壱
春季剣道大会の数日後、ネットカフェ某店にトキオ、田辺の姿があった。
トキオはソファに坐り、パソコンのモニターを睨んでいた。
姫将鬼に自分の存在を明らかにすることで、悪鬼達が何らかの動きを見せる――そう踏んでいたのだ。
「今のところ別段動きは無し――か」
そうこぼすとソファの背もたれに体を預ける。
「ところで」
不意に田辺が口を開いた。
「住処を手配してくれたのは有難いが――」
田辺はここ数日間疑問に思っていた事をトキオにぶつける。
「なぜツイン席なんだ!」
長いソファに腰かけるトキオの横には、田辺の姿。それも優雅に組んだトキオの足を邪魔そうに坐っている。
田辺の言葉にクスクスと笑うトキオ。
「このほうがチームとしての絆も深まると思ってね」
いうと、トキオは悪戯っぽく肩をすくめてみせる。
一つの部屋で二台のパソコンがあるツイン席というものは、カップルで使用することが多い。
それはあまりネットカフェを利用したことのない田辺でもわかる。
「カップルでもあるまいし、なぜ貴様と同じ部屋に篭らないといけないのだ」
トキオは田辺の耳元で囁いた。
「僕はその手の趣味はないが、君が望むなら」
「な!?」
赤面した顔を隠すようにうつむいた田辺を見て、トキオはジョークだといいながらケラケラと笑った。
なぜ俺はこんな奴と組んだのだろうか――田辺の内から後悔の念がわいてきた。
田辺の気持ちなどお構いなく、トキオはインターネット配信の生放送を開いた。
暇潰しで開いたであろう放送は、女性生主が動画に合わせて歌を歌う放送だった。
トキオが何気なく眺めていると、放送のテロップに気にかかるニュースが流れた。
「――これは!?」
内容は、新陰流の稽古中、参加者が意識不明――そう書かれていた。
トキオはすかさずニュースのURLを田辺のスカイプチャットに送信した。
「見たまえ」
田辺は送られてきたチャットのURLをクリックする。
ニュースの内容を確認した田辺が呟く。
「動き出したな」
楽しませてもらおう――そういわんばかりに田辺は口元をつり上げた。




