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天の川銀河の屠龍戦艦  作者: 月汰元
第1章 最悪のファーストコンタクト編
1/55

scene:1 小学生三人、未確認飛行物体を探しに行く

今回はスペースオペラです。

 ある田舎町に三人の小学生がいた。この三人は町でも有名な悪戯いたずら小僧で、小学校の教師たちからは要注意児童として知られている。

 S県土伊浜市山海町という狭いコミュニティにおいて、二つのグループがいがみ合っていた。旧山中町小学校の児童たちと旧海浜町小学校の児童たちだ。現在の小学校は、山中町と海浜町が合併し山海町となったことにより一つの小学校に纏められた新しい小学校なのである。


 山中町グループのボス的存在は三人、五年生の等々力創(とどろきはじめ)水上孟みなかみはじめ草加壱くさかはじめ。六年生ではなく五年生の彼らがリーダーなのは、三人の行動力がずば抜けているからだ。

 三人は四年生の頃からの友達で固い絆で結ばれている。ただお気付きの方もいると思うが、三人の名前が同じ『はじめ』なので、渾名あだなでお互いを呼び合うことが多い。

 等々力創は『ソウヤ』、水上孟は『モウやん』、草加壱は『イチ』である。


 放課後、海浜町グループの子供たちとサバイバルゲームに似た戦いを学校の裏山で繰り広げた三人は、戦いに勝利し傷の手当てをしていた。

 傷と言っても転んだ時にできた擦り傷や木の枝で傷付けたちょっとした傷で、手当ても湧き水で綺麗に洗ってから持っている絆創膏を貼るだけ。

 裏山の山頂近くで、三人は精一杯戦った後の爽快感を感じていた。


 手当てを終えた肉体派小学生モウやんが、筋トレで鍛えた身体の調子を確かめるようにポージングを決めてから。

「ソウヤ、あいつら弱かったな」

 モウやんは小学五年生にしては目力めじからが強い少年に声をかけた。

「イチの作戦勝ちや」

 エアガンを武器とするサバイバルゲームは小学生のソウヤたちには経済的に難しい。そこで輪ゴムを使った手製のスリングショットで戦うのが、ここの小学校のルールとなっている。玉はトイレットペーパーを濡らして丸く固めたものだ。


 今回は三対五の戦いだったが、イチが考えた陽動作戦を展開し窪地くぼちに誘い込み一網打尽にした。モウやんが肉体派ならイチは頭脳派と言えるだろう。

「ほしたら、アケビでも探してから帰ろか」

 関西弁のイントネーションに近いソウヤの言葉にモウやんとイチが頷いた。イチは平均的な体格のイケメン小学生である。クラスでは人気者で頭も良い。イチの父親が病院を経営する町の名士であることも人気を高めている原因の一つだ。特に女子から人気が高くバレンタインデーには持ち切れないほどのチョコをもらう。


 ソウヤは母親が四〇歳の時に産んだ子供だ。昔なら『恥かきっ子』と言われる子供で、一〇歳以上歳の離れた姉が二人いる。姉たちは頭脳優秀で一人は理系の大学院、もう一人は有名大学の医学部で学んでいる。

 父親は近くに在る大手電機メーカーの研究所で働く研究員だ。母親はおっとりした専業主婦で末っ子のソウヤには甘々の母親である。その母親は関西の人間で、ソウヤが口にする関西弁もどきは母親とその親族の影響である。

 血筋から言えばソウヤの頭脳も優秀なはずだが、学業成績は芳しくない。


 アケビを探し樫や桜の木が茂る雑木林の山道を登り、頂上まできた時、身長一六五センチのモウやんが夕方の空に光る点を見付けた。

「おい、あれって何だろ?」

 ソウヤとイチがモウやんの指差す方角を見ると、金色に光る物体が東の空から現れ町の西に在る伊井岳山いいたけやまの後ろに消える。

「今の何だろ。隕石かな?」

 イチが他の二人に尋ねた。ソウヤもモウやんも首を捻り答えられない。隕石にしては不思議な動きをしたからだ。山の向うに隠れる瞬間、減速したように見えたのだ。


「もしかしてUFOだったりして」

 モウやんが冗談のように言うと、ソウヤとイチが首を横に振る。

「ないない」「それはないよ」

 その言葉を聞いたモウやんが、目をキラキラさせる。

「確かめに行こうぜ」

 イチが驚いたように目を丸くして、モウやんの目を見た。こんな目をした時のモウやんは、誰が何を言っても聞かない。

「確かめるって……伊井岳山まで行くの?」


 イチが驚くのも無理はなかった。伊井岳山まで一五キロほどの距離があったからだ。

「自転車で行けば日帰りできるんやないか」

 ソウヤはいつの間にか乗り気になっていた。明日は祝日で学校は休みということもあり、そういう冒険も良いかもしれないと考えたのだ。

「でも、遠いよ。朝早く出掛けても昼には戻れないから、お弁当も必要だよ」

 イチの言葉にモウやんが笑顔を見せた。

「イチのおばさんにお弁当を頼もうぜ」

 イチの母親は料理が得意で、モウやんとソウヤは以前一度だけ食べたことがある。その時に美味い美味いと言って身動きできなくなるまで、モウやんは食べていた。その味を忘れていなかったのだ。


