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プレゼント・ディザイア ~無欲の魔王~  作者: 相川キリンwithヒゲメガネ
Ⅰ 人であろうとする者、この広大な大地に足をつけた
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冬の足跡 Ⅱ

ああ、お前はいつだってそうだ。目標を達成しない。

「おまえさ・・・何で、いや・・・どうして異世界なんかに行きたいんだ?」

―――別に地球と変わらんだろ?


「なんでって、そりゃぁさ・・・この世界に飽きたから」


「違うだろ、きっと。おまえはさ――


「また説教?そんないちいちくじくじして、歳は取りたくないもんだね」

兄貴が怒ると確信していた。面倒な説教の話をそらす。いつも通り、それが日常だ。


「・・・そうだな、歳は取りたくないものだ」


「え?・・・なに?本当にじじいになっちゃったの?」

いつもとは違った。普段と違う。


「そう・・・かもな。でもよ、おまえはさ、異世界に行くこと自体には何の興味も無いはずだろ」

―――おまえには「 菴輔b縺励◆縺?%縺ィ縺後↑縺?□繧 」?


「いやいや、そんなことはない。そんなことはない」

だってだってこんなにも、違うそんなことはない、絶対違う。


「俺の考察だが、お前はこの地球では得られなかった」


―――「 谺イ 」が欲しいだけだろ?



 懐かしい、地球での日々。兄貴と過ごした日々。事ある毎に小言を言う兄貴をわずらわしく思っていた。だって、いつもいつも知った風に、理解している風に上からモノを言う。人は知を得るたびに固くなり、柔軟性を失う。それなのに、知った風に。いや、本当に知っていたのかもしれない。家族であり、兄弟なのだから。最も近い他人であり、最もうるさい親友でもあるのだから。ホームシック、私は今、望郷に浸っているのだろうか。

 それはそうと、今日も一段と冷える。氷龍許すまじ!

「おじさま?どこへ行かれるのです?」


 おじさまはこんな寒い中、身だしなみを整えてどこかへ行く準備をしている最中だった。


「ん~?ノンノ・・・これから南の地区の長に会いに行くのじゃ・・・はぁ・・・ちょっくら家を空けるぞい」


 ほほう、おじさま以外の街長(まちおさ)か。気になるけど、おじさまの顔が物語っている!まるで、ギャンブルで大金すった時にお金を貸してもらった悪徳金融に会いに行くような、近所の悪がきが悪さしたので謝りに行くついでに叱りに行くような顔をしていらっしゃる!!そして私の生存本能が、今はまだ会いに行くなと… … …


「その、南の街長はどんな方です?」


「ん、捻くれて359度のやつじゃ・・・変な方に冴えておってのう、悪知恵ばかり働くやつじゃ・・・まったく、はぁ・・・」

とおじさまは、あきれにあきれた様子だった。


「ノンノや、わしはしばらく留守にするから、大変なことが起こったらリーヴィあたりの所に行くのじゃぞ!それじゃ、逝ってくるぞい」


 私は手を振りながらお見送りをした。おじさま、どうか御無事で。


「しかし、おじさまがいないとなると・・・かなりの暇だね・・・そうだ!マフラーみんなの分作ったから、配りに回ろう!」

 おじさまがいない時間はこれで過ごそう!私はそう、意気揚揚に支度に取りかかった。まず誰の所に行こうか?ん~シャウラさんと若者さんの所かな?あねごの所はここから少し遠いし、リーヴィは、まぁ、後でいいや。

 寒空の中、少し厚着をして私はマフラー配りに行った。



 2時間後、私は奈落街のあねごことリ=スズ姐さんの所にいた。


「ひゃははは!いいねぇ、このマフラーってやつは!ぶかぶかのトロールにならなくても暖けぇや!お嬢!ありがとな!」

と男勝り、いや、豪快!豪傑!なんかそれっぽい字の擬人化みたいな喋り方をする。それに性格や態度も、まぁお察しで。


「あねごにはいつもお世話になってますから、日ごろの恩返しですよ!」


 そう、お世話になっているのだ。何にだって?もちろん、武術や護身術・・・ではない。そう!料理!編み物!お掃除の仕方!意外!あねごはそういった家事が私よりはるかに得意なのだ!


「そうだ!お嬢!これから用事はあるかい?この前リーヴィの野郎に借りっぱなしだった医学書、これを頼まれてくれねぇか?」

 あねごは医学書も嗜まれる。


「りょうかいです!それでは行ってきます!」


 我ながら、子供は元気である。こんなに勢いよく手を振りながら走るとは、相当若いな。そういえば、この私って何歳なんだろう?



「ゆーきやこんこんあられやこんこん♪そろそろ♪そろそろ♪やまなきゃこまる♪」


 人は人生で若気の至りというものがある。自作のポエム等がそれだ。その場の勢いで書いてしまう。そして、今の私もだ。やぁぁぁぁ!!恥ずかしいぃぃぃぃぃ!!土に埋めてェェェェ!!!

私が暗黒面と戦っている最中、前から誰かがぶつかってきた。


「きゃっ!と・・・と、て!・・・いたたたた、んーんん!・・・あっ!大丈夫!」

結構な勢いでぶつかってきたが、怪我はないだろうか?そんな心配をしてると、

「あ、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!ごめんなさい、すみません、少し急いでいまして!あの、ごめんなさい!お怪我はありませんか!?ごめんなさい!ごめんなさい、すみません・・・」


 すさまじい、なんだこのか弱さメーターの高さは。マリアナ海溝ふたつ位すっぽり入りそうな高さだ!くっ!スカウターが!!・・・よし、落ち着け。

ん?衝突犯は少女かな?私と同じくらいの背の高さ。いや、少し高いかな?身なりはみすぼらしいけど、どこか気品のある風格が。フードで目元まで隠れてるけど、チラリズムする髪は、エメラルド?大雑把に黄緑。おどおどしていて落ち着きがない。小動物の様な。


「大丈夫大丈夫、それよりどこかすりむいてたりしてない?どうしたの?そんな急いで」

となるべく威圧を与えない、自分は無害アピールを惜しみなくにじませる。


「え、あ、あの、ごめんなさい。はい、どこもいたくありません。ごめんなさい」

 目の前の少女はうつむきながら答えた。… … …よくみると、ぶかぶかのローブから赤く、痛々しい傷跡が見え隠れしている。


「あ、けがしてるじゃない!ついてきて、このあたりに私の友人の家があるの」


 私は、動揺し遠慮する少女の手を引っ張りながら歩いて行った。リーヴィの所なら傷薬もあるだろう。それに、おじさまは言っていた。大変なことが起こったらリーヴィあたりを頼れと。



 雪の上の足跡は、小さく、けれども多く、一筋に続いていった。この足跡は、あと1時間程度で積もって隠れてしまいそうであった。

文字化けは一応、なんかの解読サイトで「SJISでUTF‐8」でやれば少し解読できると思います。


ちょっと小話


 リ=スズ姐さんは顔立ちは日本人よりだが、きりっとした感じのある顔だ。女子高だと下駄箱にチョコ満杯になるタイプ。それに面倒見がよく、気前がいい。上司であれば理想なタイプ。

 親はシューラに移住してきた移民族。それなりの貴族家系である。だが、兄が二人いるので家は任せて、自分は自分のしたいようにやっている姉御なのである。

 そして、料理はプロもエプロンを投げ出し逃げる位の腕前である。

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