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天の川銀河の屠龍戦艦  作者: 月汰元
第1章 最悪のファーストコンタクト編
10/55

scene:10 宇宙クリオネ

 教授はモフィツの説得は諦めた。モウやんは怒り、ドアを破って中に入ろうと言い出す。

「でも、あのドアは金属製ですよ。何か道具がないとダメじゃないかな」

 イチが冷静な声で反論する。

「だったら、屠龍機動アーマーでぶち破ろうよ」

 モウやんは相当腹を立てているようで無茶なことを言う。そんなことをしたら船自体を壊すかもしれない。結局、ドアを破るのも諦め、コクピットへ戻った。


「あの馬鹿豚が」

 とモウやんが忌々しそうに声を上げた。アリアーヌが優美な眉をひそめ、不安そうな顔で教授に目を向ける。

「食料と水が……どうしたら?」

 教授が溜息を吐く。

「まずは、水を確保しなければならないわ。アリアーヌは観測装置を、あたしがバウに教えてもらい分光分析装置を使うことにしましよう」

 船内の修理をしているバウを捕まえてきて、分光分析装置の使い方を習おうとした時、イチが呼び止めた。


「ちょっと待って、トートにも分かるんじゃないのか?」

 ソウヤが「あっ」という顔をする。

「忘れてた」

 ソウヤが頭の中にいるトートに話しかける。分光分析装置の使い方を知っているか尋ねると知っていると言う。

『マスター、監視カメラカラ映像ヲモラッテモ、ヨロシイデスカ?』

 トートには外を見る感覚器官が存在しないので、教える時に不便らしい。

「……許可する。但しコクピットのカメラに限定する」

『了解シマシタ』

 トートは船のシステムに侵入しコクピットの監視カメラの映像を得ると、分光分析装置の使い方について説明を始めた。


 観測装置や分光分析装置を使って氷の塊を探す。氷の塊は幾つか見付けるが、嫌なものも同時に発見する。宇宙クリオネである。柔軟な動きで宇宙空間を飛び回っている姿が、あちこちで見付かる。

「ダメだ。氷塊の傍には奴らがいる」

 宇宙を漂う化け物も水を必要としているのだろうか。氷塊の傍には必ず宇宙空間をうねうねと動き回る宇宙クリオネの姿があった。


 イチやモウやんも屠龍機動アーマーを試してみたが、ソウヤほど上手く操れなかった。その結果を見て、教授は屠龍機動アーマーの正式操縦者をソウヤに決める。

 教授がソウヤを見て不安げに尋ねる。

「あの星害龍を何とかできそう?」

 モニターに映し出されている宇宙クリオネは、体長三メートルほどだと表示されている。この種族にしては小さい方である。

「粒子弾で退治できるんやったら、問題あらへん」

「捕まったら、屠龍機動アーマーが破壊される。そうなったら、確実に死ぬよ。いいのかい」


 教授が脅かすような言葉を告げるので、ソウヤの顔から血の気が引く。

「た、倒せばええんやろ」

 自分に言い聞かせるように、ソウヤが言い返す。

 教授は目標となる氷塊から三キロほどの距離を置いて船を静止させた。コクピットのモニターに氷塊の周囲を漂う宇宙クリオネの姿が見える。

 ソウヤは連絡艇格納庫へ行き、屠龍ポッドに入り装着スイッチを押す。


 次の瞬間、ソウヤの身体にマイクロマシンが張り付き三層の鎧を形成していく。

 屠龍機動アーマーの装着が完了すると意識をはっきりさせるため、心の中で気合を入れる。手順通りに精神の奥に意識を突進させ深層部に到達。そこに存在する真っ黒な壁『高次元ボーダーフィールド』から高次元空間の広大なボソル粒子の海に飛び込んだ。そして、導管を作り出しボソル粒子を天震力と一緒に取り込む。

