カメラと昼食と
その宿への帰り道俺達は終始沈黙だった、まだドキドキは止まらない。
「恋人なら手を繋いでくれても…」
カナはそう言った。
「そ、そうだな!」
苦し紛れに俺は答えた。
カナの手はとても小さくて、潰れてしまいそうで怖くなるほど繊細でどこからあの力が出るか不思議なくらいだ。
「今日と明日だけは健人くんは私のものです!にひひ」
可愛らしい笑みを浮かべてカナが言った。
そう、今日と明日だけ。
それが終われば俺たちの関係は…ただの同居人(友達)になってしまう。
それがカナとの約束。
変えられない約束。
俺には決めた人がいるから。
でも今は今だけは俺のことを思ってくれている、カナの恋人でいたいと思った。
「寄り道しませんか?」
山を下りながらカナが言った。
「いいけど」
するとカナは俺の手をひいて、山から街が一望できる場所に連れてきてくれた。
「おぉ!絶景だな!」
秋の山はモミジ色に変わり、まるで真っ赤に山がもえているようだ。
「寄り道もいいものでしょ?」
笑顔でカナがそう言った。
「そうだな…そうだ写真でも撮るか!って言っても俺はスマホ忘れちゃったから、カナのスマホで撮ろう!」
するとカナはカバンからスマホを取り出し内カメラにして、2人で紅葉を背景に写真を撮った。
「とってもいい写真ですね!」
声を弾ませながらカナが言った。
「あぁ!そうだな!」
写真を撮る時、カナと近くてドキドキしててそれどころじゃなかったけど…
「ホントにいい写真ですね…」
カナが笑顔でどこか悲しそうにそう呟いた。
ギュルルルル
そんな表情を打ち消すように俺の腹が鳴った。
「何か食べにいきますか!」
カナはいつもの表情に戻って言った。
「そ、そうだな」
俺は恥ずかしがりながらそう答えた。
山を下り、俺たちは街にでた。
そこで俺たちは吸い込まれる小さな洋食屋に入った。
「凄い雰囲気のお店ですね」
店内はまるでさっき居た場所とは変わって、落ち着いていて、まるで映画の世界に入ったような、そんな気分になった。
「誰かいるのか…」
潰れてなかったらいいが…
すると奥から店主が出てきた。
「いらっしゃい」
店主はとても優しそうなおじいさんだった。
店主は窓際の席に案内してくれた。
「注文が決まったらベルで呼んでください」
そういうと店主は水を置いて、カウンターの椅子に座った。
雰囲気のせいか、なぜか少し緊張する。
まるで昔の洋画の中に入ったような。
「何にしますか?」
カナがメニューを持って俺に尋ねた。
「じゃあ俺はこのオムライスにしようかな?」
「私はハンバーグですね!」
普通逆じゃない…ガッツリ系カナさんいくんですね…
頼んで10分後くらいにオムライスとハンバーグがきた。
「わぁー美味しそうですね!」
「そ、そうだな」
目の前にはハンバーグの香ばしい匂い。
オムライスも美味しそうだが、匂い部門ではハンバーグがダントツだ。
「健人くんも一口いりますか?」
食べていると、カナが気を使って言ってくれた。
全然物欲しそうには見てなかったんだけどね!!
「あ、あぁ一口」
するとカナは一口サイズに切り俺の口元に持っていった。
これが美味い、肉汁が溢れて柔らかいハンバーグを包み込む…美味…
「だから健人くんのも一口…」
さてはコイツ俺のを最初から狙っていたな…
「いいぞ!」
快く俺は答えた。
俺はスプーンでカナの口に運んだ。
ハンバーグも美味しかったがこっちも全然負けていない。
ふと気づいたけどこれ関節キスじゃん…!
「関節キスですね…健人くん」
顔を赤くしてカナが言った。
「ま、まぁそのまぁそうだな」
何となく俺は答えた。
2人とも全てを平らげ、お会計。
「中々お客さんが来ないもんで」
店主は笑顔でそう答えた。
「そこにいるお嬢さんは彼女ですか?」
「はい」
そういうとカナの顔は真っ赤だった。
そんな俺も真っ赤だけど
「若いっていいですね…」
店主は笑顔で言った。




