「龍の名を冠する少年」14
二人に続いて歩く。時間は既に草木も眠る丑三つ時を越えた辺りだろうか。前を歩く生ける屍のようなサラリーマンを警戒して確認していなかったが、体感的にはそのような時間なのだとか。しかし気を張っているせいか先程の眠気はどこへやら。いつも以上に目が冴えている。
「だいぶ登ったけど……この先って何かあったっけな……」
道なき道を行ってみたと思えば登山道に戻ってみたりと蛇行しながら進む彼ら。頂上を目指しているのか、それとも別のどこかなのか。ただ頂上に行きたいだけなら別にどうもしないのだが、そうであるはずがない。
「……あれは?」
木々の先だ。光の漏れ方が変わったのでどうやら開けた場所のようである。二人を追い越し、そして見えてきたものは。
「なんだこれ……」
そこに広がっていたのは目を疑うような光景だ。剥き出しの地面に転がっているのは岩――ではなかった。これはどう見ても――
「誰がこんな事……!」
――人間である。老若男女入り混じった謎の集団。共通点はありそうにない。制服だったり、スーツだったり私服だったり。異常事態を感じ取り急いで近くに倒れていた女性へと駆け寄る。目を閉じ、眠っているのか。
「息は……あるけど弱いな」
更に数人を同様に確認すると全員が同じような症状で倒れている。これは一体どういう事なのか。人の為せる業ではないだろう。だとするのなら答えは一つ。単純明快だ。
「魔術、しかないか。誰か居るんだろ! 出て来いよ!」
この世界に存在する特殊な力。魔術を駆使する何者か。自然発生する事も稀にあるが、今回のはそれではない。不思議と作為を感じさせるのだ。あくまでも直感的な話だが、陽の勘は良く当たる。故に、このように叫ぶ。それに釣られるようにして先程のサラリーマン二人が倒れるではないか。勿論狙った訳ではない。
――風切り音。突然だ。男性二人の体が傾き始めた辺りに。
それに続いて視界の端、強い閃光。首を動かすよりも速く腕が動く。向けた先に何があるか。
遅れて視認、把握。飛び交っているのは、炎。球状の炎だ。陽目掛けて一直線に、牙を剥いている。
「水剋火……間に合うか……!」
魔術に用いられるのは五行思想――火を打ち消すのは水、水を止めるには土、などの属性関係であり木・火・土・金・水の五属性が存在している――。
掌に意識を集中させ、迫り来る炎に対抗する為の魔術を構成。どうやら避けるという判断にはならなかったようだ。それもそのはず周りには倒れたままの人が見えているのだから。ここで、どうにかする。
「ギリギリっ!」
陽も負けじと球状の何か形成した。それは先程口にした火を剋す為の水。炎は既に目と鼻の先、熱風が肌を焼く。しかしこちらには出来上がった対抗策がある。それを――
「ッ――!」
――解き放つ。




