表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/90

「民間人は撤回しょう」

 涼しい顔で鬼の攻撃をかわしながら、トキオは続ける。

「君は一般人だ」

「ざけんなあああ!」

 一般人も民間人も変わりねえだろと、祐二は思い切り突っ込みを入れた。

「お前こそさっさとケリつけろ! エリートさんよ」

 仕方ないなと、肩を竦めるトキオ。

 その間も鬼の攻撃は止まっていない。

 迫る右の爪を軽く避ける。

「一般人は黙って見ていろ」

 トキオは距離を取り、右足を引いた。

 太刀の柄は右顔側面、切っ先は上。

 八双の構えだ。

 そのまま躊躇無く、袈裟に太刀を振るう。

 少し遅れて鬼の右手が振り下がる。

 間合いが足りずトキオの斬撃は空を斬った。

 もらった――そう言わんばかりに、鬼の爪がトキオの顔面を捉える。

 トキオの右足が動く。

 前方に大きく踏み込んでいた。

 懐に潜り込まれ、鬼の手は空を斬る。

 トキオの太刀は左腰にあった。

 左の脇構え。

 白刃が閃光のごとく走った。

 左下からの斬り上げ。

「新陰流、逆風の太刀!」

 悪鬼は右わき腹から左胸にかけて、真っ直ぐ斬り裂かれていた。

 悪鬼は必死に傷口を押さえるが、切り口から夥しい煙が上がり始める。

「ぐ、おおおおおおおお!」

 苦悶の絶叫がこだまする。

 苦痛に顔を歪め、絶叫は断末魔の叫びに変化した。

 赤い肌は徐々に色を失っていき、悪鬼は膝から崩れるように倒れ伏す。

 最初の袈裟はフェイントであり、真の狙いは踏み込んでの斬り上げ。

 袈裟は空ぶれば、隙ができる。

 その隙を狙う相手の両腕を切り落とす技が逆風の太刀。

 それをトキオは腕ではなく、体を狙った。

 微睡まどろみの思考で黄泉は思った。

 トキオの太刀は新陰流において殺人剣であると。

 悪鬼の体が消滅したことを確認し、トキオは青岸から太刀を下ろし、残心を解いた。

 そして右手で太刀を降り上げ、血振りをする。

 振られた太刀は一瞬で砕け、透き通る粉雪のように散っていった。

「妖術刀、そして新陰流――トキオ、お主は一体何者だ」

 祐二に肩を借りながら、黄泉はトキオに問いかけた。

「言っただろう。僕はただの道先案内人だ」

「てめ、ふざけんな!」

 掴みかかろうとする祐二の眼前に、トキオは右手を突きだした。 とっさに、祐二が動きを止める。

「忘れていないか? 悪鬼から解放された者はその時の記憶を失うと」

 トキオは右手の中にある装置のスイッチを押した。

「お前はどんな寝顔を見せてくれるのかな? 感じる。感じるぞ。魂を削る振動。もうすぐ永久に覚めぬ夢の世界だ――」

 それはくぐもった犯人の肉声だった。

 現在倒れている男が犯人である動かぬ証拠である。

「遠慮なく受け取ってくれたまえ」

 トキオはレコーダーを無理矢理祐二に押しつけると、身を返した。

 何が受け取ってくれたまえだと、祐二は吐き捨てる。

 しかしすでに、周囲にトキオの姿はなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