南への道 ~南のご令嬢~
やべ、賭けの勝負内容考えるためにカイジ読んでたら、ええぇ、時間経つの早くない?
なんてことだ―――
「・・・お前のことはわすれないよ・・・ジョニー・・・」
私たちはおしい人を亡くしてしまった。思い出すだけで瞳から雫が落ちる。なんてことだ、自分の無力が憎い。
「ホント、あいつはイイ奴だったよ・・・なんであんなことに・・・」
チンピラBは嗚咽をもらしながら涙する。B・・・そうだよね、私たちより付き合いが長かったんだよね・・・
「なんてこと・・・そんな・・・どうして・・・」
少女は驚愕を隠せない様子だ。・・・無理もない、あんなことがあったんだ・・・あんな・・・こと・・・
「・・・あのさぁ」
チンピラCは物言いたげにつぶやく。・・・はなむけの言葉でも贈ってくれないか?
「――――テメェら!!いい加減にしてやれ!!Aがかわいそうだろ!!」
Cが怒鳴った!ご尤もである!!
・・・そう、ジョニーは・・・ジョニーは・・・もう・・・
「あの~そろそろ、引き上げてもらえませんかね?あの、おーい!ところでジョニーってだれですかぁー?」
チンピラAは泥沼に落っこちていた。綺麗に華麗に雅やかに。広がって歩いていたもんだから、一番端のAがスッとヒューポチャした。
見事なものだ、私でなかったら見逃しちゃうね!
・・・ところでジョニーって誰よ・・・
「おいッ!テメェらが泣いてるのは、笑い泣きだろうが!!Bのは嗚咽じゃない!愉悦だ!ボケッ!」
と怒り心頭である。怒鳴るだけ怒鳴り散らして、CはAを引き上げに行った。それに続き私とBも援護しに行く。
「いやぁ、すまんすまん。あまりにも素晴らしいものを観たのでな。ふっくぷふふ」
謝罪の念を感じさせぬ謝罪をし、笑いを噛み殺しながらAを引き上げにかかった。
ん?私は手伝わないのか?この泥沼に肩までズッポリ浸かっているAを引き上げる作業なんて今の私の腕力じゃ役に立たないであろう事に気が付いたのだ。決して手が汚れるとかじゃないから。じゃないから。
「いやぁ、大変な目に遭ったぜ。あそこまで深いとは夢にも思ってまなかったしな!・・・もうメンドーだからこのまま行くか」
Aの服には泥がベトッと付いていて、控えめに言って触りたくない感じだ。Aは服をバッバッと払ってはいるものの、泥はなかなかに落ちない。そのうち諦めてトボトボと歩き出した。いや、その恰好のまま街長に会うんかい!
しばらくこの話題でAをBと一緒にいじりながら歩くと―――
「うわぁ・・・おやしきだ。りっぱなおやしきだ」
どうやらここが目的地の様だ。目の前には、THEファンタジーってお屋敷がそびえ立っていた。奈落街にこんなお屋敷立ててて大丈夫なのだろうか?大丈夫なんだろうな。しかし、お屋敷なんて初めて生で見たよ。シル○ニヤ家族の家は含まないで。
ふむ、なんだかこう、お屋敷を見ると滾るものがあるな。テンションあがる!
