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天の川銀河の屠龍戦艦  作者: 月汰元
第1章 最悪のファーストコンタクト編
17/55

scene:17 屠龍戦闘艦の建造

 ソウヤのアイデアを皆で検討することになった。珍しくモウやんが腕を組んで考えている。

「これに他の船から取り外した動力炉やエンジンを、取り付けるの。大変なんじゃない」

「そやけど、クラーケンの巣に固定されていない船体は、これだけなんやぞ。小型脱出艇はあったけど、あれじゃあ他の星系へは行けんのや」

「でも、食料が一ヶ月分しかないと言っていただろ。一ヶ月で完成するの?」

「教授、やっぱり無理なんやろか?」

「そうねぇ。使えるパーツを探し、設計・製造・運用試験……本来なら二年ほど必要かな」

 教授はカワズロボ二〇体の労働力を考慮しても、それだけの時間が必要だと答えた。


「ダメじゃん」

 モウやんがガクリと肩を落とす。

「ちょっと待って。これだけの船が揃っているのよ。必ず食料が見付かるはず」

「けど、カエル人間やトカゲ人間の食料なんて食べられるの?」

「大型戦闘艦には、食料の補給が途絶えた時に備え、食料の製造システムや採取した有機物が食べられるかどうか調べる装置を積み込んでいると、聞いたことがあるわ」

 教授の答えを聞いて、モウやんが張り切りだした。食い意地が張っているモウやんらしいとソウヤが笑う。

「よし、皆で探そうやないか」


 修理用の船台に固定されている駆逐艦の船体を、ソウヤが見ているとトートが話しかけてきた。

『マスター、手伝イマショウカ』

 ソウヤは、トートの音声を耳にある接続端子から発せられる電波で、モウやんと教授にも伝えるように指示した。

「お前に何ができるんや?」

『ペンティマル星ノ航宙船工学ノ知識データベース化ガ、終了シマシタノデ、航宙船ノ設計ガ可能トナリマシタ』

 トートはソウヤが情報ブロックを手に入れてから、ずっと知識データベース化という作業をしていたらしい。解析は情報ブロックを読めるようにしただけだが、知識データベース化は設計などの作業に使えるように情報を特殊なデータベースとして構築するものらしい。

「すげえ」

『設計ニハ、調査ガ必要デス。調査用ノ メカ ヲ作製シテモ ヨロシイデスカ?』

「メカやと……どんな奴や?」

 トートの説明では、二つの電子眼と推進装置、超小型ロボット脳があれば良いという。ソウヤはカワズロボ一体を呼び寄せ、命令権をトートに移譲した。

 トートは一時間ほどで設計を完了し、カワズロボに製作を指示する。材料と道具は、大型工作艦の中にあるもので十分なようだ。

 カワズロボが調査用メカを製作している間、ソウヤたちは推進装置を使わず、足で壁を蹴って移動しながら大型工作艦の内部調査を始めた。

 幾つかの部屋を開けたが、ガラクタが浮遊しており、使えそうなものはない。

 二時間くらい調べ回った時、左舷に部品倉庫を発見。そこには数多くの標準部品と工作機械、素材が残っていた。


 重要な部品として、未使用の操縦システムと船内環境維持装置があり、教授が使えそうだと太鼓判を押す。

 カワズロボが調査用メカを製作している場所に戻ると、調査用メカが完成していた。メタルブルーで塗装された直径一五センチほどの球体で数カ所に噴射ノズルが組み込まれている。

「何やシンプルな形やな。電子眼はどこに付いてるんや」

 トートが起動信号を発し、調査用メカを起動させる。球体に組み込まれている超小型ロボット脳が起動し動き出す。球体上部の一部がスライドし直径一センチほどの穴が二つ開き、そこから小型電子眼がニュキッと突き出す。

「へえー、それが目なんだ」

 モウやんが感心したように声を出した。

『移動サセマス』

 トートがソウヤの方へ移動するように指示する。幾つかの噴射ノズルから、ガスが吹き出し移動を開始。無重力空間ならではの移動方法である。

 ソウヤから三〇センチほどのポイントで逆噴射し停止する。


「これ一体だけしか作らないのかい?」

 一体だけで調査するには時間がかかると思った教授が質問する。

『イエ、五〇体製作シマス』

「五〇体か、妥当な数ね」

 カワズロボ一体だけだと時間がかかるので五体に調査用メカの製作を命じる。その日の内に五〇体が完成し、教授により『ブルーアイ』と名付けられた。早速、トートが難破船の調査を命じる。

