プロローグ
気分屋なので更新頻度はまちまちです。すみません。
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市街から車で約二時間。人気のない寂れた路に沿って進み、小さなブナ樹林を抜けると、ようやく開けた土地まで辿り着いた。
久々の陽光に瞬きし、窓から辺りを見渡す。大きな湖畔に、その周りには一面の大平原。周囲をなだらかな山々が取り囲む光景は、さながら閉じた楽園のようだった。
「あ、見えてきましたよ」
運転席に座る側近のメイドさんはそう言うと、フロントガラスの先を指さす。それに倣って、後部座席から前方を覗き込んだ。
「あれが?」
「はい、あれが『聖ワ』ですね」
「へぇ、……すごいね」
湖のほとりに佇む、古めかしく巨大な建物。お城のような、聖堂のような、まるでお伽の国の夢遺産。
これから通うことになる、新しい学び舎だ。
聖ワルプルガ女子魔術学院。
聖ワの名前で広くから親しまれている名門お嬢様魔女養成学校。女子専用の魔術学校であるため、魔女学校、魔嬢学校とも呼ばれる。小中高の一貫校で、一般教養や魔術の他にも、礼儀作法がカリキュラムに含まれているようだが、その実情はあまり詳しくない。
魔術・学力共に高いレベルの伝統と実績を誇っており、少なく見積もっても以前通っていた共学の学校と同等程度には名門校だと言えるだろう。
説明するとなると、こんなところだろうか。
この学園に転校してきた理由は二つ。
一つは自分が男嫌いだから。男が多い前の学校では、どうにも居心地が悪くて適わなかった。だから女子校で男子のいない聖ワでなら、快適に過ごせる思ったのだ。
そして、もう一つは――。
――といったところで車は止まった。
「あれ、もう着いたの?」
「ええ、無事到着しましたよ」
どうやらいつの間にか敷地内に入っていたらしい。先程まで遠くにあった校舎は、レンガ造りの校門を隔てて、いよいよ目前に顕在していた。
「どうやらお迎えの方がいらっしゃる様ですね」
「ん、本当だ」
フロントガラスには二人の人影が映り込んでいる。……あまり待たせるのは忍びないか。
バックミラーを利用して、身なりが整っているかを最低限だけ確認することにする。
長い頭髪は真っ直ぐ綺麗に、ハネ無しツヤ有り、よしオッケー。顔の方も大丈夫、まつ毛はマスカラで整えてあるし、唇もグロスが塗ってあって艷やかだ。だけどあくまで少し『色』を添えるだけ、素材を活かしてのナチュラルメイク。服装もバッチリ、指定の制服は黒が基調で襟や裾は白いもの。華美でなく、清楚で大人しい感じの色合いだ。はしたなくならないようにスカートは短すぎず、かといって今度はダサくならないように長すぎず。最後にタイリボンをおしゃれに結んで、完璧。
「それじゃあ行ってくるから、もう帰っても大丈夫だよ」
車を降りて、メイドさんに別れの挨拶。
「はい、行ってらっしゃいませ」
「うん、行ってきます。それじゃあバイバイ」
けれどメイドさんは心配性なようで。
「お気をつけ下さいね、何かありましたらいつでもご連絡下さい」
「うん、分かってる。大丈夫だよ」
「お体も大切になさって下さいね、寝るときはよく暖かくして寝るのですよ」
「だから大丈夫……なんだかお婆ちゃんみたいになってるよ?」
苦笑すると、どこかさみしげなメイドさんも微かに口元をつり上げて愛想よく返してくれた。
「はい……。お辛いようでしたら、いつでもお屋敷に帰ってきて下さいね。お待ちしていますから」
「うん、ありがどう。それじゃ今度こそ」
片手を挙げる。
「はい、それではこれで。――お元気で」
メイドさんはニッコリ微笑むと、車を走らせて行ってしまった。
裏設定や補足事項なんかがあれば後書きに書こうかなと思います。
本編とは関係ないのでセルフサービスでどうぞ。