 ソウヤの身体から天震力とボソル粒子が溢れだし、天震力は背中の統合制御パックの方へと流れ、ボソル粒子はベルトのボソル粒子タンクの注入口に流れ込む。

 因みに天震力は背中の統合制御パックの内部にある天震力ボトルの中核部品である小さな『龍珠』に蓄えられる。


「連絡艇格納庫のハッチを開けるぞ」

 モウやんが告げ、コクピットにある操作パネルのレバーを下げる。自動的に空気が吸い出されハッチのロックが外される。

 ソウヤは屠龍機動アーマーの加速力場ジェネレーターを起動して宇宙空間へ出た。


 宇宙空間に出て船の近くを漂っていると教授からの指示がくる。

「氷塊に近付き、近くにいる敵を排除するのよ」

 ソウヤは屠龍機動アーマーを加速させる。数分で氷塊の近くまで到達。それまで優雅に泳いでいた宇宙クリオネがソウヤに気付いて襲ってきた。近くで見る宇宙クリオネは非常に大きく感じる。ソウヤの心臓が高鳴り、薄っすらと汗をかき始める。


「落ち着きなさい。練習したじゃないの」

 教授の言葉で粒子弾を撃たなければと狙いを付けた。屠龍機動アーマーの腰に巻かれているベルトを両手で持ち射出口を宇宙クリオネに向ける。

 粒子弾を撃とうとした。何故か発射しない。二匹の宇宙クリオネがそこまで迫っていた。因みに星害龍は基本的に『匹』で数える。

「ソウヤ、早く撃て!」

 イチの焦った声。恐怖と焦燥感を感じながら自分の精神を押さえ付け明確に『撃て』と思考する。

 今度は粒子弾が発射された。高速で撃ち出されたボソル粒子の塊は宇宙クリオネの身体に命中。宇宙クリオネの半透明な外皮だけは丈夫だが、中の水分を多く含むゼリー状の体細胞は柔らかい。

