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~龍と刀~  作者: 吹雪龍
第2章
36/68

「渦巻く陰謀と青き殺戮者」06

*****



 ここは、日本のとある町。古き良き時代を感じさせるこの町には、大きな神社が建てられている。神社、と一括りにしてしまうには些か膨大な規模だ。

表の顔こそごく普通の神社で恋愛成就なり学業成就なりの様々な神を祀ってある。

果たして、その実態は――何を隠そう『東洋魔剣術協会総本部』という巨大な魔術組織だ。世界を股にかけ魔術に精通する者の登竜門であり、到達点。

 剣士や魔術師を多く輩出する『流派』の頭首や門下生が日々この地を訪れ、己の力を認めて貰い、知識と技術を学ぶ。


「お勤めご苦労じゃった。今の剣凰の頭首は健在だったか?」


 腹の辺りまではある長い白髭をしきりに撫で回しながら、緑色を主とした和服を着込んだ老人が話し掛ける。


「これは長様……頭首様にはしっかりと私共の持つ情報を伝えて参りました」


「ふむ。続きを」


 答えたのは、所謂巫女装束を纏った若い女性。声からして、陽に念波を飛ばした小鳥の女性だ。深々と頭を下げ、恭しく老人の質問に答える。


「そして白銀様からは自身が狙われている可能性はほぼ無いだろう、との事でした。それから達彦様の安否についてはとてもお喜びのご様子で何よりです」


「ハッハッハ、それは良かったのぉ。頭首と言えども、まだ少年。信頼出来る者が生きていると分かれば喜びたくもなるか……しかし」


 変わらず顎髭を撫でながら、思案する素振りを見せる長様と呼ばれたこの老人こそが協会の総括者である。この協会の決定権、魔術の研究、術者の育成。それら全てをほぼ一人で行っている魔術師界隈で知らない人間は絶対に居ないと言い切れる偉大な男。

身内からは、“大元老ダイゲンロウ”などと呼ばれ、讃えられている。


「些か若者には荷が重すぎるだろう。特に彼の場合は……儂等がこれまで以上にしっかりせんとな……疲れているとは思うが、会議の結果を通達してくれぬか? 『剣凰流』を全力を以て援護せよ、と。それと、金鳳の頭首をここに呼んでくれ」


「『金鳳流』ですか? (あそこの頭首様は少々気が短いので苦手なんですが……でも、長様からの仕事ですし)……承知致しました、直ちに向かいます」


 嫌な事ではあるが、こればかりは断れない。心の中では絶賛溜め息中だ。それを悟られない為なのか一礼するとそそくさと撤退。


「うぅむ……彼女、金鳳の頭首が苦手みたいじゃな……しかし念波を遠くまで飛ばせるのは彼女しかおらぬしの……代わりが居れば良いのじゃが。すまんの」


 歩いている女性の後ろ姿に謝罪の言葉を述べる老人。

そんな彼の頭の中には次にやるべき事が図式化されていく。蓮乃市に、ある程度の剣士・魔術師を集めて援護を頼み、その間に新米達を魔物とやり合える程に育てる事。


「まったく……達彦は何をやっているのかの? こんな時にこそあれの力が必要だと言うのに」


 空を見上げて思うは一人の男。彼の所在は何処かや。顎髭を撫で、更に一言。


「年を食ったの、儂も……頭がうまく働かぬわ。そろそろ年貢の納め時か? 若いのに任せろという事か……?」


 軽く溜め息を吐き、奥の部屋へ向かった。次の仕事は――



*****

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