弐
竹川高校。
さほど有名ではない普通の公立高校だ。
一年一組という教室では、国語の授業だった。
祐二は壮年の教師が読み上げるテキストの文章を、聞き流していた。
一応ノートに重点項目をかき込んでいく。
祐二は教室では目立たないように、振る舞っていた。
喧嘩をふっかけられないようにということもあるが、髪を染めないのはそういった理由もあってのことだ。
しかし――学校に行くといつも黄泉のことが気になっていた。
迷子になっていないか、昼はちゃんと食べているのかなど。
そんな心配ばかりが頭をよぎる。
授業を受けるのが鬱陶しくさえ思えてくる。
黄泉、今頃何しているんだろう――などと考えながら、ふと窓に視線を向けた。
「!?」
窓の外にはいる筈のない、着物を着た少女の姿があった。
ちょっとまてまてと、祐二の顔から血の気が引いていく。
クラスメイトに見つかり、祐二の知り合いで、ましてや同居しているなんて知れたら何を言われるかわからない。
せっかく築き上げてきた平凡な学生ライフに危機が迫る。
祐二はとっさに参考書で顔を隠すが時すでに遅かった。
黄泉は祐二の姿を見つけるや、手にしている弁当箱を指さした。
祐二は犬を追い払うように、しっ、しっ、と、手で拒否反応を示す。
それを見た黄泉は手を腰に当て、頬を膨らませる。
そしてズンズンといった感じで窓に近づいていき――ガラスに頭をぶつけた。
ゴトンという鈍い音に、生徒全員が窓の外に注目する。
窓の向こう側には、芝生に横たわり、目を回している黄泉の姿があった。
おいおいおい、ガラスだってことぐらい解れよと、祐二は額を押さえていた。




