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クツムシと赤い靴

作者: ウミ ウシ
掲載日:2026/03/19

あたりが暗くなった靴屋のショーウィンドウに、一足の小さな赤い靴が飾られています。

 それは、この店の靴職人のお爺さんが、丹精たんせい込めて作った特別な靴。

 夜の月明かりに照らされて、まるで魔法がかかったようにキラキラと光を放っています。

 大事に、大事に作られた靴には、クツムシが生まれます。

 

 クツムシは、毎日毎日、靴を大切に磨いてお爺さんのお手伝いをするのが大好きでした。

「お爺さん、今日もこの赤い靴は、とっても綺麗だね。外を通る人たちがみんな、この靴を見て『ステキね』って言っているよ」

 クツムシは毎日お爺さんに話しかけますが、お爺さんにその姿は見えません。

 少し寂しいけれど、クツムシは気にしませんでした。

 大好きなこの靴に、いつか素敵な飼い主が現れることを、心から夢見ていたからです。

 ある日のこと、お店に女の子とお母さんがやってきました。

 クツムシはその女の子を知っています。何度もショーウィンドウを覗きに来ていた、あの女の子でした。

「お母さん、あの赤い靴が欲しいの! とっても可愛いわ」

 女の子は赤い靴を指差して、目を輝かせました。

 クツムシは飛び上がって喜びました。

「この靴は本当に素晴らしいんですよ! 履き心地は羽が生えたみたいに軽くて、どこまで歩いても疲れません。それに、あなたにはこの赤色がとっても似合うと思います!」

 クツムシは女の子に向かって、精一杯話しかけました。

 けれど、やはり女の子には聞こえません。それでもクツムシは、一生懸命に伝え続けました。

「お母さん、お願い。この赤い靴を買って。本当に大切に履くから。誕生日のプレゼントは、これがいいの!」

 女の子が一生懸命にお願いすると、お母さんは優しく微笑みました。

「分かったわ。大切に履いてね」

 ついに、赤い靴が買われることになったのです。

 お爺さんはショーウィンドウから靴を取り出し、丁寧に箱へ収めました。もちろん、クツムシも一緒です。

「お爺さん、今までお世話になりました。女の子に喜んでもらえるよう、精一杯頑張るよ。僕、あの子と友達になりたいんだ!」

 クツムシは晴れやかな声でお別れを言いました。

 お爺さんは何も答えませんでしたが、旅立つ靴を愛おしそうに、そっと見守っていました。

 女の子の靴になってから、クツムシの毎日はさらに楽しくなりました。

 毎日毎日、心を込めて靴を磨き上げます。女の子も、その赤い靴をとても気に入って、どこへ行くのにも履いてくれました。

「おはようございます。今日もいいお天気ですね!」

 クツムシが話しかけても、女の子は気がつきません。

 ……そんな日が続くうちに、クツムシの心には、少しずつ影が差してきました。

(どんなに話しかけても、やっぱり気づいてもらえない……)

 悲しくて、悲しくて、いつしかクツムシは靴を磨くのをやめてしまいました。

 あんなに大好きだったお手伝いが、どうしても手につかなくなってしまったのです。

 そんなある日の朝。

 女の子がいつものように赤い靴を履いた瞬間、急に泣き出してしまいました。

 お母さんは驚いて駆け寄ります。

「どうしたの? 何か悲しいことがあったの? それとも、どこか痛いの?」

 女の子はポロポロと涙をこぼしながら答えました。

「……靴を履くと、痛いの。履きたいのに、足が痛くて履けないの……」

 見ると、女の子の小さなかかとは、真っ赤に擦りむけていました。

 それを見たクツムシは、ハッとしました。

(僕のせいだ……。僕が怠けてしまったから、あんなに大切だった靴を硬くして、あの子の足を傷つけてしまったんだ!)

 お母さんは心配して言いました。

「そんなに痛いのなら、無理して履かなくてもいいのよ」

 すると、女の子は泣きながら首を振りました。

「ううん、履くの! だって、この靴が大好きなんだもん!」

 その言葉を聞いたクツムシの目から、涙が溢れ出しました。

「ごめんなさい……ごめんなさい……!」

 クツムシは泣きながら、何度も何度も謝りました。自分のことばかり考えて、あの子の「大好き」という気持ちを忘れていた自分を恥じました。

 お母さんは女の子の頭を撫でて言いました。

「本当にこの靴が好きなのね。……それじゃあ、履く前に少し汚れを落としましょう。一緒に磨いてから履こうね」

 お母さんは、女の子に靴を磨く布を渡しました。

 女の子は嬉しそうに、小さな手で靴を磨き始めます。

「ねえ、お母さん。シューも喜んでくれるかな?」

「シュー? シューって誰のこと?」

 お母さんが不思議そうに尋ねると、女の子はにっこり笑って答えました。

「この赤い靴の名前よ。可愛いでしょ?」

 磨きながらそう言った女の子の声を聞いて、クツムシは震えるほど感動しました。

(僕に、名前をくれた……!)

(今回は、一緒に靴を磨いてくれた……!)

「ありがとう。僕の姿は見えないし、お話もできないけれど、本当にありがとう。僕、頑張るよ!」

 それからのクツムシ……いえ、「シュー」は、毎日欠かさず赤い靴を磨きました。

 やがて時が経ち、女の子の足が大きくなって、赤い靴が小さくて履けなくなる日が来ました。

 けれど、女の子には二人の妹がいます。妹たちも、お姉ちゃんが大切にしていたこの赤い靴が大好きでした。

 妹たちが履けるようになるまでは、まだしばらく時間がかかります。

 それまでの間も、シューは、赤い靴を磨きます。


「またこの靴を履いてもらえる日が、今から楽しみだなぁ」

 シューは幸せな気持ちで、今日もせっせと靴を磨くのでした。


あなたの周りにも、もしかしたら……クツムシがいるかもしれません。

この作品はAIの補助を受けて作成しています。

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