 調査用メカは完成したが、調査をそれだけに任せられる訳ではない。閉鎖された空間にはブルーアイが入れず、ソウヤたちの手で開放し中を調べる必要があるからだ。


 大型工作艦の中にも、そういう閉鎖空間が存在した。船首にある制御脳管理室と中央にある部品倉庫である。厳重に閉鎖された扉をカワズロボ三体を使って破壊する。

 工具が揃っている工作艦だからこそ、可能なことだ。

 制御脳管理室に入ると、中央に航宙船用制御脳が設置されていた。制御脳の一部が何かの衝撃で壊れたようだ。だが、中核部品は無傷で代わりの部品が見付かれば修理可能だと教授が言う。

 ただ制御脳と一緒に設置されているストレージ筐体は乗組員の手で破壊されたようだ。軍事機密でも記憶されていたのだろう。

「制御脳は使えるが、ストレージ筐体がダメだと、制御システムをどうするかね」

「他の船を調べてから、考えればいいんやないか」

 ソウヤの意見に教授が頷く。


 大型工作艦の内部を調べるのに三日かかった。調査結果は、レ・ミナス号の制御脳に入力され、ソウヤたちが持つタブレット端末でも見れるようにする。

 次に小型輸送船の調査を開始。

 小型輸送船の一隻から大量の小麦粉が見付かった。白い粉状のもので成分的には小麦粉と似ているものだ。

「調味料はダメなのか?」

 モウやんがぶちぶちと文句を言う。調味料らしきものも発見しているのだが、それを使っていいか分からない。地球人の身体には毒かもしれないからだ。

 次々と小型輸送船を調べ、二台の重力制御装置と重力発生シートをアリアーヌが発見。

「これは未使用のものじゃない。しかも同時に五つの重力場を発生可能なようよ」

 重力制御装置と重力発生シートは組み合わせて使うもので、重力発生シートの表側に重力が発生する仕組みになっている。


 調査は進み、他の小型輸送船から、様々な消耗品と機械部品、全環境トイレ、航宙船用シャワー装置、宇宙建造物用の二層装甲鈑などが発見された。

 航宙船用シャワー装置が見付かったと聞いたアリアーヌは、レ・ミナス号の壊れたシャワーと取り替えさせ、久しぶりのシャワーを堪能し満足する。

「はあー、生き返った気分です。これで食事が美味しくなれば、暮らしやすくなるのですけど」

 突然、アリアーヌの目から涙が溢れ出した。シャワーが故郷の星での快適な生活を思い出させたのだ。父親があんな人と結婚しなければ……とアリアーヌの心に悲しみが湧き出す。

 少しの間、涙を流したアリアーヌは、涙を拭うとさっぱりした顔でシャワー室を出る。アリアーヌは心の奥に強さを持つ少女だった。現在の苦境もソウヤたちと一緒なら乗り越えられると確信している。


