三者三様
テスト期間オワッタぜ!
オワッタぜ…
~マイルデスティー家の場合~
「おいっ!マルセウス!これはどういう事だ!!」
ただでさえ広い部屋に、余す事無くその男のどなり声が部屋中に響いた。ここは貴族、マイルデスティー家の屋敷である。
この貴族は百年続く高貴な家系の長男であり、そのふくよかな腹を見れば一目瞭然、見た目通り性格は大変わがままであった。常識の範疇で。
「はっ、申し訳ございません。主よ」
その怒号を一身に受けた高身長の、その貴族とは正反対な見た目をしている男は申し訳なさそうに目を伏せている。
「バルのやつら、ミシのやつの所に街長が集ってるだと?」
「申し訳ございません。主よ、これは私の管理不届きによるもの、いかなるちょうばt・・・」
「そんな話をしているのではない!!そもそもお前に管理させとらんわ!ばかたれが!はぁはぁ」
「主よ、いかなる懲罰もこの身に」
「なぜ言い直した!!・・・はぁ、ワガハイもうつかれた」
「主よ、こんな時こそ私めに懲罰でストレスを発散しましょう!」
「お前のそれがストレスの元だよ!!?」
「申し訳ございません。主よ、いかなる懲罰」
「くどいっ!!」
この屋敷での日常である。マイルデスティー家の長男、クロメはわがままであるが、その執事、マルセウスは大変な変態であった。
かれこれ本題に入るまでに五十分もかかった。屋敷の召使いは皆これになれてしまっている。本題に入る前に体力のほとんどを使い果たしてしまうのがこの屋敷の日常だ。
「はい、確かに東のミシ殿のところに他の街長が集まっていくとのことです」
「はぁー、頭が痛い話だな。バルの奴ら・・・何か起こさんと良いが・・・」
「主よ・・・それは・・・フラグですよ?」
「やかましいわい!ったくも~、しかしあんなに仲の悪いやつらが急に集まるとはな・・・」
「これは何か必ず起きますかね?」
「起こるだろうよ、こちとらカカオの需要が見直されて、本腰をやっといれられるところなのに」
「はい、特に貴族の娘さんたちからの需要が跳ね上がってますね。まさか媚薬としての効果がありますとは」
「あんなに美味しいのにそれだけじゃない…ではなく、こんな大事な時期に・・・はぁ、ミシの事だ、何か厄介なお節介を焼いてるに違いないな」
マイルデスティー家は商業で勝ち上がった貴族である。もし、バル、奈落街が何かを起こせば警備に人を割く事をしなくてはいけなくなり、商業に滞りができてしまう。それだけは避けたいというのが商業貴族の悩みである。ただでさえ、最近の血筋重視の貴族共に蹴り落して、マイルデスティー家に成り代わろうと企てられているのだ。少し躓けばすぐに足をすくわれるのが長く続く実績重視の商業貴族の常である。
そんなクロメにの不安はよそに、マルセウスは一つの疑問を抱いた。
「・・・主とミシ殿はお知り合いなのですか?」
マルセウスはいかにもな主の言葉に疑問を抱き、素直に質問をしてしまった。それは主従関係の外からなる、親愛の情からの愚行であった。貴族にとって目の上のたんこぶの奈落街の長、本来は繋がりがあってはいけないし、それを疑う事すら失礼に値するものだ。だが、この二人は主従関係では収まりきる程ではない。クロメもマルセウスを絶対に信頼している。
だが、クロメはこれから話す事を信用してもらえない話だと信じている。実際自分がそうだった。
だからクロメは話をすることを決意した。あの時の思い出を。
「・・・聞きたいか?」
「可能であるならば。ですが、無理にというわけでは!」
「いや、なぁ、笑ながら聞いてくれ、わが友マルセウス。もしだ、もしもの話だが。この世界の他に、別の世界、おとぎ話の様に異世界があったらの話だがな―――」
~レヴェルリ家の場合~
日が照っているにもかかわらず、どこか薄暗い雰囲気を漂わす屋敷がある。レヴェルリ家である。屋敷自体は広く、清潔感であふれているはずだが、どこかこじんまりと。
その暗い雰囲気の中心が、この屋敷の主の部屋である。カーテンも閉め切り、部屋の中には二人しか人の気配がしない。鉛の様に重い空気を一人が切り裂いた。
「ゴミ溜めの連中が騒がしいそうではないか…」
そう、レヴェルリ家当主であるリゥーダは怒りを隠せずにいた。自分の大切な国が下賤な輩に踏み荒らされている、それが何より許せずにいた。
