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「ただいま」

「祐二か、飯の支度はできておるぞ」

 ドアを開けると、黄泉の弾むような声が祐二を迎えた。

 黄泉のほうが帰宅が早いので、自動的に夕飯の支度は黄泉に任せっきりになっていた。

 いつも悪いと思いつつ、祐二は鞄を置き、ちゃぶ台に向かう。

「お、今日はハンバーグか」

 黄泉は嬉しそうに、頷いて見せた。

「絵里子に作り方を教わったのだがこれで良いか?」

 白い皿の上に、こんがりと焦げ目のついたハンバーグが二つ乗っている。ちゃんとつけあわせには、茹でた人参と、ブロッコリーが添えてあった。

 香ばしい香りが祐二の鼻腔をくすぐり、食欲を促す。

「すっげーな黄泉! うまそう」

「では飯を盛るぞ」

 ちゃぶ台を囲み、夕食がはじまる。

「これが肉であるか……うまいな」

 あぁ、そういや江戸時代に肉を食べる習慣はなかったんだなと、祐二は黄泉の反応に納得する。

 祐二は箸でハンバーグを切ると、中から肉汁がじわりと流れ出る。

 しかし、初めて作ってこれだけできたら上出来だと、祐二は関心した。

 絵里子の指導が良いのか、黄泉の料理の腕が良いのかは定かではないことであるが。

 祐二は箸で手頃な大きさに切ったハンバーグの欠片を口に運んだ。

 噛んだ瞬間、肉のうま味が口の中いっぱいに広がった。

 うまい――しかしと、祐二は釈然としない想いを抱えながら黙々と箸を進めた。

 おもむろに黄泉が口を開く。

「いかがした? うまくなかったか?」

 いや、そうじゃないと、黄泉の言葉を否定し、祐二は動かしていた箸を止める。

「田辺が全く姿を現さない。最近は学校にすら来ていないみたいで、副部長が心配している」

 なんか放っておけなくてなと、祐二は軽く肩を竦めた。

「田辺――」

 その名を聞いて黄泉の箸が止まった。

 剣道とはどのようなものかもよくわからなかったこともあるが、黄泉は果たし合いさながらの組太刀で田辺を打ち負かした。

 それが原因で田辺は部活に来なくなったのではないか。

 鬼に魅入られたのもそれが原因なのかもと。そう、自分を責めていた。

 黄泉は叩きつけるように箸をちゃぶ台に置いた。

「祐二、人探しだ」

「人探しって、黄泉、まさか田辺を」

 黄泉はこくりと頷いた。

「わしも詫びの一言を言いたい」

 部に戻せるかどうかは別として、高田の力になれたらと、祐二は思っていた矢先なだけに、黄泉の言葉に大きく頷き返す。

 祐二は残りのご飯を口にかき込むと、立ち上がった。

「よし、いっちょやるか」


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