一家に一人、スグえもん!
「何でしょーか?」
「楓を可愛くしたからお披露目よ!」
「おお! 本当だ!……うん、可愛いね! 最高!」
あまりじろじろ見るな……
「そうやってもじもじする所もいい!」
「そうよね! さっきは隠れてたから邪険に扱ったけれど、君とは気が合いそうだわ! さっき隠れていたのも楓愛あっての事なのね!」
「その通りですよ!」
何だよ楓愛って……
鳥肌立ったんだけど……
「早く済ましたいから兄貴呼ぼうよ。兄貴ー! 入って来てー!」
「やっとか! 今行くねー!」
ドアを壊すくらいの勢いで入ってくる兄貴、
お前マジでなんなんだよ……
「おお! さっきはよく見てなかったけど、可愛いな!」
嘘つけ、指の間からじっくり見てた癖して。
「よし、じゃあ着替える!」
「待って! まだ母さんと父さんがいるでしょ?」
「ええー……あの二人にも見せるの……?」
「もちろん!」
あー、これはあれだ、時間稼ぎだ、うん。
まあいいか……
もうどうでもよくなってきた……
「分かったよ、行くよ……」
何か疲れた……
行くのメンド……あ、そうだ!
「連れて来てよ! そのほうがいい! てか、この服で階段下りる気がしない……」
なんせメイド服つってもコスプレ用、かなり短い! ギリギリだよ! ギリギリ! ふともも見せるのって相当恥ずかしいよ!
「そうねえ……私としてはそれはそれでいいんだけど……」
「でもやっぱり、見えるのは駄目でしょ!」
「そこを見るのがいいんだけどね!」
姉貴……あんたは何考えて生きてるんだ……
「まあ、確かにその服で歩き回るのは抵抗あるだろうし、呼ぶほうがいいんじゃないですかね?」
直矢、お前は本当にいい奴だ……
「じゃあ呼んで来るね!」
「じゃあ、幸頼むな。」
「うん!」
タタタ~と部屋を出て行く幸、
やっぱり俺を抑えてた人物とは思えないんだがなぁ……
「……」
滅茶苦茶見られる、そんなに見るなって……
「……」
「「「「……」」」」(姉貴&澄也&兄貴&エディ&直矢、視線が強い順だ、やっぱり直矢いい奴だ……)
「……あのさ」
「どうしたの?」と姉貴、
「何?」と澄也、
「何です?」とエディ、
「ん?」と直矢、
「何だ?」と兄貴、
「じろじろ見るのやめてくんない? 落ち着かない。」
「まあ……努力するわ!」と姉貴、
「同じく!」と澄也、
「分かりましたー!」とエディ、
「分かった。」と直矢、
「俺も努力する!」と兄貴、
最初の二人と兄貴、努力って何だ努力って! 見るなこの野郎!
「早く来て来て!」
幸の声が聞こえてきた、連れてきたか。
「はいはい。」とお袋、
「さっき着替えたんじゃなかったのか?」と親父、
ドアが開いて幸が入ってくる、遅れてお袋と親父、
「おお! いいじゃない、可愛いわよ、楓!」
やっぱり全然嬉しくないんですけど……
「……そもそもこの服はどこから?」
ナイス親父! さすがMr.一般人!
「姉貴のクローゼットからだよ。」
「ああ、なるほど。」
なるほどなんだ……
「もう着替えていい?」
やっぱり見られるのは落ち着かない。
「ええー? もうちょっと着ててくれない?」と姉貴、
「そうだよー!」と幸、
「うーん……着替え、手伝ってあげよべふ!」と澄也(直矢に蹴られた。)、
「別にいいですよ?」とエディ、
「いいんじゃねえの?」と直矢、
「その服嫌なの?」とお袋、
「着替えたいなら着替えればいいんじゃないか?」と親父、
「もうそれでよくね?」と兄貴、
「とりあえず着替えるから出て!」
「分かった。」
真っ先にそう言ってすぐに部屋から出て行く直矢、いい奴。
「そういえば、さっきから普通に溶け込んでるけど、あなた達誰?」
「確かにそうだな、楓たちが自然に接しているから何も言わなかったが。」
お袋と親父が聞く、確かに気になるわな。
「お邪魔してます、僕は直矢といって、神です。こっちのひょろ眼鏡と金髪が天使です。」
一瞬で戻ってきて質問に答える直矢。動き速いな……
「あなたが楓を女の子に?」
「ええ、すいません、僕達にも事情がありまして。」
さっきから思ってたけど、礼儀正しいな!
神なのに!
