人外……いや、神外……
直矢と兄貴が激しい戦闘を無音で繰り広げていた。
人外としか言いようが無い……
あ、直矢は神でした、人じゃない。
……何回目だこれ?
俺たちが出てきたのを見たとたん戦いをやめる二人、あ、そうそう、澄也は少しはなれたところで伸びてる。(隣に親父が座ってる。)
「直矢さーん、今の具現化使ってます?」
「いや、使ってない。使ったら人間相手じゃ死んじまうだろ。」
「そうですねー」
「具現化って?」
「神の力だよ。イメージを全て現実にすることができるんだ。」
なるほど、だから美味いコーヒーが出せないとか言ってたのか。
「使ってないって、直矢元人間だっけ?」
「そうだ。」
「ってことは、人間の時の力ってこと?」
「そうだな。」
どんだけ人外……?
いや、神だけどさ。
「兄貴、大丈夫?」
「ん? 大丈夫じゃなかったけど、楓に心配されたから回復した!」
そこまで心配してないけどね。
だって、兄貴の人外っぷりは知ってるし。
てか、俺が心配すると回復するのか?
「なんで闘ってたの?」
「こいつらが盗み聞きしようとしてたから、防いでた。」
複数形ってことは澄也もやってたってことか。
「いやー、こんなに強いとは、なかなかやるな。」
「お前こそ。」
ガシッと握手をする二人、
なんだか知らんが、闘いで友情が生まれたっぽい。
そういう脳筋イベントは他所でやってくれ。
「なんで無音でやってたの?」
「音たてると迷惑そうだから。」
「音たてるとバレるから。」
全然理由が違うね。どうでもいいけど。
「なるほど、とりあえず下行こう。」
「こいつも参加したほうがいいのか?」
直矢が澄也のことを指差しながら言う
「そう……だね、持ってきてくれる?」
一瞬必要かどうか迷ったけど、真面目にやれば優秀そうだし、持ってってもらう。
「分かった。」
澄也を肩に乗せて直矢が歩いて行く。
本当に荷物みたいな運び方だな……
◇◆◇◆◇◆◇◆
「で、これから話すのは、俺が女になった詳しい経緯と、これからのことだ。」
主にお袋とか姉貴とかの表情が肩透かしを食らったような顔をしていたが問題ない。
「まず、俺が女になった経緯だけど、こいつらが押しかけてきて、変えられたんだ。」
「なるほどね。」
「まあ、それだけだから次に行くけど、これからどうするか、俺は叔父さんのやってる高校に行く予定だろ?」
「そうね。」
「まず、叔父さんに俺のことを報告して欲しいんだ。」
「いいわよ、ちょっと待っててね。」
お袋が家の電話をとって、電話をかける。
「あ、冬士兄さん? 陽子なんだけど、うちの息子の楓が兄さんの学校入学するって言ってたでしょ? そうそう。で、それなんだけど、何か女の子になっちゃってさー、娘になっちゃったのよー、なので、手続きお願いね、じゃ!」
「よし、これで大丈夫よ。」
……アバウトすぎねえか?
「冬士さん驚いてなかった?」
「いや? ただ、色々試してみたいって言ってたわ。」
まあ、あの人はいわゆる変人だからな……
なんかマッドなんだよ……
色々試すって、何されるんだろう……
場合によっちゃ姉貴のほうがマシかもな……
「……まあいいけどさ、で、冬士さんの学校にこいつらも入れて欲しいんだ。あ、そうだ、お前ら自己紹介しろよ、俺もよく知らねえし。」
「分かった、じゃあ俺からで。 えーと、僕は直矢と言って、カミサマやってます。楓……君を女に変えたのも僕です。すいません!」
言いながら直矢は土下座をする。
ど、土下座ぁ?!
「ちょ、そこまですることか!? 事情があったんだろ!? 頼んだら色々してくれるし、断る権利もくれた! それでそこまでするのかよ!?」
「……それとこれとは別だ。事情があろうと無かろうと、そっちがかなりの迷惑をこうむることには変わりねぇ、だから、謝る。」
「そんな歳でいい人の鑑ねー、全然いいわよ、許しちゃう。」
お袋、確かにそうだけどそんな軽く許されるとなんか……なんかさ!
