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天の川銀河の屠龍戦艦  作者: 月汰元
第2章 太陽系航路編
37/55

scene:37 戦力強化

 ソウヤたちは、ユピテル号のリビングベースで雑談していた。このリビングベースは、初期のものから大きく改造されていた。

 以前のものは、宇宙コンテナ三つを連結したものにドッキング装置と連結金具を取り付けだけの代物だった。それゆえ大した装甲もない。

 ユピテル号と連結した状態では、跳躍リングを使うことも戦闘することも難しかった。


 それを五層装甲鈑で作り変え、ユピテル号の下部装甲に密着連結可能なようにした。内部は元の構造や内装を移し替えたので、それほど変わっていない。

 密着連結としたことでユピテル号と一体化したことになる。機動性は低下するが、連結した状態で跳躍リングを使うことも戦闘することも可能となった。

 但し、本格的に戦闘する時は、異層ストレージに収納しなければならない。


 話題がモルヴェット星系の戦いで惑星ドレマークに不時着した探検船で盛り上がっていた。

「メルギス種族の探検船か。搭載型遷時空跳躍装置を積んでいるだろうな。いいなあ~」

 モウやんが羨ましそうに言った。

「おいおい、墜落したんやぞ」

 ソウヤが呆れたように言う。


「その探検船、バルゾックが回収したのでしょうか?」

 イチが教授に向かって質問した。

「それが、回収されていないようよ」

「回収する価値がないと判断したのかな」


 チェルバがポテトチップをバリバリと食べながら、口を挟んだ。

「それはねえずら。バルゾックの奴らは、自分たちのテクノロジーが第二階梯種族の中で最底辺にあると知ってるずら。少しでも技術力を上げられるものなら、必死で探すずらよ」

「だったら何で、回収していないのさ」

 モウやんが指摘した。


「メルギス種族の航宙船には、高性能なステルス技術が使われているらしいずら。惑星のどこかに不時着し、そのステルス機能が使われたら、探し出せないずら」

 航行中は膨大なエネルギーを放出しているので、航宙船を探知することは難しくない。しかし、着陸した状態でステルス機能が使われたら、探知することは非常に難しくなる。


 バルゾックが探し出せずに苦労しているのを知った他種族のサルベージ屋が、モルヴェット星系へ向かった。出し抜いてメルギス種族の航宙船を手に入れようとしたのだ。

 それを知ったバルゾック種族は大激怒。惑星ドレマークに近付くサルベージ船を片っ端から攻撃した。逃げ帰ったサルベージ船がボニアント星系に現れ、バルゾック種族を盛大に非難したことでモルヴェット星系の状況が知れ渡った。