「はぁ、とうとう着いちまったよ。出来る事なら顔を合わせず帰りてぇな・・・」
どうやらCは街長に会うのが嫌らしい。AとBもそんな感じで苦虫を噛みちぎっている。
「あ、その、あの、か、勝手に入っても、大丈夫なんでしょうか?」
と少女は心配しながら後ろにくっ付いて歩いている。でも確かに、門番なんていなかったし、そもそも人の気配がしない。
「あぁ?別に大丈夫だぜ。街長が自らそうしろって言ってんだ。まっ、ここにろくな金目のもんなんて無いしよ、誰も街長を襲おうとする度胸のある奴なんていないんだよ」
アマゾンに三日間迷い続けている様な顔つきでAは答えている。どれだけ街長に会うのが嫌なんだよ。
それにしても、こんなお屋敷に住んでいて金目の物がないとは・・・まぁ、私が首を突っ込んでいい問題ではないな。
「そろそろ街長の部屋だ。くれぐれも粗相が・・・って勝負事だしな、あって当然か」
勝負事に粗相は有り物って考えが気になるけど、Cも相当会うのがヤなんだろうな。顔が死んでやがる。
ああ、この扉の向こうか。街長がいるのは。鷹と虎が向かい合って牽制し合っているレリーフがある大扉の前まで来た。
ぎ、ギュギギガガガ―――扉が錆びついた様な鈍く重い音をたて、床を軋ませながら開く
「街長、戦争だ。相手が来たぜ。要望は自分から聞いてくれ。・・・そろそろ茶ぁ飲むのヤメロ!!この、紅茶中毒者がっ!!」
青筋を立てて怒鳴り散らすCの存在を認識できていないような仕草―――って本当に認識できて無さそうに、優雅にティーカップに口づけしていた。絵になる風貌、窓から射す夕日が油絵のように色を映し出す。これが本物の貴族か・・・
このままでは埒が明かないので、私は南の街長の前を陣取るように椅子を勝手に持ってきて、サイドテーブルを挟むように座った。しかし、やはりと言っていい程、紅茶に夢中になって黄昏ている。勿論、間違っている意味での黄昏ているだ。・・・毎回こんな感じで黄昏ているのかな?Cの心中ご察しします。
少し小腹がすいたので、お茶請けを用意しよう。私はカンカンを一缶取り出し蓋を開け、使われていないティーカップにポットの中の紅茶を勝手に注いで一息ついた。砂糖とミルクがないのは残念だけど、カンカン (チョコレート味)が良いチョコ風味を出している。どうせ異世界のチョコなんてしょぼいと思っていた私にパイルドライバーを喰らわせてやりたい気分だね。食感は乾パンに似ているよ、その中にチョコが入っている感じかな。
「「・・・ ・・・ ・・・」」
おっと、BとCの視線が痛い。Aはホットチョコを淹れようとキョロキョロしている、扱き過ぎたな、ごめん。
街長と私でカンカンを摘まみながら紅茶をすする、ああ優雅だなぁ。・・・BとCの視線が痛い。
「あら、お茶請けがなくなわれてしまいましたわ。チェリーランドさん、すみません・・・私が欲張ってしまったために・・・」
目の前のお嬢様は南の地区の生態には相応しくない柔らかの物腰で、初対面の相手にも礼儀をもって接してきた。
モノホンのお嬢様なんだなぁ。もはや令嬢って言葉が似合うくらい。
「いやだなぁシャルニティーレヴンさん、そんなにかたくるしくなくていいのに。私のことはノンノって呼んでください。私もあなたのことをナーミルさんって呼びますから」
「そうですか・・・ノンノさんだけ私をさん付けにして呼ぶのは不公平だと思います。ですので、私もノンノさんの事をノンノさんって呼びますわ」
「いやいや、ザンネンですね・・・少し他人ぎょうぎなカンジがします。嫌われちゃいましたかね?」
「そんな事はありませんわ。むしろ愛してやまない位ですわよ。いつもご老体からお話しをお伺いする度に、一目、一目会いたいと思っていましたわ!それが、こんなにも近くでお会いできるなんて!」
「そんな、私なんかにきょうみを持つのはユウイギではないですよ?私はなんのへんてつもない少女なのですから」
「でも、可愛らしいわ」
「そうですか?そういわれますと、おせじでもうれしいです!」
「そんなご謙遜をなさらずとも」
「いえいえ」
・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・
皆様はお分かりになられただろうか?この高度な腹の探り合いを。ただの他愛もない会話の様に聞こえるが、油断するとじわじわと攻め込まれるこの攻防。正直おかしいね。生前?、ねちっこく口達者なクラスの女子に教わったことだ。
「世間話やお土産とかで、奥様ランキングがキマッから!マジで!流行のブランドやファッションを知らないと侮蔑されてさぁ、土産なんかダサいの買ったらマジターゲットよ!え?・・・いじめのにキマッてんじゃん (笑)」
私はこれが切っ掛けで女子が苦手になったのは言うまでもない。
私たち以外の四人がポカンとしているのも無理はないだろう。正直私も、あの会話で嘘1つ吐かれなかったことに恐怖を覚えたから。
「さて、それでは始めましょうか。私たちの全てを賭けた戦争を―――」
「チップは私の身体すべてでおねがいしますね?そして、それソウトウのものをようきゅうしますよ―――」
女の戦いが始まった
南の街長の名前は、ナーミル・H・L・シャルニティーレヴン
シャルニティーレヴン家の長女で、下に弟二人と妹一人いる。
シャルニティーレヴン家の中でも異端中の異端。いや、他の兄弟たちはまともだよ。