「龍の名を冠する少年」06
*****
朝のホームルームが終了。いつもの如く聞き流していたのだが、担任は教室を出ようとした時、最後に一言付け加えた。何故かそこだけは妙にはっきりと飛んで来る。
「おっと、忘れてたな。最近、というかここ数週間?山の近くだとかで爆発があったのは知ってるな? 知ってる事を前提に話すけど、危険だから近付くなと警察からも連絡があった。全く、世の中物騒になったもんだな」
陽はその言葉を耳にするとほんの少しだけ体を震わせる。その物騒な事を起こした本人がここに居るのだから。当然見付かるはずも無いし、見付かったとしてもどうにか出来てしまう。それが陽の居る世界である。
(……俺のやったやつだよなあ)
「龍神ー? どしたの、ぼーっとしてさ。いやいつも通り眠そうなんだけどね」
仲の良いクラスメイトが陽の異変に気付き――異変とまでは言えないが微妙な違いを察知出来たらしい――、声を投げた。
「いや、何で爆発したのかなーとか思ってな(俺がやったんだろうけど、話題には乗っとかないと……)」
「テロリスト!」
「山爆破するテロリストがどこにいるんだ? 理由が無いじゃん」
この適当な会話が他のクラスメイトにも聞こえたらしく、クラスの中は小さな原因当て大会の様相になっていた。当たるはずもない回答が飛び交っている中で答えを知るのは陽ただ一人。
しかし意外にも『要因』というのは考えられるものがあるらしい。いくつか挙げてみると、一番まともなのが、ガスに引火した、不発弾の爆発。これ以外を並べてみるとしよう。
一つ。先程もあったように、テロリスト説。この物騒な世情では有り得なくも無いが話ではあるのだが、狙う理由が分からない。地形でも変えるつもりなのだろうか。
一つ。突飛であるが宇宙人の飛来。もしくは、隕石説。前者はまず有り得ないが――さすがの陽でもそう思ってしまうらしい――、後者についてはいかがなモノか。隕石が落ちたなら、かなり大きなニュースになっているはずであり、これも却下された。
最後の一つは、魔法使い達による戦争説。実質、これが正解に限りなく近い。陽を除くその他のクラスメイトはこれが一番有り得ない、漫画の読みすぎだ、などと発言者を叩いている。割と仲の良いクラスなのだ。
結局意見は平行線、解決など出来るはずは無く、一時間目の開始を告げるチャイムが鳴った。微妙なざわつきは未だ残っているが、これもすぐに収まるだろう。
「さて一時間目は、っと英語か……寝よ」
そう言って机に突っ伏す陽。昨晩取れなかった分の睡眠をここである程度取り戻さねばなるまい。教師の優しさに付け込んで。




