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~龍と刀~  作者: 吹雪龍
第2章
33/68

「渦巻く陰謀と青き殺戮者」03

*****



 其は闇が悉くを支配した世界。大地も黒く、空に座す太陽らしき物すらも黒。ただ青白い光輪が空間を照らしている。

その光が差すのは中心、見えるは二つの影だ。


「炎燈は、ああ……失敗したのね……戦闘狂いに行かせたのが間違いだったかしら……」


 その内の一つは女らしい。か細い声でどこか悲しそうに、はたまた諦めにも似たような溜め息を吐く。呼んだ名は赤い魔術師の猿。もうこの世にはいない存在であった。


「その上、我々の存在まで……今まで以上に慎重に動かなければなりません……次手は誰を向かわせますか?」


 もう一つは男。低めのトーンで仲間と思われる女性に問う。落ち着いてはいるが暗くはなく、強さを感じさせる声。

 すると、その声に応じてか周りの闇が動き出した。闇と言うよりかは、闇の中の“何か”が蠢いている、という方が正しいか。


「あなたが決めて。……私は、体調が優れないわ。これが終わったら、また眠りに」


「成ったばかりで体が慣れていないのでしょう。私も以前はそうでしたから……では。――今回の目的はあくまでも龍神 陽の捕縛が優先。適すると思う者は、進み出よ」


 声の主は、闇の中のに問いかける。ざわざわと呪詛のような叫びが飛び交う中一筋の冷気が場を駆け抜けた。


「――僕が行きましょう、騎士長様。僕なら、どちらの状況でも対処が可能ですし、情報も多く送る事が出来ます。何せ人としての継続活動時間は一番ですから」


 中の一つが、立候補する。その透き通った声は、よく響いた。どうやら周りに止めるモノは居ないらしい。ならば、と。


「……他には居ないようですね。では、付いてきて下さい。あちらへ渡る門を開きます」


「最後に私からももう一度言うわよ? 龍神 陽の捕縛を最優先にして。抹殺は二の次、どころか基本的にはやらないで欲しいの」


 闇の中の一人は軽く鼻で笑い、こう言った。


「わかっていますよ。それでは皆様行って参ります……良いご報告をお待ちいただければ幸いです」


 一瞬闇が途切れて姿を現し深々とお辞儀したのは、長身の少年だ。するとその少年と、騎士長などと呼ばれていた男の姿がその場から掻き消える。闇に呑まれたようにも見えた。


「貴殿は、何故進み出たのです?」


 ほんの数秒、彼らの眼前には門が。移動の魔術でも使用したのだろう。騎士長は隣の少年へと声を掛けた。何故この任務に志願する事にしたのか、と。


「それは、ですね……決まってるじゃないですかァ? 殺す為、壊す為! 久しく人間の悲鳴を聞いていないんでね、体が疼くんですよ……!」


 先程とは豹変した口調。まるで別人である。本性、なのかもしれないがそれは分からない。


「そうですか……私は、主の盟に従うまで。他の事にまで口を出すつもりはありませんが、主の邪魔をするようならば、即刻斬り捨てます……開門」


 門が鉄の擦れる音を鳴らしながら、ゆっくりと開いて行く。眩い光が門の向こうから入り込む。蓮乃市上空、標的達が暮らす街。


「アハハハハッ!! 人だ、人! 待ってなよォ、すぐには殺さないからさ!」


 光に照らされた少年。全身を青いローブで隠している。歩く人々に、まるで玩具を与えられた子供のような目を向け、はしゃぐ。


「……“凍血の殺戮者トウケツノサツリクシャ”雹よ。行きなさい。我等が主のために」


 騎士長の姿は、黒い全身鎧に黒いマント、黒い長髪、黒いサーベルを腰に差している。全身漆黒の騎士。


「ここは、形式に乗っ取るべきですかね……“凍血の殺戮者”、これより殺戮を開始します。騎士長様。……これでいいか! 殺るぜ殺るぜ殺るぜぇ! ヒャーハッハッハァ!!」


 狂喜の笑い声を盛大に上げる雹。騎士長はマントを翻し、闇の中へ帰っていく。

 新たな敵が陽を狙う。



*****

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