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いじわる
「もうすぐ誕生日だね?どこかにおいしいものでも食べに行こうか?」
彼は私を抱きしめる。背中に素肌の温かさを感じる。
「どこがいい?」
聞きながら私の首筋をなぞるくちびる。
「どこでもいいよ。」
私は両腕で彼の右腕にしがみつく。
彼はわたしの背中に強くくちづける。
「あ、そういえば。
行きたいところがあるの。
大きな水槽があるイタリア料理屋さん。
めずらしい熱帯魚がいるみたい。」
私はめいっぱいあなたの方を向いて、私たちは見つめあう。
そして深いキスをする。
「どこにあるの?」
彼が聞く。私が答える。
「品川駅のすぐそば。」
長い沈黙のあと。
「ごめん。無理。」
「冗談よ。ちょっと意地悪したの。」
自分に意地悪。彼はそんな私をもっと強く抱きしめる。
「何が欲しい?」
私はちょっと考えた。
「愛が欲しい。」
「愛してるよ。」
なんて嘘っぽい言葉。
彼は品川の駅のそば、奥さんの待つ明るい部屋に帰っていく。
そんなこと分かりきってる。