レヴェルリ家はこの商業国家で数少ない、武力の功績により貴族になった家である。この国、シューラの武力の八割はレヴェルリ家がまかなっているといっていい程の戦力を保有している。
しかし、この男、金儲けの才は微塵もなく、国から金をまわしてもらう事で存続してきた特殊な貴族でもあったりする。それが続いてきた事でレヴェルリ家は順調に腐っていった。
リューダの言葉を、隣にいた男は淡々と聞いていた。
「どうなさいますか」
「とりあえず、あいつらは俺の国には不要だ。殺しても構わん」
暗い部屋の中、響いた言葉はそれだけであった。いつもと変わらぬこの部屋に、人の気配が一人分、忽然と消えていること以外はいつも通りである。
~ノンノの場合~
この貴族を騒がしている騒動の中心の人物、いや、正確には悪魔は今―――窒息しそうになっていた。
「ノンノさぁぁん!今日も可愛いですよぉぉぉぉ!!!」
南の街長、ナーミルは順調に変態の格を上げていた。ナーミルに抱き寄せられて、胸に顔をうずめているノンノは最初、そのふくよかな胸に包まれることに悪い気はしなかったが、そのたわわな胸に包まれて呼吸ができないとは思っていもいなかった。
「ノンノを離さんかぁぁ!!」
「ノンノを返して!アバズレ!」
東の街長、ノンノの保護者でもあるミシと、ノンノに拾われた元奴隷の少女は必死にノンノの足を引っ張り、ナーミルの殺人ボディ (物理)から引きずり出そうとしていた。
この馴染みの四人の外から頭を押さえて見ているのは、西の街長、ウェルソン・モンローという青年である。
西の奈落街は武力が支配している場所であり、ウェルソンも血の気が多い。が、ナーミルとミシがいつもと違う表情をしている上に、謎の少女にぞっこんな姿に頭が痛くなったのだ。
「・・・がぁぁぁぁああああああ!!!!うるせぇぇぇよ!!ジジイとガキはどいてろ!!」
すぽんっ、小気味いい軽やかな音を出してノンノは救出された。ウェルソンが自慢の腕力で引っこ抜いたのである。引き抜かれたノンノは、ウェルソンの左手に足を掴まれちゅうぶらりんであり、ノンノは必死にスカートを押さえつけていました。
「クソジジイっ!とうとう耄碌しちまったか!クソアマもだ!!なにガキに鼻の下伸ばしてやがんだ!!」
「黙れ小童。殺すぞ」
「おだまり、下衆男。殺しますわよ」
「やんのか!!テメェ―ら!!」
わいのわいの罵り合いの始まりです。当分収まりそうにもないので、ウェルソンはちゅうぶらりんのノンノをお姫様抱っこし、ドカっと椅子に座った。
そう、この男、見た目や口の悪さから意外なほどに―――
「いいか!!テメェ―らな、特にナーミル、このガキな、危なかったんだぞ!窒息寸前だぞ!!ジジイも早く引っ張り出せよ!ちんたらやってるとますます危ねーぞ!!」
お人好しで優しかったりします。
人物紹介
クロメ・マイルディー
男、人間、貴族、46歳
マイルディー家という名門の商業でなりたった貴族。物品の流通や交易、さらには儲けで交通を整えてたりするいなくては困る存在。
貴族のくせに庶民びいきなところや、もとは百姓の家系であることから、馬鹿な貴族には嫌われている。
執事のマルセウスの事は、赤ちゃんの時から知っており、もはや孫に近い存在だと思っている。
体型はぷよぷよのお腹。パッと見、人悪そう。よくみると、人よさそう。
マルセウス
男、人間、24歳、執事、変態
マイルディー家で奉仕しているメイドと執事の間にできた子。イケメン。
マイルディー家独自の英才教育を施されており、物腰柔らか好印象のイケメン。
家事から料理、護身術などなんでもござれ。イケメン。
ただし、ドが付く変態マゾヒスト。ど う し て こ う な っ た
リューダ・レヴェルリ
男、人間、32歳、貴族
隠れ筋肉。
レヴェルリ家という、この国を護ってきた家系。マイルディー家と同じくらい古くから存在するが、この商業国家であるシューラで唯一商才がない貴族である。その上、プライドが高く、国から金を贈呈される形でないと受け取らない。
武家らしく、自身も鍛錬をおこたらない。強い。
体型は、服で隠れているが筋肉質で、高身長。顔は少し薄いが、どこか陰のあるこわもて。
ウェルソン・モンロー
いいやつ




