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 目立たない学生ライフ。

 何事もなく平穏な日々。

 平凡な中に、スパイスのような刺激で十分だった。

 スパイスどころではない現状。

 祐二の抱いていた希望が、音を立てて崩壊していく。

 頼むから面倒なことにならないでくれよと、祐二は机に頭を突っ伏した。

 そこに、がらりと窓が開く音。

「祐二、弁当を忘れておるぞ」

 知らん、俺は知らん――そう心の中で繰り返していると、不意に肩を叩かれる。

 恐る恐る顔を上げると予想通り黄泉の顔があった。

 再び机に突っ伏し、現実逃避をはかるが、周囲から歓声が上がった。

「呼び捨てだ! 目立たない関川にコスプレ彼女かよー」

「俺にも紹介しろー」

 様々な冷やかしが飛び交う。

 観念したのか、祐二は面を上げると、黄泉から弁当を受け取った。

「ありがとう」

 そう言う祐二の顔はひきつっていた。

 熱いねーなどという冷やかしがまた飛んだ。

「しからば御免」

 いうと、黄泉は身を返し、窓を乗り越え、立ち去っていった。

 そんなやりとりを見ていたであろう、ボサボサ頭を肩まで伸ばした男子生徒が、祐二の席にやってきて、肩に腕を回した。

「コスプレ歴女かよ! どうやったらお知り合いになれるんだ!」

 面倒そうな奴がきやがったと、祐二はため息をついた。

 山田 光輝――クラスの連中があまり関わろとしない、一匹狼的存在だ。

「おい、教えろよ」

 耳元で囁かれ、祐二は面倒くさそうに答える。

「あぁ、俺の親戚。いとこ」

 嘘八百を並べるが、山田にとっては逆に好都合だった。

「それなら俺に紹介してくれるか?」

 楽しめそうだぜと、嫌らしい笑みを浮かべる山田に、祐二は激しく頭を振った。

「だめだめだめ!」

 その態度に、山田は怒りを露わに凄んだ。

「んだぁ!?」

 そう言いながら山田は祐二の胸ぐらを掴む。

 祐二は、これじゃ中学と変わりねぇじゃねかと、うんざりした様子でため息をついた。

 その態度が山田の怒りの炎に油を注いだ。

「上等じゃねぇか! 面貸せや!」

 山田は怒鳴り散らし、祐二を引きずるようにして教室を出ていった。

「で、あるからして――」

 教師は始終を見ていて何も言わないのか、それとも気づいていないのか、はたまた腫れ物に触れるのが嫌なのか――授業を独りで進めていた。


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