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~龍と刀~  作者: 吹雪龍
第2章
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「渦巻く陰謀と青き殺戮者」21

 いつもよりも長い時間の鍛錬を終えた陽。汗を流し、適当に軽食をつまみ、テレビを流し見る。しかし、それ以外には結局やる事が見つからず――勉強をするなどという愚かな選択肢は毛頭浮かぶはずも無く――、ただただ暇を持て余していた。

そういう時はこれしかない。最終究極手段。満を持して使う外無い――!


「寝よ……」


 そう、その手は惰眠を貪る事である。最近睡眠時間が少なくなりがちだった故、この際だからという事で勘弁してもらおうではないか。誰に赦しを乞う必要も無く、眠りたい時に眠る。それが可能なのだ。

まるで天下でも取ったかのような心地ではないだろうか。


「ふあぁ……大体月華が家に来るのが五時過ぎだろ? ……四時間も寝れりゃ充分か」


 番組終了まで残り三十分程になれば犯人が分かる仕組みになっている推理物のドラマ。

昼飯を食べながら見ていたので展開が分からないが、犯人はこの男だろ、と一言付け加えてから乱暴にテレビのスイッチを押し込んだ。

 近くにあった座布団を折って枕代わりにする。床は畳なので、寝心地は最高だ。


「やっぱ畳だよな……」


 それから眠りに入るのに時間はほとんど要らなかった。

いつもはうるさい蝉の声だが、今だけは心地よく。通る風すらも眠気を促すようで。



*****



 それから陽が目を覚ましたのは、午後六時を少し過ぎた辺り。


「んん……飯の、匂い? 今はっと……六時……? なんでだ……?」


 立ち上がり大きく背伸び。未だ眠たそうな目を擦りながら匂いのする方へと歩いていく。途中色々ぶつかったが、気にしない。少し痛かったが。

いつものように居間へ向かうと、テーブルの上にラップされた料理が三品並べられている。

その横にはノートの切れ端と思われる一枚の紙切れが。

文面はこうだ。


【今日から早く帰って来いってお父さんに言われてるから帰るね 起きたら食べてください お皿はちゃんと洗う事! 月華】


「あー皿置きっぱだったか……すまんな月華。それはそれとして、好都合だな。夜中に抜け出しても見付かる心配ないし」


 近頃周辺が物騒だからという理由もあるが、月華の父が早く帰って来いと言うのは、陽が狙われているという事実を知っているからだ。自分の娘を巻き込みたくないという理由が大部分だろう。彼の性格上、それが一番のはず。

当然陽としても月華は巻き込みたくない訳だが。


「……飯だ、飯。いただきます」


 寝起きの頭で考える話ではない、と頭を振って椅子へ腰掛ける。まだ六時過ぎだが、温かい内に食べておこうと思った。


「月華にも悪いしな……」



*****



 ――午前二時。草木も眠るとは言うが市街地は眠っていない。下手をすると稼ぎ時だったりする。

そんな誰も居ない深夜の学校、その校門前には二つの人影。


「うぅ……ねむいー」


 一人は大きなあくび。口元を隠すもその手からも漏れているではないか。こちらが陽。


「寝てくれば良かったんじゃない? 別に一人で出来る作業だし~」


 もう一人はヘラヘラと笑っている。まったく眠気を感じさせないどころかむしろ元気そうなのが幸輔だ。


「じゃあ呼ぶなってんですよ。……まあいいです。仕事ですし」


「だってよ~怖いんだよ~夜の学校だよ? 何か出そうだしさ?」


 口ではこう言っているが、感情が篭っていない。やはりこの状況を面白がっているのか、口元には笑みが。確かにシチュエーション的にはわくわくするものがある。


「……大丈夫でしょ。この学校に霊的な力は感じませんし……それに、先輩見たら逃げるでしょ。幽霊さんも。俺は見えないですけどね」


「本元が誰をやったかは知らんけどさ~それでとばっちり受けるのも嫌なんだよな~……さあて、それじゃあ行きますか。龍神、作業内容は言った通りだから」


「式紙先輩だったんですか……」


 陽の目すらも欺いていたのは式紙幸輔だったらしい。驚きを隠せない陽の事など気にせず侵入禁止の柵を軽くひとっ飛びで越えて、中に侵入。


「ほらほら早く~」


「わかってますよ……先輩、ホントに忍者なんだな。動きが軽い……式紙なのに」


 陽も式紙幸輔に倣い柵を越える。深夜の作業が開始するのだ。

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