 最後の小型輸送船三隻は、標準型宇宙コンテナを運ぶ貨物船だった。標準型宇宙コンテナとは船倉に収める必要がなく、宇宙空間をそのまま運べるコンテナである。

 ある程度頑丈で宇宙線などを遮る機能があった。コンテナは、ソウヤの目測で全長三四メートル、幅二七メートル、高さ九メートルの直方体である。

 コンテナ自体には穴が開き、中身の多くは宇宙に流出していた。


 これまで調べた艦船には、使える動力炉やエンジンは無かった。敵が一番に狙うのがエンジンなので、無傷のエンジンがないのは予想済みだと教授は言う。

『使エソウナ エンジンヲ発見シマシタ』

 トートが報告する。報告によると巡洋艦のメインエンジン二基が軽微の損傷だけで修理可能だそうだ。それに加え、無傷の大型核融合炉も発見されたと報告にある。

 他に使えそうなストレージ筐体も見付かり、工作艦の航宙船用制御脳と組み合わせると船の制御システムとして使えそうだ。

 巡洋艦では、兵器も見付けていた。見付かったのは、一六口径荷電粒子砲が二門、一二口径レーザーキャノン一門である。

 一メルタの一〇〇分の一が一口径と呼ばれているので、一六口径荷電粒子砲は直径約一六センチの荷電粒子のビームを飛ばす兵器となる。

 メルタとは長さの単位で約一.〇二メートルに相当する。約一メートルなので覚えやすい。

 それを基準に換算すると、一二口径レーザーキャノンは、約一二センチの太さのレーザー光を照射する兵器なのだ。

 因みに、グラトニーワームと戦った時に使った荷電粒子砲は、一〇口径である。

 一六口径荷電粒子砲二門と一二口径レーザーキャノンがあっても、クラーケンは仕留められないだろうが、ないよりはマシだ。

 駆逐艦四隻からは、中型核融合炉とルオンドライブ、推進剤タンク、サブエンジン、探査システム、スラスターノズルなどの使えるパーツが見付かり、ソウヤたちは喜んだ。


 最後に小型戦艦の調査を行った。この小型戦艦の内部を見た教授は、驚きの声を上げる。

「何これ! ロドレス種族やケネロル種族の戦艦じゃないわね」

「どういうことや?」

「理由は分からないけど、この船は第二階梯種族の戦艦だわ」

 第二階梯種族と言えば、自力で遷時空跳躍船を製造可能なほど進んだ文明を築いた種族である。

 ソウヤたちは遷時空跳躍装置を期待して、戦艦の内部を調査した。だが、遷時空跳躍装置は完全に破壊されていた。だが、天震力タンク・天震力充填装置・加速力場ジェネレーターの三つを発見する。

 他にも五六口径荷電粒子砲と医療ロボット、汎用分析装置、野菜工場システムなどが発見された。特に野菜工場システムを見付けたモウやんは躍り上がって喜んだ。


 調査の終盤に部品倉庫の方を調べてみると、身動きができないほど数多くの消耗品や部品などが漂っている中に、小さな物置サイズの装置が一つ置かれていた。

「まさか……」

 教授が慌てたように、その装置に近付き調べ始める。

「固定しとらん物を、こんなに置いておくやなんて、正気やないで」

 ソウヤが言うと、教授が首を振る。

「違うわ。これらの物は、この装置の中に在った物なの」

 ソウヤとモウやんには、理解できなかった。

「分かんないよ」

 モウやんが説明を求めると、教授が教えてくれた。この装置は『異層空間収納装置』別名『異層ストレージ』と呼ばれるもので、第一三次元虚空と呼ばれる異次元空間に収納スペースを確保し、品物の出し入れを可能にする装置らしい。

 説明を聞いても分からなかったが、アニメの四次元ポケットみたいなものだと思うことにした。この装置へのエネルギー供給が止まったことで、収納スペースに入っていた物全部が倉庫内に吐き出され、こんな状態になったらしい。

「これの収納スペースは、全長一〇〇〇メルタの大型貨物船に相当するようよ」

 因みに、異層ストレージは第二階梯種族以上でないと作れない超高等技術の塊であり、小型戦艦と同等の価値を持つ宝物である。

 それを見付けた教授が驚くのも無理はない。

「こんなものが残っているなんて、信じられない。乗組員はどうしたのかしら」

 教授の疑問は残ったようだ。だが、異層ストレージは壊れておらず、エネルギーさえ供給すれば動くと判明した時、教授は狂喜した。

 ただ、異層ストレージは性能の違いが激しく、見付けたものは容量は多めだが、生き物を入れると精神にダメージを与える特徴を持つ無生物専用のもののようだ。


 調査が終わった段階で、トートが設計を開始する。

 ソウヤたちとカワズロボは、各艦船から必要な装置や部品を取り外し工作艦に運ぶ作業を始めた。

 食料は汎用分析装置と医療ロボットを使って調べ、小麦粉はカエル人間のものが食べられ、調味料はトカゲ人間のものが大丈夫だと分かった。

 食料の心配がなくなったソウヤたちは、焦らずに腰を据え大型駆逐艦を建造しようと決意する。


 トートが設計途中で、皆に話があると言い出した。

 全員がレ・ミナス号のリクライニングルームに集まると、設計段階で問題となったポイントをトートが説明する。

『要スルニ 巡洋航宙船カラ取リ外シタ装置ヤ部品ガ 大型ナノデ、生活ノ場トナル空間ガ 入レラレナイノデス』

 巡洋航宙船から運び込んだ大型核融合炉やメインエンジン、推進剤タンクが大き過ぎて、設置場所に大きな空間が必要だったようだ。そのせいで、生活空間が足りなくなるというお粗末な話である。


