五
「青春ってやつか」
わざとらしく呟く声に、祐二は振り向いた。
そこには額にゴーグルをつけた、トキオの姿があった。
トキオは屋上の鉄柵に背中を預け、嘲笑している風だった。
「てめぇ!? こんなところで何してやがる!」
掴みかかろうとする祐二の目を、何かが遮った。
祐二が顔に貼り付いた物を手で掴み取る。それは大きな茶封筒だった。
「せっかくお届け物を持って来たのだが」
祐二は中をのぞき込むと、書類のようなものが数枚入っていた。
そのうちの一枚を引っ張り出す。
「戸籍謄本!?」
驚くべき事に、その書類は黄泉の物であった。
「榊原 黄泉。俺の親戚の養子!?」
黄泉の親の名前に、祐二の親戚の名があった。
しかも、養子となっていた。
残りの書類も見ると、住民票まであった。
「それはおまけだ」
祐二は手にした書類を見ると、何かの問題集のようだった。
「なになに、竹川高校中途入試問題!?」
ご丁寧に、日付は金曜になっていた。
「そういうことだ」
「ちょちょちょっとまて!?」
背を向けるトキオを祐二が呼び止める。
「おめ、これって思い切り犯罪じゃねえか!? しかも俺の個人情報まで調べやがったのか!」
背を向けたままトキオは肩を竦めた。
「ばれなければ犯罪とは言えない――だろ?」
たしかに精巧にできているがと、祐二は書類を眺める。
引越して、住民登録の際、お目にかかったことのある書類だったが、紙質や書式はそんな感じだった。
もしかすると、本物と並べても見分けがつかないかもしれない。
いや、ばれようがばれまいが、お前のしていることは犯罪じゃねぇかと、トキオの言い訳を内心で否定する。
しかし、裕二が納得できない理由はそれだけではない。犯罪というリスクを侵してまで何故、トキオは黄泉を高校に通わそうとするのか。
裕二はその疑問をストレートにぶつけた。
「黄泉をこの学校に入学させるだと!? 何を企んでいやがるんだ!」
「企んでいるなんて人聞きが悪い」
歩みを止め、トキオはちらりと祐二をみやる。
「僕はただ、君が何かに気になって、勉強に身が入っていないのを見かねただけだ」
何が僕だと吐き捨てるが、祐二に返す言葉は見つからなかった。
「そういうことだ」
トキオは背を向け、去っていった。
「ストーカーめ」
祐二はトキオの背中に向かって毒づいた。




