参
目立たない学生ライフ。
何事もなく平穏な日々。
平凡な中に、スパイスのような刺激で十分だった。
スパイスどころではない現状。
祐二の抱いていた希望が、音を立てて崩壊していく。
頼むから面倒なことにならないでくれよと、祐二は机に頭を突っ伏した。
そこに、がらりと窓が開く音。
「祐二、弁当を忘れておるぞ」
知らん、俺は知らん――そう心の中で繰り返していると、不意に肩を叩かれる。
恐る恐る顔を上げると予想通り黄泉の顔があった。
再び机に突っ伏し、現実逃避をはかるが、周囲から歓声が上がった。
「呼び捨てだ! 目立たない関川にコスプレ彼女かよー」
「俺にも紹介しろー」
様々な冷やかしが飛び交う。
観念したのか、祐二は面を上げると、黄泉から弁当を受け取った。
「ありがとう」
そう言う祐二の顔はひきつっていた。
熱いねーなどという冷やかしがまた飛んだ。
「しからば御免」
いうと、黄泉は身を返し、窓を乗り越え、立ち去っていった。
そんなやりとりを見ていたであろう、ボサボサ頭を肩まで伸ばした男子生徒が、祐二の席にやってきて、肩に腕を回した。
「コスプレ歴女かよ! どうやったらお知り合いになれるんだ!」
面倒そうな奴がきやがったと、祐二はため息をついた。
山田 光輝――クラスの連中があまり関わろとしない、一匹狼的存在だ。
「おい、教えろよ」
耳元で囁かれ、祐二は面倒くさそうに答える。
「あぁ、俺の親戚。いとこ」
嘘八百を並べるが、山田にとっては逆に好都合だった。
「それなら俺に紹介してくれるか?」
楽しめそうだぜと、嫌らしい笑みを浮かべる山田に、祐二は激しく頭を振った。
「だめだめだめ!」
その態度に、山田は怒りを露わに凄んだ。
「んだぁ!?」
そう言いながら山田は祐二の胸ぐらを掴む。
祐二は、これじゃ中学と変わりねぇじゃねかと、うんざりした様子でため息をついた。
その態度が山田の怒りの炎に油を注いだ。
「上等じゃねぇか! 面貸せや!」
山田は怒鳴り散らし、祐二を引きずるようにして教室を出ていった。
「で、あるからして――」
教師は始終を見ていて何も言わないのか、それとも気づいていないのか、はたまた腫れ物に触れるのが嫌なのか――授業を独りで進めていた。




