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 祐二は何回か依頼者とメールをやりとりし、やっとのことでディスプレイから目を離した。

 仕事の依頼者は近所に住んでいるらしく、それなら、こちらからお伺いしますということだった。

「これから依頼者が家に来るそうだ――っておい!」

 黄泉はベッドで寝息を立てていた。

 祐二は忍び足で近寄ると、気持ちよさそうに寝入っている黄泉の頬を摘み、思い切りひねり上げた。

「いだだだ! わしは美味くないぞ!」

 叫びながら黄泉は目を覚ました。

「犬に食われるところだった」

 痛そうに頬をさする黄泉に、祐二は呆れかえる。

「あのな、これから仕事の依頼者が家にくるぞ」

「まことか!?」

 黄泉は、がばっと起きあがると、きゅうすに茶葉を入れ始める。

 これが本当の現金な奴かと、祐二は肩をすくめた。

 数十分が経過した頃だろうか。不意に部屋の呼び鈴が鳴り響いた。

「空いておる――」

「こらこらこら、お客様にたいして!」

 はいはい、ちょっと待ってねと、言いながら祐二は悠長に玄関のドアを開けた。

「コスプレ探偵事務所はこちらでよろしかったですか?」

 玄関に立つ女性は、四十代くらいのぽっちゃりとした婦人だった。

 濃い目の化粧で、いかにも高級そうなバッグを腕にかけ、首や腕にたくさんの装飾品をつけていた。

 お金持ちでございますと言わんばかりの婦人に、祐二の腰は一瞬にしてへこっと折れた。

「はいはい、左様でございます」

 手を揉みながら、ニヘラーと、愛想笑いをする祐二に、黄泉はぼそりと呟いた。

「――あきんど」


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