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恋連鎖・祭

近くにあった恋は、始まりもしないまま、過去になる。

この恋を始めるには、今の恋を終わらせなければいけない。

 こんな町からは、出ていきたかった。テレビで見る都会のようなショップはなく、俺が生まれる前からやっているスーパーと、小学生の時に出来たコンビニくらい。

 最近になって、大型ショッピングモールも出来るとか出来ないとか、話題になっているが、都会への憧れを捨てきるための、理由にはならなかった。


 「さとる!今日もゲームしようぜ。」


 学校からの帰り道、後ろから肩を組んできたのは、保育園からの悪友だった。悪友と言っても、別に悪事を働くような奴じゃない。性格は、明るくて、誰とでも仲良くなれるやつだ。俺がそう思うのは、こんな田舎で、何の疑問も持たずに、ただ時間を浪費している。俺にとって、良い事ではない。だから、悪友だ。


「勉強するから、無理。」


「お前、いっつも勉強ばっかだな。」


「都会の大学に行きたいからな。失敗したら、ずっと田舎暮らしだぞ。俺は耐えられないね。」


「まだそんな事言ってんのか。俺は、自分の町は好きだけどねぇ。どうして、そんなに都会に憧れちゃったのか。お父さんは、悲しいよ。」


「誰がお父さんだ。お前の息子なんて、ぞっとしねぇよ。」


 バカな話をしながら、いつの間にか家に着いた。玄関を開けると、「おかえり~」と、台所から、母さんの元気な声が聞こえてくる。俺は、返事もせず階段を駆け上がり、部屋に入るなり、乱暴にカバンを置く。