 アリアーヌが最初に異議を唱えた。

「その船で何ヶ月も生活することになるのでしょ。ちゃんとした生活空間は必要よ」

「それに食料を保存する倉庫も必要や」

「美味しい料理を作るキッチンも」

 ソウヤとモウやんは食料の心配をする。

『シカシ、外ノ状況ヲ考慮致シマスト、強力ナ武装ガ必要デス』

 トートはクラーケンやグラトニーワームに囲まれている状況を考えると、武装する必要があると言う。


 イチが教授に顔を向け。

「どうしたらいいと思います?」

「そうね。小型輸送船に積まれていた標準型宇宙コンテナが使えるんじゃない」

「あのでかい箱ですか。大きな穴が開いていましたが」

「穴は修理すればいいわ。三つを溶接すれば十分な空間が出来る」

 アリアーヌが美しい眉をひそめ。

「駆逐艦の船体に宇宙コンテナを溶接するのですか。それだと船速が落ちます」

 強力な星害龍と遭遇した時には、逃げ足が速いのが一番である。宇宙コンテナを取り付けることで船速が犠牲になるのは問題だった。

「大丈夫よ、異層ストレージを利用すればいい」

「あの四次元ポケットみたいな装置やな。どう使うんや?」

 ソウヤが首を傾げながら尋ねた。

 教授の説明によると宇宙コンテナ三つを連結したものに、駆逐艦とのドッキング装置と連結金具を取り付け、ボタン一つで切り離し可能にした上で、異層ストレージに収納すれば大丈夫だと言う。

「でも、異層ストレージは大量のエネルギーが必要だと聞いた覚えがあります」

 アリアーヌは動力源を心配した。

「心配ないわ。外の艦船で小型核融合炉が何基か見付かっている。その中の二つを異層ストレージ専用とすれば問題解決よ」


 問題が解決したので、トートは解決案に沿って設計を進め、ソウヤたちはサルベージ作業を続けた。

 サルベージ作業もクラーケンが巣を離れている時しかできないので時間がかかる。

 そこで優先順位を変えた。先に三つの宇宙コンテナを工作艦の中に運び込み、二層装甲鈑を使って穴を塞いでから溶接し、全長一〇二メートルの四角い船体を作り上げた。

 そこに動力源として小型核融合炉を二基運び込んで取り付ける。動力源を確保した後、船内環境維持装置や重力制御装置を設置し、中で暮らせる環境を整える。


 ソウヤたちは宇宙コンテナだった『リビングベース(生活基地)』に引っ越した。命名はイチである。

 四〇畳ほどのリビングダイニングとキッチン。二〇畳ほどの一人部屋が八部屋、何故八部屋かというと小型輸送船の一隻に内装セットが八組みあったからだ。

 各部屋は自分に合った重力を設定できるようにしてある。リビングベースの温度は二二℃ほどで湿度は五〇パーセント、種族の違う五人が快適だと思うものになっている。

 リビングベースには野菜工場システムを搬入し、他に広い入浴設備を作った。これはモウやんの要求である。


 一ヶ月後にサルベージ作業が終わり、駆逐艦の建造が始まった。カワズロボ二〇体とバウが主に作業しているのだが、ソウヤたちも簡単な作業を手伝い少しでも早く完成するよう努力する。

「ねえ、小型戦艦に装備されていた五六口径荷電粒子砲を取り付けるつもりなの?」

 アリアーヌが確認してきた。五六口径荷電粒子砲は小型とは言え戦艦の装備兵器である。駆逐艦には過剰な戦力なのだ。

「クラーケンを撃退する可能性があるんは、こいつだけやからな」

 ソウヤが当たり前だというように返事をした。

「発射の反動で、駆逐艦の船体が壊れるようなことはないでしょうね」

 大型荷電粒子砲の反動は凄まじいらしい。

「そこいらはトートが考慮して、設計したから大丈夫や」


 それから三ヶ月後、新しい船に大型核融合炉を設置。この頃にはソウヤたちが手伝わなくとも二〇体のカワズロボとバウだけで建造作業が進められるようになっていた。

 暇になったソウヤたちは、教授の発案で勉強を始めた。宙域同盟の文明社会で生きるために必要な常識を、教授とアリアーヌを先生にして学ぶ。それに加え、トートが中学から高校程度の数学・科学を教え始める。

 勉強をしていない時間は、リビングベースの野菜工場システムを使って野菜作りを始めた。種はレタス・大根・ジャガイモ・玉ねぎ・人参に似たものが見付かっている。

 頭脳を鍛えると同時に、身体も鍛え始める。リビングベースにトレーニングルームを設置し、ランニングやウエイトトレーニングを始めたのだ。


 建造を開始して一年、船が完成した。

 元は優雅な流線型を描いていた船体が、幾つかの付属品を取り付けたことで無骨な艦船となっている。船底部分にはリビングベースを固定するための頑丈そうな固定具、巨大な大型荷電粒子砲が設置された砲塔を覆い隠す金属ドームなどが、大型駆逐艦から優美さを奪っていた。

 それに加え、船体に比して大きなエンジンノズルが、この船がサルベージ部品の寄せ集めだと主張している。


タイトルを少し変更しました。

旧『天の川銀河の屠龍猟兵』

新『天の川銀河の屠龍戦艦』

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