表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/90

 竹川高校では、体育館を二つ有していた。

 新館といわれる体育館は、主に室内球技部が使用し、少し小さ目の旧館では、剣道、柔道、空手などの部が使用している。

 絵里子が先頭を歩くようにして、三人は旧館へと向かった。

 旧館のドアを開けると、激しい気合い、竹刀を打ちつける乾いた音、そして時折床を踏み込む重い音がこだましていた。

 剣道部はこの体育館の一角で稽古をしている。

「じゃ、あたしも着替えてくるから」

 絵里子は黄泉に軽く手を振ると、更衣室へ向かった。

 取り残される形となった祐二と黄泉は、板張りの壁に寄りかかるようにして、剣道部の稽古風景を眺めていた。

 体育館の端では、新入部員だろうか、熱心に素振りをしている。

 広めのスペースでは、上級生だろう。一対一で試合さながらの稽古に励んでいる。

 竹刀と防具をつけての稽古は、新陰流でもあり、黄泉は防具と竹刀については抵抗が無いようだった。

 真剣な眼差しで稽古を見つめる黄泉に、祐二がふと声を掛ける。

「どうだ?」

 黄泉はため息を吐くと、首を振った。

「打ち込みの速さと、形式を重んじるようだな。これでは人は斬れぬ」

「何も人を斬る為に剣道をするわけじゃないし」

 祐二の言葉に、黄泉は大きく頷く。

「左様。我が新陰流では活人剣かつにんけんがあるように、人の命を斬るのが剣術ではない。活人には致命傷を与えず勝つという意味もある」

 さすがは生きた侍だと、祐二は黄泉の解説に舌を巻いた。

 その二人の会話に聞き耳を立てている人物がいた。

「ほう、剣道について心得があるのか? 小倉が見学者を連れてきたというのだが、あなた達のことか?」

 二人の目の前に現れた男は、長身で、髪は黒の短髪。

 上は剣道用の白胴着、下は袴姿。 左手には竹刀を提刀さげとうの状態で携帯している。

 男は思いだしたかのように口を開く。

「私は剣道部主将、田辺たなべ あきらだ」

 祐二と黄泉は壁に預けていた背中を離し、田辺に向きなおる。

「関川 祐二です」

「黄泉と申す」

 名乗り方が気に食わないのか、田辺は一瞬眉を寄せた。

「そちらの女子は、剣道に詳しいように見えますが」

「剣の稽古なら受けていた」

「そうか、ならば一つ試合を体験しませんか?」

 田辺は踵を返すと、部員を集めた。

「今日は顧問の先生が休みだ。よって私が皆の指導をする」

 そこでと、田辺は続けた。

「我が剣道部を見学したいという者が来ているので、是非体験してもらおうと思う」

 田辺の言葉に部員の男女がざわめいた。

「剣道の素晴らしさを体験してもらう為、私が試合形式で指導する」

 言い終えると、田辺は黄泉と祐二を指で示した。

 組太刀か――黄泉は歩みを進める。

「是非、手合わせ願いたい」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