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~龍と刀~  作者: 吹雪龍
第2章
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「渦巻く陰謀と青き殺戮者」08

「でもさ~心配はいらないんじゃないかな? 協会から聞いたと思うけど周辺に居る魔術師や剣士とか、力ある人達には警戒令出てるし~。それと、今さっき協会の長からの新しい命令が出たんだけど聞いたかな~?」


「?」


 初耳の単語に首を傾げる。特にそのような話は聞いていなかったが。そもそも携帯を常にチェックする程マメな人間でも無かったりするのだ。


「まあ龍神にはあんまり関係ないけどさ~、全力を以て援護しろだとさ。言われたらやらなきゃね~。あ、あと月華ちゃんのお父さんが呼ばれてたな~」


「……月華の? 一番呼び出し喰らってるような気がするな……で、先輩はなんでそんな事まで知ってんですか……また内部に忍び込んで? さすがにそんな訳ないか……ここに居る訳ですし」


 照れ隠しのように頭を掻きながら答える幸輔。どうやら図星だったらしい。


「あははは。今回は盗み聞きさ~。協会に用事があってね。公に出来るようなモンじゃないけど。話すと長くなるんだけど聞く? これはタダだよ?」


「聞きませんし、聞きたくありません。金取らない方が怪しいので」


「まあね~タダより安い物はって言うし? そもそも関係ないからね。龍神が使える情報な訳でもないし。うん、これはボクの本体側の心の中に仕舞っておこう~」


「え、本体……あれもしかして先輩……“ここに居ない”んです……? 式紙?」


「おっ気付いてなかった? こりゃまた腕が上がっちゃったかな~? そう、本体は協会近辺で仕事中さ」


 陽の口にした式紙。見た目はただの紙札のような形状をしているが、これに術式を組み込む事で様々な効力を発揮する裏社会では所持必須の魔術道具だ。

白銀を喚ぶ為にも使用しており、その際の術式は召還。勿論どこでも喚び出せる訳ではなく、移動出来る距離には限界がある。精々この街の中、あるいは近郊程度だ。


「よくもまあこの距離でほぼ自立型なんて出来ますね……」


「コツとかあるんじゃない? 良く知らないけどね~」


「魔力消費とかどうしてんだろ……それならある程度は術式に入れておけばいいのか。魔術ってすごいなあ」


「なにを他人事のように……」


 そして恐らくこの式紙幸輔に組み込まれているのは身代わり、もしくは分身などといった類の物であると推測出来る。しかも自立思考型。どこまで出来るのか分からないが、どちらにしても高度な技量と知識が必要とされる術式で、幸輔本人の実力を認めざるを得ないだろう。


「うーん俺は剣術だけなんで。あとは付録みたいなもんですよ」


「袋とじ? 難しいよねあれね」


「その知識式紙に要ります? って聞いておいてください……」


「りょうか~い。それじゃそろそろバイト戻るね? 情報も全部渡したし……うん大丈夫、だと思った」


 立ち上がって伸びをする式紙。どこまで人間らしいのだろうか。それから、と思い出したように式紙幸輔は口を開いた。


「今日は……デート?」


「違います」


「ふ~ん」


「ニヤつかないでください。斬りますよ?」


「ああこわいこわい~。まっ楽しみなよ~」


 最後に残していったのは陽を疲れさせるような言葉。からかうように笑い、飛び跳ねるように人混みを避けながら離れていく彼の背中。もうほとんど陽の記憶にある幸輔のそれと同じであった。


「……なんか疲れたわ。月華まだかな……」

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