 バルゾック種族は、戦艦二隻・巡洋艦三隻・駆逐艦六隻をモルヴェット星系に派遣しているらしい。もしかすると、ユピテル号を探す目的で派遣されたのかもしれない。

「しばらくモルヴェット星系付近には、近付かん方がええみたいやな」

 ソウヤが言うと、イチも頷いた。


 モウやんは首を傾げている。何か気になることがあるようだ。

「なあ、その探検船には、搭載型遷時空跳躍装置が積んであるんだよね。それって手に入れられないかな」

 教授とアリアーヌが呆れた顔をする。

「バルゾック種族の艦隊がいるのよ。近付けば、ユピテル号は木っ端微塵だわ」

「そうよ。ユピテル号一隻で何ができるの」


 女性陣の反論に、ソウヤは気分を害した。ユピテル号をけなされたように感じたからだ。

「ちょっと待って。本当にダメなんか?」

 アリアーヌが眉間にシワを寄せ、ソウヤを見る。

「モルヴェット星系に近寄らない方がいいと言ったのは、ソウヤじゃない」


 ソウヤが頷いた。

「言った。そやけど、なんか悔しくなったんや。バルゾックの奴らに追い回されて逃げてきたけど……このまま逃げるだけでええんか?」

「逃げただけじゃない。ちゃんと反撃したじゃない」

 アリアーヌが反論した。

「けど、それは逃げるために反撃しただけや」

 聞いていた教授が微笑んだ。

「あたしのことを気にしているなら、いいのよ。バルゾックに一泡吹かせるのは、もっと力をつけてからにするわ」


 イチが教授の顔を見てから口を挟んだ。

「教授、ソウヤは感情だけで危ない真似をする奴じゃない。何か理由があると思うんです」

「ほう、なら聞こうかしら」

 ソウヤは頭の中を整理してから、口を開いた。

「ユピテル号は、万能型製造システムと縮退炉を手に入れた。それを利用してバルゾック種族の艦隊にも負けんような戦闘艦に改造できんやろか?」


 教授が腕を組んで考える。

「そうね。一番簡単なのは巨大な戦艦を建造することよ」

「それはダメだ。小さい戦闘艦で大きな戦艦を倒すことにロマンがあるんだ」

 モウやんがダメ出しする。


「何がロマンよ。馬鹿じゃないの」

 アリアーヌのきつい反論に、ソウヤは苦笑した。

「モウやんの言うロマンは別にしといて、そんな巨大戦艦を動かすのに必要な人員は何十人や。用意できんやろ」

 地球の海で戦った戦艦は、乗組員が数千人も必要だった、とソウヤは聞いたことがある。宇宙で戦う戦艦には、それほどの人数は必要ないが、数十人は必要だと知っていた。

 教授が頷いた。

「確かに、五人で動かすのは無理だわ」


 チェルバがテーブルをドカッと叩いた。高重力惑星生まれのファレル星人は、大きさの割に力が強い。

「こらっ、いつも言ってるずら。おらたちを忘れるんでねえ」

「そうずら」

 教授がフッと笑う。

「こいつらを入れても七人ね。巨大戦艦は無理……そうなると、このユピテル号をどこまで強化できるかになるわけよ」


 アリアーヌが冷静な顔で告げた。

「やっぱり無理なんじゃない。戦艦が二隻もいるのよ」

 モウやんがしょぼんとする。

「本当に無理なのかな。戦艦を一撃で破壊するような武器はないの?」

 皆の視線が教授に集まる。


「スクリル星人が開発した武器の中で、最も威力のあるものは『空間破砕弾』よ。でも、あれは対戦闘艦用じゃないのよ。戦艦との撃ち合いには不向きだわ」

 空間破砕弾は命中した瞬間、周囲五キロ程度の空間に干渉し空間ごと範囲内の物体を粉々に破壊する兵器である。想定した敵は宇宙要塞や敵惑星で、強力な防御バリアを持つ存在を、空間ごと破壊する兵器として開発されたらしい。


 ただミサイルに搭載して撃ち込む仕様なので、一発、二発では迎撃される可能性が高い。実戦においては、動かない敵に対して、数十発、数百発を同時に発射し飽和攻撃で仕留める戦術を使うようだ。

「自分たちが求めている武器とは違うような気がします」

 イチが感じたままを口にした。


「次に威力があるのは『モノポール亜光速砲』ね。でも、これは完成しなかったわ」

 その聞き覚えのある名称に、ソウヤは反射的に確かめた。

「それって、モノポール粒子砲とは違うんかいな?」

 原理的には同じであり、モノポール粒子弾を撃ち出す速度が違うらしい。モノポール粒子砲は光速の三パーセントほどで、モノポール亜光速砲は光速の九〇パーセント以上にまで加速してから撃ち出されるという。


「まあ、完成しなかったんだから、しょうがないわ」

「完成しなかった原因はなんや?」

 ソウヤが直感に従い追究する。

「詳しくは知らないわ。トートにクリスタルメモリーを調べさせたら」

 教授の助言に従い、トートに頼んだ。その結果、原因が判明した。いくつかの原因があるが、一番の原因はエネルギー不足らしい。


 戦闘艦に搭載できる通常動力炉では、エネルギーを賄えなかったのだ。

「でも、今は縮退炉がある」

 モウやんが目をキラキラさせて声を上げた。教授は小さく何度も頷き、

「そうね、この船には縮退炉がある。モノポール亜光速砲を完成させられるかもしれないわ」

「そうだよ。トートに手伝ってもらえば、楽勝さ」


 トートは宇宙樹で得た第二階梯種族の情報ブロックを知識データベース化する作業を継続していた。

 現在では、『航宙船工学』『材料工学』『兵器・軍事工学』に続いて、『エネルギー工学』『ロボット工学』の知識データベース化を完了しており、残るは『天震理学』だけという状況である。