 粒子弾は外皮を突き破り、貫通して反対側に抜けた。宇宙クリオネの身体には一〇センチほどの穴が開き苦しみ始める。

 それからは夢中だった。滅多矢鱈めったやたらに粒子弾を撃ちまくり宇宙クリオネを穴だらけにする。


「止めろ。もういい!」

 イチの声で攻撃を中断。

「ハアハア……」

 いつの間にか息が上がり肩で息をしていた。

 教授は氷塊を船の方に運ぶようにと、ソウヤへ指示を出す。


 三トンほどもある氷塊を連絡艇格納庫に運び入れた。教授の指示で宇宙クリオネの死骸も倉庫に入れる。

 連絡艇格納庫に戻ったソウヤは屠龍機動アーマーを解除し、服を着ると自分が取ってきた氷塊を確認した。


 操縦席にイチと教授を残し、アリアーヌとモウやんが連絡艇格納庫に来た。

 協力して氷塊を少し砕き、バウが用意した大きな寸胴鍋のような入れ物に入れる。

 その寸胴鍋には変な形の蓋があり、その蓋をすると寸胴鍋が蒸留器に変わった。蒸留器の底には加熱装置が、蒸気の吹き出し口の先には冷却装置が付いている。

 この蒸留器兼浄水器はバウの手製である。装置を動かす前に連絡艇格納庫に人工重力を発生させた。稼働させた重力制御装置もバウが修理したものだ。

 身体が重い。ソウヤたちは久しぶりに重力を感じた。そして、短時間で重力制御装置を修理したバウの優秀さに驚く。


「よし、動かすぞ」

 モウやんが蒸留器のスイッチを入れた。蒸留器が加熱され、中の氷が溶けていく。そして、沸騰し始め金属製のパイプの先から水が出てきた。

「成功や」

 ソウヤはパイプの先に探してきた予備タンクを置く。

「これで水の心配はせずに済みますね」

 アリアーヌは少しホッとしたようだ。


 改めて考えると彼女のことは何も知らない。取り敢えず自分たちのことを知ってもらうために地球という惑星から連れ去られた経緯と地球について説明する。

「大変な目にあったのね。……きっと、あなたたちが乗った小型艇は闇シンジケートの持ち物だったのよ」

「それやと、闇シンジケートが太陽系で活動していることになるやないか」

「げっ! 悪い組織が地球を侵略しようとしているってことなの!」

 モウやんが大きな声を上げた。

「そうじゃない。あなたたちの恒星系は天神族の管理下にあるのよ。そうでなければ、闇シンジケートが支配下に置いたはず」

 天神族は発展途上の種族が住む惑星を発見すると、どういう発展を遂げるか観察するために、自分の管理下にあると宣言し、他の種族が干渉することを禁じることがあるそうだ。

 その一つが地球を含む太陽系の可能性があると言う。


「そやけど、闇シンジケートがいたのは事実や」

 そうでなければ自分たちが下級民として売られることはなかった。

「偶然、事故か何かで太陽系を訪れたというのは、ほとんど可能性がないわ。密かにあなたたちの故郷の資源を盗んでいるのよ」

 恒星間基本法で恒星系に知的生命体が発生した場合、その恒星系は発生した知的生命体の所有となり、資源などを他の種族が奪ってはならないと決められている。

 ただ恒星間基本法を守るようなら、闇シンジケートとは呼ばれないのだ。天神族や地球人にばれないよう密かに活動しているのだろう。


「他の種族は兎も角、天神族が管理しているんやろ。ばれないの?」

「天神族は数十年に一度くらいの割合で、観察に訪れるだけらしいわ」

 話している間にすべての氷の処理が終わり二トンほどの蒸留水を確保した。人間は一日に二リットルの水分補給が必要だと言われているので、当分水の心配はしなくてもいい。

 ただ船内空気調整システムを動かすのにも水が必要なので、もう一度くらいは氷塊を取りに行く必要がある。


 三人は水の半分を船内の貯水タンクに移した。このタンクは給水システムにもつながっているが、船内空気調整システムにも水を供給している。

「後は食料よ。教授に相談致しましょう」

 アリアーヌの言葉に従いコクピットへ行き、教授に相談した。

「宇宙クリオネの死骸を、宇宙ステーションに設置されている屠龍猟兵組合の下部組織『素材買取ショップ』へ売るしかないわね。それで少し食料が買える」

 宇宙クリオネの肉はタンパク質らしいので食料に加工されるそうだ。中心部の赤い器官にはボソル粒子と炭素が融合したボソル化炭素が含まれており、パチンコ玉ほどの粒単位で売買されている。


「そやったら、あの化け物をもう少し倒そうか?」

「そうね、一〇匹くらい頼むわ」

 何故かモウやんが張り切り始める。

「今度は、僕がクリオネどもを退治してくるよ」

 モウやんは屠龍機動アーマーを装着し、宇宙空間へ飛び出す。モウやんは直進させるのは上手くできるのだが、細かい制御が苦手なようだ。方向転換時にモタモタしてしまう。


 モウやんが仕留めようとしているのは、一匹だけでウロウロしている宇宙クリオネだ。体長は四メートルほどで大きな氷塊の周りを漂いながら、周りにある薄汚れた氷の結晶を食べている。

 モウやんは三〇メートルほどまで近付き粒子弾を撃った。狙いが逸れ氷塊に命中し真っ二つにする。

 宇宙クリオネは屠龍機動アーマーに気付いて猛烈な勢いで迫る。モウやんは突進を躱そうとしたが、もたつき撥ね飛ばされた。


 くるくる回りながら真空中を飛ぶモウやんに、イチが助言する。

「加速力場ジェネレーターを使って回転を止めるんだ」

 モウやんはイチのアドバイスに従い回転を止め、敵の姿を探した。宇宙クリオネは近くまで来ている。慌てて粒子弾を発射。二度目の体当たりの直前に仕留めた。近距離からの粒子弾は一発で仕留めるだけの威力があるようだ。

