ゼツボウ
ー暗い森の中を俺は走り続けた。
そして走り続けたその先に光が見えた、光が近くなってきた……いつの間にか目の前は光に包まれた。
………目を覚ました、ここは病室だ。
病室に誰もいない、窓から入る風が心地いい。
約10分ほどがたった時、父さんが病室にきた。
「……健人……目を…覚ましたのか…」
その目には涙が溢れていた。
「父さん…?心配かけてごめんよ…今日は母さんは?」
父さんの顔は少し老けているように見えた。
「母さんか…母さんなら、2年前に癌で死んだんだ…」
「死んだ……?2年前に?」
「そうだ…死ぬ間際までお前に会いたがってたんだが…な…」
未だに現状を理解できず、混乱している…
「お前が昏睡状態になってから…10年……長かったな…母さんは死んでしまう…それに遥香ちゃんも……」
「遥香!そうだ!遥香は!?それにカナちゃんは!?」
「遥香ちゃんは……7年前…お前のお見舞いの帰りに、お前を刺してまだ捕まっていなかった戸田翔太に殺された、その後そいつもそこで自殺…」
「遥香が………殺された……」
「そうだ…腹を3回も刺されていたそうだ…あんまり今のお前には話したくは無かったが…」
もうこの世のどこにも遥香はいない……絶望、それを超えるものがここにあった。
俺は遥香を守るきることができなかった。
もう一度遥香に会いたい…
あの日常を返してほしい…
「じゃあこれから俺は………」
「とりあえず…もう少し…この病院に入院だ…退院したら、詳しいことを話そう…」
その時、一人の女性が入ってきた。
「健人くん!目を覚ましたんですか!」
聞き覚えがある声、白銀の髪の毛、間違いない彼女はカナちゃんだ…
「……カナちゃん…」
「やっと……目を覚まして……」
すると彼女はその場で泣き崩れてしまった。
「ごめん…俺のせいで…」
「…10年……長かったです…もうあの日々を取り戻すことは…………出来ないですね……」
泣きながら彼女はそういった。
その時、俺は舌を噛み切った。
「おい!健人!」
口から流れる血…必死に父さんが俺を呼んだ
もう疲れたんだ…もういいんだ…遥香のところにいきたい…………
……………