「事情って?」
「なんと言いますか、上司の命令、ですね。」
これだけ聞くとすげー変な話。
「そう……」
何か考えるようなしぐさをするお袋、
「なら仕方ないわね! 上司の命令には逆らえないもの!」
なぜか嬉しそうに言うお袋、
もしや……
「もしかして、俺を女にしたことを許す理由を探してなかった?」
一応怒らなきゃいけない立場な訳だしさ。
「そ、そんな事無いわよー」
引きつった笑みを浮かべながら言うお袋、
まあ、追求しないよ、俺は今日、世の中諦めが肝心ということを学んだんだから……
「まあいいけど。とにかく着替えるんで、男は出てけ!」
と言っても、兄貴、澄也、親父しかいないけどな。(直矢はすでに外に出てる。)
「……よし、潜伏!」
言いながら伏せる澄也、段々輪郭がぼやけてくる……
「なぬ?! 俺もやってくれ!」
兄貴が言う、お前らはなにやっとるんだ……
「OKです! 歓迎しますよ!」
兄貴の輪郭もぼやけ始める。
「……いい加減にしろや!」
澄也の頭を蹴る。
うー……足が痛い……
体が弱くなってるな……
「!! 見えた!」
「ッ!? 見るなよ!」
やっぱり見られるのは嫌だよ! 隠す!
「その格好もいいわねー!」
姉貴うっさい!
「見るなよって、見えちゃったものはしょうがないでしょ。」
「とにかく出てけって! 直矢ぁー」
「ん? 何だ?」
「こいつ何とかしてー……」
頼みの綱は直矢だ……
こいつはドラ○もんよりも頼りになる!
こいつに泣きつけば万事OK! こき使うって言ったし、存分に使ってやるもんね!
「了解、この人は?」
「兄貴? 一緒に放り出して!」
「えーと……いいですか?」
今度はお袋に聞く。
「いいわよ、大抵の事じゃ怪我しないし。」
「分かりました、っりゃ! ぃしょっと!」
掛け声と共に澄也と兄貴が飛んで行く。
「ありがと!」
「……まあ、できる限り協力するつもりだしよ……」
急に照れたような態度になって部屋を出て行く澄也、俺、何かしたかな?
ともかく、男は全員出た! 俺男だけど! ここ大事ね! 俺は体は女になっても精神は男だから!
「萌え死ぬかも……」と幸せそうな姉貴、
……は?
「……お姉ちゃん、あの笑顔は反則だよ……」と呆けている幸、
普通に笑っただけだと思うけどな……
頼んだことをやってくれたんだから、あれくらいしてやってもいいでしょ。
「あんなに笑顔で……いいわよ、もっとアタックしなさい! お母さん応援するわよ!」とお袋、
アタックってなんですか? トス、レシーブ、アタック? 違うね、絶対。
「輝くような笑顔ってこのことですね……」
どのこと?
「まあ、着替えるから見ないでね!」
本当は出て行って欲しいけど、一応姉貴の部屋だし、そこまで我がまま言えないだろ。
「うん! 努力するわ!」
だから、努力ってどういうことだよ?
「幸は見ちゃ駄目?」
「だから、嫌だって言ってるだろ! これでも精神は男だから着替えてるところを女に見られるのは抵抗あるんだよ!」
「けちー……」
ブーブー口を尖らせて言ってくるが、知るか!
「見ないくらいならいいわよ、それくらいなら。でも、何に着替えるの?」
「ん? このひらひらしたやつ、着心地いいから、気に入った! 見た目もそこまで派手派手してねえし。」
うん、何かあれ着た後だとそんなに気にならないから不思議だね!
「僕も全然いいですよー! 後ろ向いてますね。」
後ろを向いてご丁寧に目隠しまで自分の手でしている。
いやー、素直ないい子だ! どこかの変態なお兄さんやお姉さんとは大違いだね!
「じゃあ着替える。」
これを着るのも三回目、少し慣れてきたよ。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「よし、着替えたよ!」
「うん、この服でも可愛いわね!」
「そうだね!」
「そうねー、そういえば、なんでこあれ着たの?」
「言質とられた……」
「へー、さっきのも?」
「そうなんだよ……姉貴ずるい!」
「ごめんねー、楓があれ着たところがどうしても見たくて。」
そんなに見たかったの!?
「まあいいや、下行こう? そこで色々話し合おうよ。」
「話し合う……けっこ、いや、まさかね、まだ早いわよね……まだ会ったばかりだし、女の子の体になったばかりなんだから……」
お袋がなぜか慌て始める。
……どうした?
「ああ、話し合うってあれですね?」
「そうそう、あれあれ。」
今後どうするか。
「あれって!? ……駄目よ楓、楓はお姉ちゃんのお嫁さんになるのよ!」
何を訳の分からんことを言ってるんだこの人。
「いや、そうじゃないけど、とりあえず駄目だからね! 焦りは禁物よ!」
お袋、だから何がだよ?
「とりあえず下行こう。」
「わ、分かったわ、お母さん、一応心の準備をしておくからね、大丈夫よ……」とお袋、
だから何のことだよ……
「いざとなったらあいつを……」と姉貴、
何か危ないオーラを出しているんだけど……?
「行きましょー。」とエディ、
「行こ!」と幸、
「よし、行こう!」
ガチャリ
……直矢と兄貴が激しい戦闘を無音で繰り広げていた。
次は来月の2日です!