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五
放課後、終業のチャイムが校内に鳴り響く。
おつかれなどといいながら、生徒達が席を離れだした。
祐二は鞄を取り出すと、教科書、ノートを詰め込み始めた。
「黄泉、帰るか」
そう言うと、祐二は立ち上がる。
鞄に教科書を詰め込み終わった黄泉は、つられるように立ち上がった。
そして祐二に顔を向ける。
「わしはこの後、絵里子に誘われた」
「はぁ?」
すると、黄泉の隣の絵里子が会話に割り込んできた。
「そういうこと。黄泉はこれから剣道部の見学なの」
その言葉を聞いた祐二は思わず舌打ちをした。
あいつ、黄泉を最初から剣道部に誘うつもりだったな――と。
黄泉が剣道部に入るとはとうてい思えないが、現代について疎い黄泉であるからうっかり入部ということも予想できる。
それに、なにかわからないことがあれば頷くようにと言っておいたことも心配だ。
明日からよろしくといわれ、頷く黄泉の姿が祐二の脳裏に浮かんだ。
「それなら俺も行っていいか?」
「え、関川くんも?」
絵里子は戸惑いを隠せず、声をあげた。
やる気の感じられない、目立たないという祐二が剣道に興味があることが絵里子には驚きだった。
「別にいいけど。なんなら入部する?」
「丁重にお断りします」
そう言いながら、祐二は鞄を持ち上げた。




