兄貴は実際強い
「さてと、全員校内の施設の位置の把握はできたか? まあ細かい所は今は覚えられなくても最初に言った通り最低限の場所は覚えてくれ。よし、これで今日は解散だが今日は部活動紹介が体育館で行われている。各部のデモンストレーション後興味のある部活動の体験ができる。机の中に部活の一覧が書いた紙が入っている。興味のあるものは行ってくれ。体験期間は今日から二週間だ。時間はあるから焦らずじっくり決めるように。では解散。おつかれさんっと。」
そう締めて史田は教室を猫背で出て行った。
「部活動紹介だって楓ちゃん! すっごく面白そうだね! 一緒に行こう!」
と雛ちゃん。
「うーん、どうしようかな……私、あんまり部活とかやる気ないし、冷やかしみたいになるのも申し訳ないなって……」
元々は運動部に入ろうと思っていたが、ここ数日過ごしてこの体は運動向きじゃないことに気付いた。とてもじゃないが運動部は厳しそうな感じだ。かといってマネージャーって柄でもないし……文化部にはあまり興味は無いし……
「えぇー! そんなの大丈夫だよー! それに、見たら入りたくなるかもしれないし! ねっ?」
顔をコクッ、と傾けて言う雛ちゃん。
うーん、そんな可愛いしぐさでお願いされると断りにくい……
「うーん……直矢たちはどう? 何か興味ある部活ある?」
直矢たちに振る。
「うーん……俺は格闘技系の部活に興味があるな。えーと……あるのは柔道部とボクシング部、あとは剣道部くらいか。」
「僕はロボ研に興味があるな! 美少女メイドロボを作りたい! あとは写真部! 可愛い子の写真が集まってきそうだし!」
「どっちも動機が不純だな。」
はぁ、とため息をつきながら直矢は言う。
「いやいや、どちらも健全な男子として真っ当過ぎる程真っ当な動機だよ! エディちゃんは何か見たい部活はあるかい?」
「僕、この料理研究部っていうのが見たいです! どんなお料理食べさせてくれるんですかね!?」
食べさせてもらうの前提か……まあ試食くらいあるだろうけどさ。
「ほらほら、皆見たいのあるって言ってるよ! 見に行こうよー!」
「うわっとと、分かった、行くから待って! 転ぶ転ぶ!」
ねっねっ、と俺の手を引っ張りながら雛ちゃんが言う。
ホント元気だなぁこの子。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「えーゴホン、新入生の皆さんお集りどうもありがとうございます。司会を務めさせていただきます生徒会長の新条光花です。本日はよろしくお願いします。」
姉貴が幕の締まった壇の上に立ち礼をする。こんな仕事もするのか。
「では早速部活動の紹介を始めたいと思います。まず最初は運動部から。トップバッターは柔道部です!」
姉貴が手を振り上げて言うとパチパチパチとあちこちで拍手の音が鳴る。
柔道部って言うと確か……
と考えていると幕が開く。
幕の奥には柔道着を着て畳を持った大男と、同じく柔道着を着て礼をする男たちの姿が……その中には見慣れた姿も。
「どうもよろしくお願いします柔道部でーす!」
と兄貴の声が体育館中に響く。
そう、うちの兄貴は柔道部なのだ。ついでに熊さんも。畳を持った大男の正体は熊さんである。
「あれ、楓ちゃんのお兄ちゃんじゃん! 柔道部だったんだね!」
「そうなんだ。なんか、結構強いみたい。」
なんでも県大会優勝だとか準優勝だとか。
「そうかあいつ、柔道家だったのか。道理で……」
直矢はひとりでうんうんと頷いている。
直矢も武道色々やってるみたいだし、武道家同士何か通じ合うものでもあるのだろうか。
「さて今日は柔道部がどのくらいすごいか、というのを見せようと思います! 柔道部に入るとこんなことができるようになりますよっ、と!」
とマイクで喋ってすぐにバック宙をする兄貴。
あんなこと言ってるが兄貴は昔から猿みたいに身が軽い。あの言葉は嘘ではないのかもしれないけど兄貴は中学の頃からあれくらいはできていたと思う。
「えー! 楓ちゃんのお兄ちゃんすごーい! カッコいいね!」
と雛ちゃん。まあ確かに兄貴は運動はすごくできるんだけどそれ以外がなぁ……基本的にアホだし……
「その他にも……」
兄貴が言う後ろで熊さんが畳を床に下して何やら準備をし始める。
「こんな大男を投げたり! よいしょ!」
熊さんを背負い投げする兄貴。ビターン!と受け身の音が体育館に響く。
見ている人たちからもおぉー、と歓声が漏れる。
確かに形がすごくきれいでしかも相手は2メートル近くあるんじゃないかという横にも大きい超のつくような大男の熊さんだ。そりゃあ歓声も漏れるだろう。俺もこれは素直にすごいと思う。
「他にも、こうして組み伏せたり!」
と今度は熊さんを抑え込む兄貴。熊さんがもがいて動けないことをアピールする。
当然試合じゃないから演技もできるけど、本気でがっちり組み伏せてるようにも見える。事実熊さんがジタバタしても兄貴はビクともしない。
兄貴、顔もいいし本当に運動だけしてれば超の付く程イケメンなんだけどなぁ……
「あとは体の大きい子も大丈夫! 俺みたいな軽業とかはできないかもしれないけどほらこの通り!」
今度は起き上がり熊さんが兄貴の襟首と帯に手を当てて……
「筋肉が付くので俺くらいこんな風にヒョイっと持ち上げられるようになります! ちなみに俺の体重は75キロです!」
グイッと頭上に腕だけで持ち上げた!
熊さんもすごいなぁ……ていうか兄貴意外と体重あるんだな、初めて知った。
「まあこんな感じで柔道部に入ればカッコよくて強い男になれること請け合い! 最初は優しく教えるから運動が苦手でも安心! 太ってる子も背の小さい子も気にせず気軽に体験に来てください! 体育館の横の柔道場でやってます! マネージャーも大募集中! 柔道男子の手助けをしたい女の子、ぜひマネージャーになってください! マッチョが好きなら絶対楽しい! マッチョは別にという人でも多分楽しい! ありがとうございましたー!」
書けて良かった! とりあえず更新できました。よかったです。
そして、これからの更新についてなのですが、前に言った病気の関係で入院することになってしまいまして、恐らく退院までの間は更新できないと思います。申し訳ありません。
退院したら、これまで通り週一更新に戻すつもりなので、よろしくお願いします!




