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 屋上に対峙する二人の男子生徒。

 両方が黒髪。

 一方は肩まで伸ばされた黒の長髪――山田 光輝。

 祐二より頭一つ分低い背丈であるが、がっしりとした体付きから、なにかしらスポーツなどをやっていそうな雰囲気である。

 対する男子生徒――祐二は、一見ひょろっとした体つきだった。

 にらみ合いの後、山田が祐二に噛みついてく。

「お前のような目立たねえ奴はおとなしくしていろ。目立ちやがって、気にいらねぇんだよ」

「俺だって目立ちたくない」

 だって面倒くせえしと、祐二は内心で続けた。

 その言葉に、山田の眉間に皺がまた一つ増える。

 山田は凄みをきかせながら祐二に詰め寄った。

「勝負だ」

 言いながら山田は右手を上げる。

 このポーズに祐二は戦慄を覚えた。

 プロレスで見られる手四つに誘う構えである。

 この男、何かやっている――腹の中で呟き、祐二は油断なく構える。

 祐二が左手を上げた。

 山田の右手をがっちりと握り、続いて残りの手も組み合った。

 二人の腕が小刻みに震える。

 山田のが体つきの良さはハッタリではなく、力は祐二の想像とほぼ一致していた。

 体力が残っているうちに畳み込んだほうが良策だと判断する。

 そろそろ本気でいくかと、祐二は腹の中で呟き、思い切り力を入れる。

 祐二の指がぎりぎりと山田の手を締め付けた。

 顎を山田の肩につけ、全身に力を込める。

 このまま一気に押し倒してやる――祐二がそう思った瞬間だった。

 不意に山田が悲鳴を上げた。

「いててて! ギブアップ! ギブだってば!」

「は?」

 手を離してやると、山田は痛そうに手を振っていた。

「仕方ない、見逃してやる」

 涙ぐみながら言う山田に、説得力は微塵もない。

 お前、ギブアップしたんだろと、祐二は内心で突っ込んでいた。

「なかなかやるな。わかっていたぜ。お前の秘められた力」

 山田は殴られたわけでもないのに、腕で口元をぐっと拭った。

「今日から俺達は堅い友情で結ばれた」

 そう言いながら、山田は右手を差し出した。

 祐二は山田の尻に蹴りを叩き込んでやりたい衝動を必死に押さえ、笑顔で山田の手を握り返す。

 面倒なのは嫌だったから。

 お前、女を大切にしろよと、言いながら山田は去っていった。

 まさに口だけで世間を渡っていくような典型だ。

 祐二は小さくなっていく山田の背中に向かって呟いた。

「チキンが――」


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