「モウやん、船に戻りなさい」

 教授が体当りされたダメージで屠龍機動アーマーに不具合が生じてないか心配し、戻るように指示する。

 幸い屠龍機動アーマーはどこも故障していなかった。

 ソウヤとモウやんは交替で屠龍機動アーマーを操り、九匹の宇宙クリオネを仕留めた。ついでに氷塊も五トンほど運び込む。


 合計一一匹の宇宙クリオネを倒したソウヤたちは、レ・ミナス号の進路を宇宙ステーションへ向ける。

「腹減ったあーーーー。我慢できないよ。モフィツに食料を配るように言ってくる」

 モウやんがコクピットで声を上げ、船室の方へ向かう。モフィツがいる部屋の前にくると大声を上げた。

「モフィツ、食料を配れよ。ハラ減ったぞ」

「大きな声を出すんじゃねえ。分ったからドアから離れろ」

 モウやんがドアから離れると用心深く少しだけドアを開け、チューブ入り保存食五本と水のボトル一本をドアから放り投げ、すぐにドアを閉めた。

「今日一日分だ。節約しろよ」


 モウやんが怒りで顔を赤らめる。

「一日分て何だよ。それじゃあ普段の半分じゃないか」

 サリュビス号ではチューブ入り保存食が日に二回配給されていた。

「文句を言うんじゃねえ。食料は少ねえんだ」

 そう言われるとモウやんも言い返せなかった。放り投げられた食料と水のボトルを拾い上げてコクピットに戻る。


 皆で食料を分けて食べた。アリアーヌはチューブ入り保存食を食べながら涙を流す。

「泣くほど不味いけど、本当に泣いてどうするんや」

 ソウヤがアリアーヌの様子に気付いて声をかけた。

「こんなものを食べなきゃならない自分が、惨めで仕方ないのよ」

「分かるよ、その気持ち。僕も泣きたい」

 食いしん坊のモウやんが賛同する。


「モフィツの奴、どういうつもりなんやろ?」

 ソウヤがぼやくと、イチが口をへの字に曲げて。

「あいつは臆病な馬鹿なんだ。こういう事態だからこそ協力しなきゃいけないのに……。自分だけ少しでも長く生き残ろうと考えているんだ。きっと明日は食料を配らずに独り占めしようとするぞ」

「水は調達できたし、あの宇宙クリオネを売れば食料も手に入る。どこかで奴を放り出したいものね」

 全員が頷いた。しかし、放り出す場所がない。宇宙空間に放り出すことは、殺すということだ。

「宇宙ステーションには入れないんですか?」

 イチが教授に尋ねる。

「金さえあれば入れるわよ。但し、滞在許可証をもらうのに一万クレビット、一日滞在で一四〇〇クレビットが必要なの」

「それって高いの?」

 モウやんが尋ねると教授は頷き。

「あの宇宙クリオネの死骸全部を売っても一万クレビットにしかならないわ。それを基準に考えてみなさい」

「でも、ステーションに入れんのやったら、どうやって売るんや?」

 ソウヤが疑問に思ったことを問うと教授が答えてくれた。

 教授の説明では宇宙ステーションの係留ポートの一画に特別な施設があり、そこで手続きして売買を行うらしい。

 そこには食料品や生活雑貨なども売っているそうだ。


 その時、船のどこかで修理をしていたバウが戻ってきた。自分自身も修理したらしく、手足が正常に動いているようだ。但し、人工皮膚はボロボロのままである。

 外見で一つ変わった部分がある。胸にモニターが追加されていたのだ。そこに『ピプ』と音がしてから文字が浮かび上がる。

【できる限りの修理が終了しました。後は材料や部品、修理設備が必要です】

「そうか、分かった」


 五時間後、レ・ミナス号は宇宙ステーションの係留ポートにある素材買取ショップエリアに接舷した。その周囲には三隻の小型戦闘艇が停泊している。

 この星系で宇宙クリオネを狩って生活している屠龍猟兵の卵かもしれないと教授が教えてくれた。

 一人前の屠龍猟兵は宇宙クリオネくらいしかいない星系には寄り付かないので、これから屠龍猟兵になろうと資金稼ぎをしている若者なのかもしれない。


 ソウヤたちは教授に連れられ、接舷ゲートを通って素材買取ショップに入る。素材買取ショップだけは、素材の買取を行っている関係で滞在許可証は不要となっていた。中には一七歳前後の若い男女が六人ほど商品を見ながらぶらぶらしている。

