「始まりの記憶」
この世には、平凡な生活を約束された者と、したくても出来ない者の二者が存在する。それは必然でもあり、不条理でもある。
これが神の定めた理だと言うのなら、多少なりと渋々納得してやれない事もない。
平凡な生活を送れる者達には無知無能でありながら平和を、送れない者達は、特殊な知識と力を得た。魔術や剣術等がそれに当たる。
強大な力を有する者達――魔の術を知る者達は、やがて自分達は神であると名乗り始める。今現在の神社仏閣で崇拝、祀られている神々ではなく、あくまでも見えない力的関係での神。知られざる格式上の神。しかしその当初、神が大量に存在していた。数え切れない程だ。力を有して、相手を屈服させれば良いのだから簡単な話であった。そこで彼等は、自分達と同等な存在が大量に居る事を、等しく不満に思い、解決すべく、まずこの世の先の住人である‘人間’ではない者達に力の一部を分け与える事を選択した。
大きく分けて、龍・鳥・獣、そして鬼。後に言われる種族や伝説と呼ばれる類の誕生だ。それらも最初は少なかったが、時が経つに連れ、その数は一族を形成出来るまでに大きくなる。力は脈々と受け継がれ、規模も拡散。
これが俗に言う、神族遺伝である。と、これが大々的に受け継がれ、伝えられている『世界の裏側』の概念だ。表と裏の線引きでもある。
しかし一族の中には、力に溺れ、神や一族に離反を起こす輩も居た。当然だ。今までは何の力も無かったのに、いきなり底の見えない力と考える能力を与えられたのだから。それらは独自に魔族と名乗る。意思を捨て、本能のままに暴虐の限りを尽くす――
「じゃあ、今の俺は……考えるべきでは無い、か……この子の、家族の為の正義なのだから……」
立ち尽くした男が、ひとりごちる。傷を受け、それでも尚歩みを止めない。止める訳にはいかないのだ。
背には、子供が居る。安らかな寝息を立て、眠っていた。
遠く、四方八方から聞こえてくる雄叫び。自分を探す、怒りに満ちた叫び。
行かねばならない。
そうすると決めた。
しなければ変えられない。
何も。
だから。
――それから人が魔術というものを知るのも速かった。神の気まぐれとでも言うのか、偶々、偶然その力に触れ、学び、習得。これらもまた裏側でひっそりと、永い時を生き続ける。
世界の裏側、ただの人が踏み入れるには容易ではない場所にある、しかしすぐそこにある、世界全体を巻き込む真の理。
「俺は、それすらも――!」
呼ぶのなら、応えよう。
この力の全てを以って。
序章「始まりの記憶」 終




