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World×World  作者: シクル
序章
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World0-0「プロローグ」

 どうも、久しぶりの新作となりましたシクルです。

 今作「World×World」はシクル四周年&なろう十五作目の記念作品でございます。これまでのシクル作品とのクロスオーバー的要素が多分に含まれますが、もちろんこれまでのシクル作品を知らなくても問題ないように作ります、なんでブラウザの戻るボタンはまだ押さないでどうかっ!

 TLORS(この間完結した拙作)程ではないかも知れませんが、それなりに長めのを想定して書いてますので、完結は年内にならない可能性も……?

 とまれ、これから永久達をよろしくお願いいたしますm(__)m

 枯れた大地だった。

 枯れ果てたその大地には、草木の類は見受けられず、ただひび割れている。草木に限らず生き物の姿はそこにはなく、虚しく荒野が続くだけだった。

 ――――ただ、二つの人影を除いては。

 片方は、逆立った黒髪をもった長身の男だった。髪と同じくらいに黒い鎧を纏っており、その黒ずくめの姿の中で、彼の赤い双眸は映えている。

 黒い男の正面には、純白のロングドレスを身に纏った少女がいた。その白いドレスとは対照的に少女の髪は黒く、その長さは剥き出しになっている背中を覆う程だった。

 延々と流れる沈黙が、両者を満たしていく。

 口は開かず、ただ静かに互いを見据える。睨んでいると言っても良い。

 しばし睨み合った後、男が一歩踏み出したことで静寂は破られる。それと同時にまた、少女も男目掛けて踏み出していた。

 そして次の瞬間、枯れた大地へ金属音が染み込んでいく。

 男の右腕は、どういうわけか剣のような形状へ変化しており、少女の右手にはいつの間にかショートソードが握られていた。

 二人は、右腕と剣でしばらく鍔迫り合いを演じたが、やがて少女の方が弾かれるようにして男から距離を取る。

 その次の瞬間には、男の右腕は後ろへ乱暴に振るわれると同時にその形状を異質なものへと変化させていた。

「――っ!」

 変化した右腕の先からは鎖が伸びており、その先には凶悪な棘の付いた成人男性の頭一つ分程の大きさの鉄球が付いている。その形状をした武器は名を、モーニングスターといった。

 男はその鉄球を少女へぶつけんとして、腰の回転と共に腕を容赦なく少女へと振る。少女はすぐさまショートソードに身を隠して鉄球を防ごうとするが、ショートソードのサイズでは鉄球を受け切れないことは火を見るより明らかだ。

 しかし、ニヤリと男が笑みを浮かべた瞬間に、少女の持っているショートソードは身の丈程もある大剣へと姿を変えていた。

 本来叩きつけられる予定ではなかった大剣ものに叩きつけられた鉄球は困惑するように宙を舞い、音を立てて地面へ沈み込む。

「……っ……っ!」

 鉄球の衝撃による痺れに耐えつつ、少女は両手で大剣を持ち上げ、攻めに転じる。

 男へ接近しながら、両手で持っている大剣を柄から千切るような動作で少女が両手を広げると、いつの間にか少女の両手にはショーテルのような形状をした短い剣が一本ずつ握られており、既に先程まで持っていた大剣の姿はどこにもなかった。

「――チィッ」

 男が舌打ちした時にはもう、少女はショーテルの間合いまで接近していた。

 すぐさま右腕の形状を剣に戻した男に対して、少女は異常なまでに俊敏な動きで二本の剣を操り、間髪入れずに様々な方向から男へと切り込んだ。男はそれを右腕一本で受け続けていたが、防戦一方であることに変わりはなく、男の表情にはやや焦りの色が現れていた。

 不意に、男は空いていた左手の平を、少女へと向ける。

 少女がそれに気が付き、しまったと言わんばかりに表情を歪めた時には既に遅く、少女の身体は後方へと吹き飛ばされていた。

 男の左手からは衝撃波のようなものが発せられたらしく、少女の腹部には激痛が走っていた。

 地面へ背中から叩きつけられ、呻き声を上げながらも少女は素早く立ち上がったが、少女が視線を男へ戻した時、男は少女へと左手をかざしていた。

 ――――来る、と少女が判断したかしないかさえ判然としない内に、男の左手から火球が発射される。

 先程の鉄球の倍はある火球それは、真っ直ぐに少女の元へと飛来していったが、少女は避けようとするどころか一歩踏み込み――――右の剣を大きく火球へと振り抜く。

 次の瞬間、火球は姿を消していた。

 少女の左手に握られていた剣は消えており、その代わりに少女の右手には先程のショーテルではなく、フランベルジェのような剣が握られていた。

 便宜上、フランベルジェのよう、と形容せざるを得ないが、その形は世間一般に知られるフランベルジェとは大きく異なっており、まるで燃え盛る炎のような形をした剣だった。

 男は恨めしそうに少女の持つ剣を睨んだが、それには構わず、少女は再び男との距離を詰めんとして踏み込んだ。

 少女が男へと駆けていく途中で、少女の握っていた剣はまたしてもその形状を変化させていく。

 次に少女が握っていたのは、東洋の剣――――刀だった。

 素早く斬りかかる少女の刀を、男は咄嗟に右腕の剣で防ぐが――

「――――ッッ!」

 その剣は、刀によって両断される。

 驚愕に表情を歪めつつ、今度は左腕を剣に変化させて少女へと突き出すが、既にそこに少女はいなかった。

 男はしばらく、焦燥感に満ち満ちた様子で辺りを見回していたが、すぐに上空を見上げ――言葉を失った。


 その姿は、まるで天使だった。


 ドレスから剥き出しになった背から、白く美しい両翼の生えたその少女の姿は、天使だとか、女神だとか言った表現がよく似合っている。

 少女の右手にはショートソードが握られており、その切っ先を男へと向けて少女は急降下を始めていた。

 男はすぐにそれを防ごうとするが、男が何か動作するよりも、少女のショートソードが男へ突き刺さる方が遥かに早かった。


 ザクリと。音を立てて剣が突き刺さった。


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