南への道 ~南の名物~
逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ
目の前のこの課題の山から
「しかし嬢ちゃん、正気ですかい?うちの街長に喧嘩を吹っ掛けるってのは」
チンピラBは呆れた様な、尊敬する様な表情で問いかけてくる。それも当然だろう。これからヤる相手は、この南地区の輩に圧倒的な快勝と言う結果を叩き付けた女なのだから。
正直、勝てる気がしない。だけれども、勝たなくてはいけない。
「やぁ・・・娘っこが街長に勝ったらなぁ、俺らの借金がチャラになんのかなぁ」
とチンピラA。この地区の輩は街長に対して何千億もの借金がある。・・・どんだけ負けたんだよ。
お前は気楽でいいな。お前のAは、きっとココアのAだろうな。違うけど。
「おいガキ。ここまで来たんだ、勝てよ」
と素っ気なくチンピラCが言ってきた。なんだよ、ツンデレかよ。需要あんのかよ。
多分・・・応援・・・してるのよね?
「あ、あの!え、ええと、が、頑張って下さい!」
と、隣を歩いている少女が応援してくる。天使、以上。
ところで、私には気になることがある。おじさまの所の名物は焼き串だった。じゃあ、
「ちゃっとココア・・・じゃなくてA君?その、あそこに置いてある~、缶に入っているものはなんだい?」
南の名物はなんだい。さっきから私のセンサーがビンビン反応しているんですが、それは。
「ん?あっ、あれか!おまえらの所にはないのか?ないから聞いてるのか!わははは!あれはなぁ」
と、少しためてから、
「「「カンカンだろ」」」
ハモりやがった。しかし、カンカン。かんざしって意味じゃないよなぁ。
いや、それよりも重要なことがある。
「ところで、あの“C”と書いてあるのは何味だい?」
それが重要だ。頼む、当たっていてくれ・・・
「あれか?チョコレートだr
よ―――――――しゃァァァァァァァァァァ!!この世界に来てから口にできなかったチョコレートだ!
何年ぶりだ!ひゃっほい!買い占めろ!ヤロー共!・・・よし、落ち着いた。
「そ、そうか。Bよ、ありがとう。まま、まぁ、しゃうぶ中にはらがへってはしゃうちゃうできないからね。しょうがないね!うん!よし!五つくらい買っておこうかなぁ・・・」
うん、落ち着いてないね!うん、Bが優しい目でこっちを見てやがる。AとCみたく気づかなければいいものを。
「そうだな、街長にお土産ないと駄々こねるし、合わせて十缶くらい買っていこうか」
いつもと変わらぬ声のトーン、表情、そして変に思われない様の口実。こいつ・・・紳士だ!
こいつのBはビリーブのBだ、違いない。
「あ、あの、ええと、わ、私も一ついいですか?」
と隣を歩いている少女がねだってきた。そんな申し訳なさそうな顔をしないで、あの店のカンカン買い占めるから。
「よし、じゃぁ十五缶買っていこう」
Bはそう言って、店の人と話をつけに行った。もちろん、店の人はチンピラ、世紀末風の。
「おいガキ、テメェ街長とのやつ。あれ、勝算あんのかよ?」
Cは心底呆れた風に聞いてきた。こいつは私に勝ち目がないと言いたいのだろう。
何回も言うが、ここの街長はチンピラどもを手玉に取る程の実力者だ。どんなイカサマを仕掛けてくるか想像できない。私もそれなりに見抜く方法は知ってるが、なんせ異世界、どんな事が起きるか予想できない。
「ないよ。でも・・・かつよ」
勝算も情報も味方もないこの状況、自信だけは強くなくては。私は、そう強く返事をした。
「そうか・・・気を付けろよ」
Cなりの警告と応援であろう。素っ気ない、だけれども、その一言で決意が固まった。
「嬢ちゃん、買ってきたぜ。・・・それじゃ、そろそろ行くか。覚悟をしとけよ?
俺も一回しか街長と賭け事したことないけど、それでも―――――強いぜ、あの女」
ニヤつきながらBが言ってきた。まるで、負け戦に行くやつを嗤う様に。Bめ、いい性格をしてるな。
あぁ、これから戦う相手は強い。分かる。なんせ、どいつもこいつも南の街長が負けることは考えていない。
敵ながら、いや敵であるが上での信頼。いつまでも壊れる事のない神話じみた諦め。
これは作業だろう。勝負しに行って、勝負して、そして負ける。簡単な、単純単調な作業の繰り返し。
いや、それも今日までかな?だって、私が勝つもの。
私はカンカンの中のクッキーみたいな生地に包まれたチョコレートを頬張りつつ、最初のボス戦に想いを馳せた。
まさか、無力な私の最初の勝負が賭け事とはね。
ノンノちゃんは、焦ると噛みまくります。
ノンノちゃんは、ちょっとおかしなところで噛みまくります。
ノンノちゃんは、チョコが好きです。
ノンノちゃんは、チョコレートが大好きです。
ノンノちゃんは、キノコかタケノコかは、心底どうでもいい問題だと思ってます。
ノンノちゃんは、見た目はロリっこ、頭脳は高校男子です。
ノンノちゃんは、海藻が嫌いですが、酢昆布は好きです。
~ノンノちゃん取扱い説明書、3頁目の数行~