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うそつきりっちゃんの備忘録  作者: うそつきりっちゃん
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「夜のみだらな鳥」 ホセ・ドノソ

 ホセ・ドノソ(著)、鼓直(訳)「夜のみだらな鳥」単行本(454ページ)(1976/1/1)「世界の文学〈31〉」集英社


 修道院に隠れ住まう七人の魔女。その数は後に膨れ上がる。魔女たちの長的存在であった老婆の死で物語は幕を開ける。彼女は自分では投機しないが天才的相場師であり、かつ大金持ちであることが物語中盤で明かされる。象徴的だ。物語の語り手は唖で聾の老人ムディート。彼もまた老婆の一人。かつては別の顔があり、また終わることのない精神の混濁を抱えている。土地の名士が従妹と祝言を挙げ、やっとのことで生まれた赤んボーイは冥府のような畸形。一度はボーイを自らの手で殺そうとした名士だが心を翻し、ボーイに見合った(美醜的)逆転世界の構築を目論む。その初代管理者が貧民ウンベルトであったところのムディートだ。

 第一章で――後に集められた畸形たちを除く――一通りの登場人物が紹介される。以下、数多の混乱とともに、

 第二章、老婆が語る昔話/黄色い牝犬と化け物の逸話について、

 第三章、修道院について、

 第四章、修道院に住まう孤児の妊娠及び父親を持たないその奇跡の赤ん坊について、

 第六章、仮面を被った孤児の赤ん坊の父親について、

 第七章、その仮面の破壊について、

 第八章、老婆の赤ちゃん人形と孤児に見破られたムディートの正体について、

 第九章、ウンベルトと名士の出会い及び畸形の村/屋敷について、

 第十章、名士の過去について、

 第十一章、名士の婚姻について、

 第十二章、黄色い牝犬の逸話及び修道院に祭られる名士の妻と同じ名の福者/魔女について、

 第十三章、名士の妻の乳母/召使について、

 第十四章、迷宮的な屋敷を中心とした畸形の村について、

 第十五章、ボーイ及び自身も畸形の天才的外科医について、

 第十六章、ウンベルトが一行も書けない名士及び畸形の村に纏わる伝記について、

 第十七章、ウンベルトの過去について、

 第十八章、天才外科医が奪ったウンベルトの臓器八〇パーセントについて、

 第十九章、こちらも迷宮的な修道院に人生を奪われた一人のシスターについて、

 第二十章、修道院内保管物の競売と赤ん坊となったムディートについて、

 第二十一章、失敗した列福の旅を終えた名士の妻の修道院への引越しについて、

 第二十二章、名士の妻の修道院での暮らし振り及びおもちゃのドックレース/賭けについて、

 第二十三章、名士の妻の夫への復讐手段について、

 第二十四章、名士の妻の声色遊びについて、

 第二十六章、名士の妻に仕組まれた精神病院送りについて、

 第二十七章、畸形の村/屋敷崩壊の兆し及び真実を知ったボーイについて、

 第二十八章、名士とボーイの対面及び名士の死について、

 第二十九章、孤児の追放及びその奇跡の赤ん坊の老婆たちによる略奪について、

 第三十章、修道院の解体及び老婆たちの移動について、語られる。

 今更のようだが過去の種々作品を搾取して又は化学反応させて構成された本作品は以後の作品の格好たる搾取元ともなっている。よって現時点での熟読が――例えばポーやウェルズの小説群のように――明らかな物足りなさ若しくは詰めの甘さを感じさせてしまうのは致し方ない。おそらくそれも名著の証であるのだろう。

 筆者はマジックリアリズムと相性が悪く、それで常に興味を惹かれつつもこれまで本作から逃げてきた。その筆者の心を動かしたのが一編の――同じ作者の別の小説の――書評(牧さん、お元気?)であったことは偶然か、あるいは必然なのだろうか。

 因みに「夜のみだらな鳥」という言葉は作家のヘンリー・ジェイムス(巽先生、お元気?)が自分の息子に宛てた書簡から。


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