 その知識データベースとクリスタルメモリーの中の情報を使ってモノポール亜光速砲を研究すれば、短期間に完成させられる、とモウやんは思ったのだ。


「モノポール亜光速砲は、どのくらい威力があるのです?」

 アリアーヌの質問に、教授が、

「モノポール粒子砲が戦艦の主砲クラスとすると、モノポール亜光速砲は一〇倍ほどの威力があるわ」

 命中すれば、戦艦でも中破以上となる威力である。アリアーヌは凄いと思った。しかし、モウやんは物足りないものを感じた。


「一発で敵の艦隊全部を破壊する武器は、ないのかな?」

 ソウヤが苦笑した。

「アニメじゃないんやぞ。そんなもんあるか」

 教授とアリアーヌが目を合わせて笑った。

「あるわよ」

 教授の返事にモウやんが食いついた。

「どんな奴なの?」


 教授に代わって、アリアーヌが説明を始めた。

「モール天神族の『天滅砲ラグナレク』、リカゲル天神族の『精神破壊砲』、アウレバス天神族の『漆黒砲ヒドラスパイラル』、どれも伝説級の破壊兵器よ」

 ソウヤが少しガッカリしたような顔をする。凄い武器には興味があったのだが、第一階梯種族の天神族たちの武器では開発することもできない。


 モウやんも肩を落とす。

「だったら、連射できるようにならないの?」

 一発でダメなら、機関銃のように連射して撃破することを考えたようだ。

「トートに研究させなさい。と言っても、あんたたちの脳を使うことになると思うけど」

 教授が言ったように、集団思考システムを使って開発研究することになるだろう。


 開発を始める前に、教授が告げた。

「例え、バルゾックの艦隊を撃破できるだけの武器が開発できたとしても、戦いは命を賭けた博打よ。その覚悟はあるの?」

 ソウヤたちは頷いた。

「覚悟はある。バルゾックに一泡吹かせてやります」

 イチが元気よく覚悟を示した。


 ソウヤたちが研究している間に、教授とアリアーヌはモルヴェット星系の情報を集めた。

 バルゾックは、惑星ドレマークの海と陸に数千人の捜索人員を送り込んだようだ。

「それだけの人員を使って探しても発見できないなんて、メルギス種族のステルス技術は凄いんですね」

 アリアーヌの発言に、教授も賛同した。


「ソウヤたちは、攻撃ばかり考えているようだけど、戦いには防御も必要よ。あたしたちは防御について検討しましょう」

「分かりました。教授に何かアイデアがあるのですか?」

「アクティブ・シールドよ」

 宙域同盟が支配する宇宙において、航宙船の防御装置は何種類も開発されている。その中で一般的なのが、積層装甲鈑である。


 次に多いのが力場シールドだ。エンジン以外の部分を包むように展開する力場は強力である。ただエネルギー消費が激しく、大出力の動力炉を持つ大型船にしか搭載されない。

 この力場シールドは戦闘艦に搭載されることは、ほとんどない。力場シールドを展開すると、こちらからも攻撃ができなくなるからだ。


 教授が提案したアクティブ・シールドは、船全体を包むものではない。大型の盾のような力場シールドを展開し、探知装置と連動して敵の攻撃を跳ね返す防御装置である。

 教授の故郷であるスクリル星系軍もアクティブ・シールドを開発しており、その設計データはクリスタルメモリーに入っている。


 ソウヤたちの脳みそを使い倒して、『モノポール亜光速ガトリング砲』が完成した。全長八一メートル、六本の砲身を持つ凶悪な武器である。

「あんたたち、これは大きすぎるわよ」

「何なの、この大きさ」

 教授とアリアーヌが驚きの声を上げた。無理もない。二人を驚かそうと思い、出来上がるまで知らせなかったのだから。


「お前ら正気ずらか。こんなデカさじゃ船内に設置できんずら」

 チェルバも驚いたようで声を上げた。それを聞いたモウやんが胸を張って答える。

「こいつは、船内には設置しない。リビングベースと同じように船体の下部に連結して使うんだ」

 アリアーヌが難しい顔をして指摘した。

「反動はどうなっているの。五十六口径荷電粒子砲で、あれだけ苦労したでしょ」


 イチが反動については説明した。

 トートが知識データベース化した『エネルギー工学』の情報ブロックの中に、衝撃吸収機構のヒントになる情報があり、それを応用して反動の九割以上を吸収する仕組みを組み込んだらしい。

「それは凄いわね」

「でも、残念な知らせがあるんだ」

 モウやんが少し顔を曇らせて告げた。


 教授が首を傾げた。何が問題なのか分からなかったのだ。

「残念……何なの?」

「この武器の発射速度に、モノポール粒子生成速度が追い付かないんだ」

「どういうこと?」

「五〇発撃ったら、モノポール粒子生成のためにしばらく撃てないんだ」

 教授やアリアーヌにすれば、五〇発も撃てれば十分な気がする。だが、地球のガトリング砲をイメージして開発したソウヤたちにとっては、残念だったようだ。


 モノポール亜光速ガトリング砲は、バルゾック艦隊を相手に使われる予定である。その威力を知った時、教授とアリアーヌはもう一度驚くことになる。



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