ヴァルプルギス伝説
零超神一。
零より超えて、神に一足る存在。唯一つ、世界を変える因果律。
彼女こそ、始原の魔女たる聖女に相応しい。
聖人ワルプルガの双子の片割れにして、決して生まれることのなかった者であり、
人々の願いを受け、人ならざる魂として再誕を果たした者である。
人の願いの象徴たる彼女は、世の理から外れ、奇跡を起こすことができた。
それは後に魔法と呼ばれるようになるもの、願望を叶えるための、堕落を招く悪魔の法。
彼女はその力を使役し、多くの人々を救い続けた。多くの人々を愛し続けた。
――しかし彼女の愛が報われることは一度たりともなかった。
彼女を愛する者など誰一人として居なかったのだ。
何故ならそれは、彼女に肉体がなかったから、誰の目にも映ることがなかったから。
とうとう彼女は人々を救うことを辞めてしまった。
その代わりとして、彼女は自らの魔法の力を割り砕き、世界中の人々に与えた。
いつしかそれは魔術と呼ばれ、人類に繁栄と栄光をもたらした。
そして老いることもなく死ぬこともない彼女は、永劫の時の中で独り、人類を愛し続けた。
そう、彼女こそが零超神一ヴァルプルギス。
始原の魔女にして、唯一絶対なる本当の聖女である。
――形なき少女は今も一人、人知れず世界を漂っているのかもしれない。
彼女を救うことはできるのか。
もっとも出番の少ないメインヒロインです。