「宙の家」大島真寿美
大島真寿美「宙の家」(角川文庫)(223ページ)(2006/12/22)
「宙の家」第十五回すばる文学賞候補作。
久しぶりに積もった雪のせいで六時間目の英語の授業がカットになり地上十一階の宙の家に少し早めに帰ってきた語り手の女子高生が遭遇したのは、祖父の死後、父母長女長男|(弟)の家族と一緒に暮らすようになった祖母との音信不通体験だった。
「空気」『すばる』1992年9月号
梅雨の終わり頃に地上に降りられなくなったのが発端となり、まるで腑抜けのように以前にも増して寝てばかりいる語り手の女子高生。そんな彼女に救いの手を差し伸べたのは、彼女と似た状況にいる社会人の兄を持つ弟の友人だった。
作家には二度と書けないお話があると思う。時期であったり、言葉は似通うがタイミングであったり、年齢であったり、構成であったり、省略であったり、もちろんテーマであったり……。似たようなお話を書くことは出来る。ただひたすら、それを繰り返す作家もいる。が、そのときのそのお話はあのときのあのお話に昇華されて再現不能となる。たった一度だけ、その作家に書けたお話となるのだ。この作者にとって実際にそんな感慨はないかもしれない。けれども多くの読者がそれを感じただろうと思えるのだ。まさしくそれは一回性だから生であってかつ死でもあり、両者の共有時空へと転生する。多くの大島作品と比べて、この作品が最高でも、またもや言葉は似通うが一番でもないだろう。けれどもその耀きは読者を無垢に魅了して止まないのだ