 おもむろにベッドに身を投げ出し、スマホ片手に、今日も都会の紹介をしているUtuberの動画をチェックする。


-今日、紹介するお店は、、、-


 俺の田舎嫌いなのか、都会贔屓なのか、スマホの中のそれは、いつも輝いて見えた。


-コンッ-


 窓に何かが当たる音がする。


-コンッ-


 まただ。


-コンッコンッ-


 しつこい。俺は窓を開けて、外を見る。


「おい!?お前、何やってんの?」


 隣の美咲だった。


「お前、それ投げんなよ?」


 美咲は、でっかいクッションみたいなのを、頭の上に抱えていた。


「じゃぁ、無視すんな。」


「うっせーな。」


 俺は窓を閉めようとする。


「聡、今、暇でしょ?」


「お前よりは忙しいわ。」


「そっち行っていい?」


 美咲は、そう言い終わる前に、窓から身を乗り出す。


「良いって言ってないぞ。」


「言うからいいじゃん。」


 彼女は精一杯、手足を伸ばし、飛び移った。


「また動画見てたの?」


 部屋に入ってくるなり、ベッドに寝転がる。俺は、すぐに机に移動した。


「邪魔しに来たのかよ。」


「動画見てただけでしょ?」


「勉強しようと思ってたんだよ。」


 俺は、カバンから、ペンケースやらなんやらをバラバラと出す。


「お前、また彼氏と喧嘩したな。」


 美咲は、俺を睨みつける。


「背中に書いてあるぞ。」


「そんなわけあるか!」


 枕を投げつけてくる。こいつは、彼氏と喧嘩をするたびに、俺のところに来ては、少なくない時間を愚痴で浪費して、スッキリしたら、勝手に帰っていく。


「聡~、暇だ~。」


 美咲は、勉強する俺の周りで、うろちょろと構ってちゃんをお披露目中だ。10分もすると飽きて、本棚の漫画を読み始める。


「ねぇ、この主人公って、死んじゃうの?」


「お前、先に展開知って、面白いか?」


「だって、気になるじゃん!」


「だったら、黙って、ページをめくれ。」


「何だよ~。一緒に楽しんでくれてもいいじゃんかー。」


 俺の漫画だぞ。楽しむも何も、全部知ってんだよ。あと、その漫画は、先月も読んでたぞ。


「つまんない。」


 ベッドの上で、ゴロゴロしながら、ブツブツと、雑誌を読んだり、勝手にゲームをつけて、一人で遊ぶ。


「よし、帰る。」


「おう、帰れ帰れ。」


「またね。」


 と、一階に降りていく。あいつ、玄関から、靴下で帰るつもりなんだろか。駆け上がってくる足音が聞こえる。


「そうだ。窓からだった。てへぺろ」


「古いな。」


 彼女は、そう言いながら、帰っていった。彼女の残り香に、ため息が出る。この町で生まれて、今日まで、ずっと一緒に成長してきた。幼馴染というより、兄弟みたいな感じだ。でも、だんだん成長する美咲を見て、ふとした瞬間に、異性を感じてしまった。


 俺は、美咲が好きだ。


 自分の恋心を自覚した時、美咲には、2つ上の彼氏が出来ていた。高校の同じ部活の先輩だった。その人は、大学に進学したが、自然消滅とはならず、今も美咲と付き合っている。


「彼氏いるのに、違う男の部屋に来るなよ。」


 そんな愚痴をこぼしながら、俺は勉強に集中する。時間が経ち、「聡~、ご飯出来たわよ。」と呼ぶ母さんの声で、勉強は終わり、一日は過ぎていく。

 また田舎の何もない時間が始まり、張り合いのない一日が終わる。だが、そんな気持ちとは関係なく、月日は流れていく。


 夏休み、受験生の俺にとっては、関係ない。学校がないだけで、勉強をすることに、変わりはない。


「聡~。暇だろうから、遊んであげるよ~。」


 また喧嘩したんだろうか。ここのところ、毎日やってくる。


「暇じゃないから帰れ。あと、毎日、俺の部屋で、涼みに来るのやめろ。」


「えー、だって、聡の部屋のエアコンのが最新式で、涼しいんだもん。」


 なわけあるか。お前の部屋も、去年、買い替えたばっかりだろ。そこまでエアコンに革新的な進歩はねぇよ。


「お前は、毎日、暇なわけ?受験生だろ?勉強しろよ。」


「残念でした。私は専門学校です。面接以外の試験がないんですー。」


 彼女は、勝ち誇るように、胸を張った。


「毎日、来られるこっちの身にもなれよ。」


「えっ、いいじゃん。女子ともまともに話せない聡が、女子と一緒にいられるんだよ?」


 イラっとした。


「人の気も知らないで。」


「えっ、なんて?」


 俺は、美咲をベッドに押し倒した。「きゃっ」と、小さな悲鳴を上げる美咲。


「毎日、彼氏でもない男の部屋に来やがってって、言ったんだよ。」


「男って、聡じゃん。」


「俺だって、健全な男子なんだよ。毎日毎日、そんな無防備に来やがってよ。俺にも我慢の限界ってもんがある。」


 少しの沈黙が走る。


「いいよ。」


 美咲が小さく言う。俺は、美咲をじっと見つめたまま、動けない。


「したかったら、すればいいじゃん。聡だったら、いいよ。」


 俺は、ハッと我に返った。ベッドに押し倒されている美咲の瞳には、うっすらと涙が浮かんでいる。


「すまん。」


 俺は何かを取り繕うわけでもなく、床に座り込んだ。


-タッタッタッタッ-


 背中から、突き刺すように、静かな足音が聞こえてくる。


「美咲ちゃん、帰るの?今、お菓子用意したのに」


「おばさん、また来るね。」


 1階から、母さんとのやりとりが聞こえたあと、玄関のドアが”ガチャンッ”と閉まる音が響いた。


「やっちまったぁ。」


 俺は、ベッドに倒れこみ、後悔が押し寄せる。美咲が読んでいた漫画、美咲が寝転んで、くしゃくしゃになったタオルケット。そのどれもが、可愛くって、今の自分を締め付ける。