「ええ~っ、急には困るよ」

 イチは断ろうとしたが、食い物に目のないモウやんは引っ張るようにしてイチの家まで行き、イチの母親に頼み込んだ。

「へえ、明日ピクニックに行くの。お弁当は任せなさい、美味しいやつを用意するから」

 快く引き受けてくれた。モウやんが飛び上がって喜ぶ。


 三人はイチの部屋へ行き小型テレビを点ける。ニュースで隕石のような物体の情報を報道していないか確かめたが、そんな報道はない。パソコンを立ち上げ、ネットでも調べてみた。全く情報が存在しない。

「はっきり見えたよね。UFOじゃなくて人魂だったのか」

 モウやんが首を傾げながら呟いた。ソウヤが嫌そうな顔をする。心霊現象とか大嫌いなのだ。

 三人が目撃した未確認飛行物体は、レーダーにも映らず目視した人間も少数だったので、ネットでも話題にならなかったようだ。

 行動を起こしたのが小学生三人だけだったのは、幸運だったのか不運だったのか。


 翌日、児童公園に集合した三人は持ち物をチェックする。

「イチ、お弁当は?」

 モウやんが一番に確かめる。イチが自転車のカゴに積んであるリュックを指差した。モウやんは笑顔を見せ満足そうに頷く。

「他に何を持ってきたんや?」

 ソウヤがイチに尋ねると、リュックから双眼鏡を取り出した。それを見たソウヤとモウやんが、「おおっ」と声を上げる。


「ソウヤは何を持ってきたの?」

 ソウヤがリュックを下ろし蓋を開けて見せる。

「オヤツのクッキーと温かいお茶を入れた水筒、ほんでもって懐中電灯とスコップやな」

 モウやんが首を傾げた。

「何で懐中電灯とスコップなんだ?」

「隕石が穴の中に埋もれとったら、探す時に懐中電灯とスコップが必要になるかもしれんやろ」

「そうか。僕は二リットルのコーラと菓子パンだ」

 モウやんはコーラが好きで真冬でも飲んでいる。だが、自転車で炭酸飲料を運ぶと振動でどうしても危険な状態になる。ソウヤとイチは顔を見合わせ、二人して大きく溜息を吐く。


 三人はそれぞれの自転車で児童公園を出発。古い家が多い住宅街を北へ抜け、竹林が多い地域を西へと自転車を走らせる。空は雲一つない青空で秋だというのに汗をかくほど温かい。

 竹の清々しい香りを嗅ぎながらしばらく走って、山道に突入した。それから四〇分ほど走った頃、伊井岳山のふもとに到着。


「ふえぇ、疲れた」

 自転車を山道の脇に停めた三人はちょっと休憩する。モウやんがリュックからコーラのペットボトルを出し栓に手をかけた。それに気付いたソウヤが慌てたように声を上げる。

「ダメや!」

 モウやんが首を傾げ、栓を開けた。その途端、ペットボトルの口から盛大に泡が吹き出しモウやんの顔を直撃。

「うっひゃー!」

 その様子を見てソウヤとイチはげんなりする。二人が予想した通りの結果となってしまった。


 イチはリュックからタオルを取り出しモウやんに渡す。

「ありがと……ふう、ひどい目に遭った。このコーラはきっと不良品だったんだ」

 イチが頭を振りしょうもない奴だというように溜息を吐く。

「違いますよ。モウやんはコーラの入ったリュックを自転車の籠に入れていたでしょ。この山道は途中から舗装されていませんでしたから、自転車の振動がコーラのペットボトルに伝わって相当揺すられたはずです」

 ソウヤがイチの言葉を引き継ぎ。

「そうや。コーラを揺するとどうなるかぐらい分かるやろ」


 モウやんが照れたように笑い。

「ハハハ……、わ、分かってるよ。不良品なんて冗談だよ」

 ソウヤとイチのジト目がモウやんには痛い。


 アクシデントはあったが、休憩してから伊井岳山の裏を目指した。

 伊井岳山の裏に回る近道は獣道のような細い道である。三人は自転車を残してリュックを担ぎ歩き出す。

「この辺は杉ばっかしだな」

 モウやんが言うとソウヤが周りを見回す。直径三〇センチほどの杉の木が同じような間隔で空へと向かって伸びている。手入れはあまりされていないようで、全体が暗く下草が少ない。