 カウンターへ行くと受付をしているサンタクロースみたいな髭面のオッさんが声を上げた。

「おう、買取か?」

 低い声で訊かれた。モウやんが何か変な顔をしている。ソウヤが不審に思い。

「どうしたんや?」

「ここは冒険者ギルドみたいなもんなんだろ。だったら受付は美人のお姉さんじゃないと」

 オッさんがぎょろりとモウやんを睨む。

「むさ苦しいオッさんで悪かったな」

 モウやんは笑いながら、教授の後ろに隠れた。


 教授は溜息を吐いて。

「仲間の失礼をお詫びするわ。ところで、軟体星害龍1型の素材を売りたいのだけど」

 受付の男は、素材を引き取る運搬ロボットを送ると答えた。直径三メートルほどの球形ロボットが素材買取ショップから射出され、レ・ミナス号の倉庫から宇宙クリオネの死骸を運び出す。網のようなものに死骸を入れ宇宙空間を飛ぶ姿は海で網漁をしている漁船のように見える。


 宇宙クリオネの死骸が素材買取ショップに運び込まれ、何らかの検収チェックが行われるのを待った。一〇分ほど待った後、髭面の店員が質問をする。

 まず、屠龍猟兵組合に所属しているかどうかを確かめられ、していないと答えると二一パーセントの手数料が引かれると告げられた。この手数料の中には税金も含まれているらしい。因みに屠龍猟兵組合に所属していると手数料は一二パーセントになる。

「軟体星害龍1型の死骸一一匹分で一万三三〇〇クレビット、手数料を差し引いて一万五〇七クレビットだ」

 手数料は仕方ないとして、相場より低い金額を提示されている。最初にソウヤが倒した二匹の宇宙クリオネの状態が悪かったらしい。クレビットはレ・ミナス号の名義で地方口座を作り、その口座に振り込ませる。宇宙ステーションでだけ使える地方口座を作るのに身分証明などは必要ないようだ。

 口座を作るとカード型の特殊なメモリーチップが作られ、その中に口座情報と使用者の生体認証情報が暗号化されて入力される。

 今回は全員が口座を使えるように登録した。


「次は買い物だけど、何を買う?」

 教授の質問に、モウやんが速攻で答える。

「食べ物!」

 素材買取ショップはコンビニ並みの広さしかないが、倉庫には様々な商品が揃っているそうだ。

 陳列されている食料品をチェックする。最初にチューブ入り保存食が目に入る。一本九五クレビットだ。保存食の中では圧倒的に安い。


 チューブ入り保存食の他に乾パンや小麦粉、食用油、調味料など様々な物が売っていた。但し、葉野菜や肉などはない。この宇宙ステーションでは手に入り難いのだろう。

 言語素子ナノマシンが転写した言語知識は、ソウヤたちにイメージとして様々な物を教えてくれる。食料品などは似ている物が存在する場合、日本語の知識に関連付けて翻訳されるようだ。

 白い食用の粉は『小麦粉』のイメージが脳裏に浮かぶので、自然に小麦粉と呼ぶようになった。


 ソウヤはアリアーヌに料理ができるか聞いてみる。

「り、料理ですか……簡単なものなら」

「やったー、パンとか食べたいから小麦粉を買おうよ」

 モウやんは喜び、何故かアリアーヌが微妙な顔をしている。料理に自信がないのだろう。


 教授に聞いてみると小麦粉の正体は人工的に繁殖させた藻の一種を加工したもので、原料は小麦のような植物ではないそうだ。とは言え、成分的には小麦粉とほとんど同じなので小麦粉と呼ぶ。

 ソウヤたちは話し合い、チューブ入り保存食五〇本、小麦粉を大きな袋で一つ、砂糖を一袋、塩を小さな袋で一つ、ドライイースト、バターを購入。それでクレビットのほとんどを使い切った。


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