 あの日から、美咲は部屋に来ない。美咲を泣かせたあの日から、どこか現実味のない毎日が過ぎていく。蝉の音だけが、やけに耳に心地よかった覚えがある。


-ピンポーン-


 家のインターホンが鳴った。


「美咲!?」


 そう期待したが、すぐに冷静になった俺は、やるせない気持ちを隠せない。あいつなら、インターホンなんか鳴らさない。1階から、母さんの声が聞こえる。


「あら、亮二くん。久しぶりねぇ。」


 悪友だった。俺はさらに憂鬱になる。


「由美子さん、今日も綺麗ですね。」


「もう、40近いオバサンに何言ってるのよ。聡なら、2階よ。あとでお菓子持ってくからね。」


 調子のいい掛け合いが、俺のストレスになる。


「おう、田舎の裏切り者。勉強してるか?」


「うるせぇな。何しに来たんだよ。」


「ナニしに来たんだよ。」


 俺は、力いっぱい亮二を蹴った。


「バカな事言ってんじゃねぇよ。エロ本ならねぇぞ。」


「ちげーよ。」


「DVDもない。」


「ちげーって。」


「・・・オ、俺?」


「お前、俺を何だと思ってんの?」


 少し救われたような気がした。


「夏祭りだよ!な・つ・ま・つ・り!今週の土日は、夏祭りです。」


「行かねぇよ。」


「ごめん、”行かねぇよ”って部分が良く聞こえなかった。」


「そう言ったんだよ!」


「お前、正気か?」


「はぁ?」


「夏祭りだぞ!男なら、水着女子の次に好きなのは、浴衣女子だろ!」


「あらあら、何の話?楽しそうな声が部屋の外まで聞こえてるわよ。はい、これお菓子ね。」


 俺の部屋に、母さんがお菓子を持ってくる。


「やっぱ夏祭りっすよねー、って、話をしてました。そう思いません?由美子さん。」


「人の母親を名前で呼ぶんじゃねぇよ。」


「そうねー、夏祭りはいいわよね。」


「母さんも、満更でもねぇ顔してんじゃねぇよ。用がないなら、早く行ってよ。」


「うちの息子は、冷たくて嫌ね。」


「俺、由美子さんとなら、夏祭り行きたいっす!」


「言ってなかったけど、私、旦那いるのよ。」


 左手の指輪をヒラヒラと見せる。


「あちゃー。振られたっす。」


「はよ、出てけ!」


 漫才を始めそうな母さんを、部屋から追い出した。


「じゃぁ、由美子さんとも話せたし、今週の土曜日な。」


 亮二は、ドタバタと帰っていった。何しに来たんだよ。あいつ、マジで母さん狙って、、、ないない。


「今週の土曜日か、、、」


 俺は、意味もなく、カレンダーを見た。そして、土曜日がやってきた。


「聡~、行くぞー。」


 予告通り、亮二が来た。


「おう。今、行くわー。」


 ”いってきます”とリビングに向かって、挨拶をして、玄関を出ると、


「おせーなー。」


 亮二のほかに2人いた。


「あっ、ども。」


 3人でお辞儀をしあう。


「だれ、どちらさまで?」


 何とも間抜けである。


「1年の由紀ちゃんと、双葉ちゃんでーす。」


 亮二が元気に紹介してくれた。そして、俺の肩を組み、内緒話をする。


「俺は、由紀ちゃんとデートをする。お前は双葉ちゃんとデートをしろ。いいとこで、分かれるからな。」


「先輩、行かないんですか?」


 由紀ちゃんが催促する。亮二が慌てて応える。


「ごめんごめん。じゃぁ、行こうか。」


 夕暮れ時の暑さが残る中、神社に向かう。


「中野先輩。今日の浴衣どうですか?」


 双葉ちゃんが、話しかけてきた。花火の模様が散りばめられた紺色の浴衣だ。


「可愛いね。花火が双葉ちゃんに、よく似合ってるよ。」


 スラスラと、言葉が出てくる。それを聞いて、彼女は満足そうな笑みを浮かべた。亮二を見たら、親指を立てていた。黙れよ。