「戦後に建築ブームが起きて木材不足になり、その時政府が補助金を出して杉を植えるのを奨励したんやて。杉は建築材として使い易いからだっておとんがゆうてた」

 ソウヤが父親から聞いた薀蓄うんちくを披露する。

「戦後っていつ頃だよ?」

 モウやんが尋ねた。

「七〇年位昔やな。それよりスギ花粉で花粉症になる人が多いんやろ。杉なんか切っちゃえばいいのに」

 ソウヤの提案は過激なものだった。


 その言葉を聞いてイチが笑う。友達のイチが花粉症で苦しんでいるのを知っているソウヤらしい言葉だとモウやんは思った。

「あの隕石が落ちた方角は、こっちで合っているの?」

 イチがモウやんに確かめる。三人の中で一番目が良いのがモウやんなのだ。

「間違いないよ。多分イロメ湖辺りに落ちたはずだ」

 イロメ湖は伊井岳山の麓にある湖で一度遠足で行ったことがある。釣り人以外はほとんど人気ひとけのない場所で、鮎釣りの季節となれば来る人も多いが、今は少数の釣り人しかいないはずだ。


 三〇分ほど歩いた頃、イロメ湖が見えてきた。この湖は大きい湖と小さな湖が水路でつながっており、ひょうたんのような形をしている。三人が目指しているのは小さな方の湖で釣り人もあまり近寄らない。

 杉林を抜け湖に辿り着いた三人は、湖に沿って北へと向かう。未確認飛行物体が落ちたのは湖のちょっと北だとモウやんが主張するからだ。

 モウやんの先導で湖の傍にある丘を越え、盆地のような地形に出た。そこで異様な光景を目撃する。


「すげえー!」

「アンビリバボー!」

「何が起きたんや」


 何かに引き倒されたかのように数十本の樹々が倒れている。三人は倒れている樹の近くへ駆け寄り調べてみる。

「隕石が押し倒したんでしょうか?」

 樹が根本から折れて倒れている。天から落ちてきた隕石が接触したとして、こんな状態になるだろうか。この倒れ方はトラックのような重量物に押し倒されたような感じだ。

「倒れとる樹を追ってみよう」

 三人は樹が倒れている方向に進み、異様な物体を発見した。


 全長が一〇メートルほどの黒い弾丸状のものが丘に突き刺さるようにして横たわっていた。何らかの金属で作られており、後部にジェットエンジンのような物が組み込まれているので巨大なミサイルのようにも見える。注意して観察すると中央部分のハッチが開いていて、近寄れば内部が見えそうだ。

 三人は声も出せずに驚く。モウやんは黒いミサイルを指差したり腕を振り回したりしているが、声がでないようだ。

 ソウヤとイチは口を開け、アホ面を晒して見詰めている。


「何だ……これは?」

 ようやく声が出せたイチが、呟くように言う。その声で呪縛が解けたようにソウヤも。

「ジェット機のエンジンみたいなのがなけりゃ潜水艦みたいに見えるんやが、違うんやろな」

 こんな山の中に潜水艦がある訳がなかった。残る可能性は一つだけ。


 モウやんが身震いすると大声を上げる。

「すっげえーーー、本物の宇宙船だぁ」

 ソウヤとイチは顔を見合わせ。

「どうしますか?」

 割と冷静な声でイチが尋ねた。ソウヤは腕を組んで頭を悩ます。

「俺たちが対応できるもんやないやろ。誰か大人を呼ばなあかん」

「それには自分も賛成ですが、大人って誰を呼ぶんです?」

「警察? 自衛隊? ……小学生が言っても信用してくれそうにないでぇ」


 その時、二人はモウやんがいなくなっているのに気付いていなかった。

「うおおっ、ソウヤ、イチ、ここから入れるみたいだぞ」

 ソウヤとイチがちょっと目を離した隙に、モウやんが謎の物体のハッチによじ登り中に入ろうとしている。

「ダメや、入るんやない!」

 その声が聞こえたかどうかは分からない。無視するようにモウやんは中に消えた。二人はモウやんを追って黒い物体をよじ登り、モウやんが消えたハッチの中に入る。


「モウやん、勝手に中に入ったらダメじゃないか」

 イチが珍しく厳しい声を出した。

「ごめん、ちょっと興奮し過ぎた」

「兎に角、一度ここを出ようやないか」

 三人が引き返そうとした時、開いていたハッチが音を立てて閉まった。


「あっ!」「何や?」「どうしたんです?」

 壁の一部が淡い光を放っているので、陽の光が差し込まなくなっても真っ暗にはならなかった。三人は慌ててハッチまで近寄り再び開けようとする。モウやんが力一杯押しても開かず、ソウヤとイチはスイッチやボタンの類を探した。


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