表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/90

「ただいまーっと」

 祐二は帰宅するなり、機嫌良く声を張り上げた。

 しかし、部屋には誰もいるはずもない。

 黄泉が祐二に続いて玄関で靴を脱ぐ。

 田辺との稽古が打ち切りとなったことで、二人はここ数日、学校からまっすぐ帰宅していた。

 剣道大会の一件は黄泉に話はしていたので、二人は悪鬼の動きに注目していた。

 しかし、ここ数日はなんら動きもみせないことに、祐二は肩すかしを食らった感じだった。

 祐二が和室で着替えを始めると、黄泉は脱衣所に向かった。

 ふと疾しい考えが首をもたげるが、ぐっと堪える。

 下はジャージ、上はTシャツ姿に着替えたところで、祐二はベッドに腰かけ一息ついた。

 暫くしてガチャリとドアが開き、黄泉が脱衣所から出てきた。

 黄泉は黒のタンクトップの上に、首元がゆったりとしたTシャツを着、下はスパッツに着替えていた。

 黄泉はハンガーを手に取り、制服を掛けていく。

「今日の飯はいかがいたすか?」

「うーん、冷蔵庫に総菜が残ってるはずだから、それですませるか」

「あいわかった」

 剣術の稽古をしていないので、あまりお腹が減らないのだ。

 稽古がないと時間を弄んでしまう。

 何気なくテレビのリモコンを手にとり、テレビをつける。

「はう!?」

 いきなり流れたテレビの音に驚き、黄泉は肩を跳ね上がらせた。

 その仕草を祐二はかわいらしいと思い、ついニヤけてしまった。

額縁(がくぶち)に人が入っておる……」

 黄泉は珍しそうにテレビに近づき、つんつんと画面を触った。

 よくもこんな狭い場所に人が入れるものだと、黄泉は感心した様子だ。

「そういえば黄泉が来てからテレビなんてつけてなかったな」

 黄泉が来てからというもの、忙しい毎日でテレビを観る余裕などなかったのだ。

「これはテレビという物で、簡単に言うと写真を動かしているって感じだ」

「て、るび? 写真が動く? そのようなことはなかろう」

 黄泉は腕を組み、ばかにしては困るといった風に、ジト目で祐二を見やる。

 しょうがねぇなと言った感じで祐二はノートを開くと、端っこに棒人間を書き始めた。

「いいか、みてろよ――」

 黄泉がノートを覗き込んだところを見計らい、ページを勢い良くめくる。

 バラバラと小気味の良い音と共に、棒人間が踊りだした。

「おお、動いておる!」

 ほほぉー、と感嘆した様子で、黄泉は食い入るようにノートを見つめていた。

「この原理で撮影した写真を素早く何枚も表示させているわけだ」

 黄泉は腕を組みながらふむふむと頷く。

「ということは、このてルビとやらに入っている者は、すこぶる魂を吸い取られておるのだな」

「あ、あぁ……って、お前、いつの時代の人間だ!」

 素早く突っ込みを入れるが。

「江戸時代であるが?」

 素早く返されてしまった。

 俺が悪かった、もういいよと、祐二は力無く肩を落とす。

 と、そのとき、テレビの番組が臨時ニュースに切り替わった。

『臨時ニュースをお伝えします。ついさきほど都内の新陰流体験教室で、参加者が意識不明で病院に搬送されるという……』

「黄泉! 奴等が動いた!」

 祐二の言葉に、黄泉は素早くテレビを見やる。

「新陰流を狙っておる……」

 室内に緊張が走った。 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