旗艦ゲルオールから搭載型遷時空跳躍装置を回収した。

「あたしたちは、幸運なようだわ」

 ソウヤは意味が分からなかった。

「敵の戦艦から回収できたのは幸運やけど、メルギス種族の探検船を探せば手に入ったんやろ」

「そうとは限らないわ。探検船の遷時空跳躍装置が壊れている可能性もあるのよ」


 全乗組員が逃げた旗艦を、ソウヤたちは破壊した。

 その後、惑星ドレマークを探索したが、探検船は発見できなかった。探検船のステルス機能が凄いのか、海底にでも沈んでいるのかは分からない。

 最後に無線で呼びかけてみても、返事はなかった。

 ソウヤたちは諦めて、ラグズ造船のあるボニアント星系への帰還を決める。簡単に諦めたのは、遷時空跳躍装置を手に入れたので、探検船を探す必要がなくなったからだ。


 今回の遠征で、ソウヤたちは遷時空跳躍装置を手に入れた。そして、モノポール亜光速ガトリング砲の威力を確かめられたので、少しくらい危険な場所でも探しに行ける準備が整った。

 地球を探す旅にでる計画を話し合い始めた。


 すべての準備が整い、ソウヤたちが地球を探しにボニアント星系を旅立った後、ラグズ造船で製造する武装輸送船がガモフたちの働きで完成し売り出された。

 高性能な武装輸送船である割に、価格も手頃だったのでヒット商品となる。ラグズ造船はその武装輸送船をきっかけに有名企業へと成長した。



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