「楽しいしねー、可愛い子は家にいくらいても全然いいしねー♪」
なんか、なんかさ……なんか……
「だから、土下座はやめてくれない?」
「分かりました、ありがとうございます。」
やっと直矢が土下座をやめた。
「あ、それと、他人行儀じゃなくていいわよ? あんまり堅苦しいの嫌いだし、普通に話して?」
「えーと……慣れないので、多少砕けた感じってだけでいいですか?」
「まあ、いいわ。それはそうと、断る権利をくれたってどういうこと?」
「え?……と、それは……」
「いい、俺が説明するよ、まあ、さっきも話したと思うんですけど、俺にも上司がいて、まあ、上司って言うか、一番偉い神って言うかなんですけど、まあ、それが性転換小説?を実際にやってみようとか言い出して、それを実行する役に選ばれたのが俺たちってわけです。」
「なるほどね~、直矢君も苦労してるのね~」
「たまのこんな事意外は他の人よりよっぽど楽だと思いますがね。まあ、選ばれて、候補として上がったのが、たまたま楓……君だったわけです。」
そこで悩まないでくれ!
「で、まあ最初だから、選ぶ権利くらいいいだろ?ってことで、選ぶ権利をやったんですけど、いいって言ったので、やめなかったってわけです。」
「なるほど……嫌じゃなかったの?」
「いや、だって、そのさ、嫌なら俺の首が飛ぶ覚悟で反対してやるとか言うから……」
そんな事いわれたら断れねえじゃんかよ!
「なるほどー……楓はそういうのに弱いのねー……」
「慌ててる楓も可愛いわー」
「姉貴は黙ってろ……」
「うーん♪ にらむ楓もいいわー!」
もう……放っとこ……
「まあ、自己紹介の続きしたら?」
「そうだな、じゃあ、エディ、次やれ。」
「ええ!? 僕ですか!?」
「だって、澄也死んでるじゃんよ。」
「そう……ですねー……えーと? あのー、僕はエディって言って、直矢さんの天使やってます。えーと……他に何を話せば?」
「好きな食べ物とか?」
そうなのか? 違くね?
「じゃあ、えっと……好きな食べ物は甘いものです!」
「……エディちゃんも可愛い。」
姉貴が狙っとる、防がねば……どうやって?
「え? いや、あの、そんなでもないです、ですよー、普通ですよー、お世辞なんてよしてくださいですよー」
何をどう間違えたのか言葉がおかしくなってる。慌てすぎだ。
「うん、こういうところがいいわね!」
……駄目だ、手に負えん。
「まあ、次は澄也だな。おーい、起きろー」
直矢が澄也をゆさゆさ揺すりながら言う。
「……エディ、パス」
「また僕ですかぁー? しょうがないですねー、澄也さーん、起きてくださーい!」
シャキーンという効果音がしそうな勢いで澄也が起きた。
なんなんだこいつ……
「復活しましたっ! 何?」
「自己紹介ですってよ。」
「あ、了解でーす! えー、僕は澄也っていって、エディちゃんの彼ブッ」
直矢の蹴り、炸裂!
「何を事実捏造してんだよ。」
「えー、コホン、まあ、エディちゃんの同僚ってとこですかね。好物は可愛い女の子でブッ!」
「まあ、要するに変人ですよ。あんま気にしないでいいです。」
グリグリ澄也を踏みつけながらにこやかに直矢が言う。
容赦ねえ……いや、あれでも手加減してるのか、人外って恐ろしい……
「ちょ、痛い、踏みつけるのはひどバッ!」
確かに変人だけど、ちょっと可哀想かも……
「直矢? いくら澄也が変態だからってそれくらいにしといたら……」
「大丈夫、これくらいじゃ死なん、と言いたいとこだが、まあ、放してやろう。」
「いや、俺変態じゃないって……ん?」
踏みつけられてる澄也の顔はもちろん床に押し付けられている訳で、俺の着てるワンピースは短くて椅子に座ってると下から見ると……その、丸見えな訳で、この二つの要素が組み合わさると……
「直矢、やっぱそいつ死刑で。」
「分かった、ちょっと外出ますねー。」
その日うちの近所で断末魔の叫びが聞こえたそうな。
澄也は、一人称が女の子の前では僕、男の前だと俺になるんですよ。
それと、こっからギア上げていきます! 目標は一日一回更新!
……一週間続いたら褒めてください。