「先輩は、今年、海とか行きました?」


「いや、行ってないよ。受験だからさ。遊んでられないよ。」


「じゃぁ、プール行きませんか?ずっと勉強だと、体に良くないですよ。」


「そうだね。今度行こうか。」


「やった。連絡先聞いてもいいですか?」


「いいよ。」


 連絡先を交換して、嬉しそうにスマホを握りしめる双葉ちゃん。


「また連絡します。」


 そんな話をしながら、神社に到着した。夕日は、月と挨拶を交わし、雲一つない満天の空に、夏祭りの熱気が、屋台のコントラストを映し出す。

 屋台の甘い誘惑をかき分けながら、夏祭りを一通り楽しんでいた。


 -ピロン-


 スマホが音と共に震える。


 ”がんばれよ”


 亮二からのメッセージ。振り返ると、亮二と由紀ちゃんは消えていた。射的が当たらず、くやしがる双葉ちゃん。


「当たったのに、全然倒れないんですよー。」


 と、怒ったり、笑ったりする双葉ちゃんを見て、可愛いなと思ってしまう自分がいた。祭りから、少し離れた場所にあるベンチに座る俺たち。遠くから聞こえる祭囃子で、鼓動をごまかしながら、静寂に包まれている二人。


「あっ、なんか食べる?たこやき買ってこようか?」


「・・・」


「か、買ってくるわ。」


 立ち上がろうとする俺の裾を、彼女は、弱弱しく摘まむ。


「・・・」


 俺は、無言のまま座ると、彼女が少し距離を詰める。心臓が飛び出そうなほど、熱くなる背中を感じながら、黙る俺。


「もう少しこのままでもいいですか?」


 夜に鳴く蝉の声に負けてしまいそうな声で、双葉ちゃんは言う。


「うん。」


 彼女は、俺の手に少し触れると、俺は我慢が出来ずに立ち上がって、


「やっぱり、たこ焼きか何か買ってくるよ。」


 答えも聞かずに走り出した。


「たこ焼き2つね。はい、千円ちょうどね。まいど。」


 少しの自己嫌悪と、双葉ちゃんを置き去りにした自分を反省しながら、彼女に謝ろうと戻るその時、浴衣を着た美咲が、俺の目に映りこんだ。彼氏と何か言い合っている。少し距離があるせいで、何を言ってるか聞こえない。盗み聞きなんて、とため息を着くが、気になって仕方がない。

 どうやら、喧嘩をしているようだ。全然連絡くれないだの、帰ってきてくれないだの不満をぶちまけているようだ。それを彼氏がダルそうに聞いている。


「もういいよ!」


 美咲はそういうと、彼氏を置き去りに走り出してしまった。


「なんだよ、あいつ。」


 悪態を付きながら、彼氏もその場をあとにする。俺は考える前に、体が動き出していた。


「ごめん、双葉ちゃん。」


 たこ焼きをベンチに置いて、走り出す。背中から、


「先輩!」


 と、引き止める声が聞こえたが、俺が止まることはなかった。スマホの着信音が止まらない。俺は電源を落とし、境内の端から端まで探したが、美咲はどこにもいなかった。


「聡くん!ここから、神社の中、見えるんだよ!」


 なぜか分からないが、小学生の頃、神社の古い壁を、嬉しそうに覗き込む美咲の姿を思い出した。俺は、額を伝う汗もそのままに、神社の裏に向かった。


「美咲!」


 瞳を真っ赤にした彼女が、そこにいた。


「聡かぁ。何しに来たの?」


「えっ、あっ。」


 何も考えていなかった。


「そっか。見られてたかぁ。」


「見た。」


「来年、留学するんだって。」


「そうか。」


「私に何の相談も無しだよ?」


「ひどいな。」


 別れちまえよって、言い出しそうになった自分が嫌になる。


「なんか大学生って、こんなに違うのかなって思っちゃう。私、彼女の意味あるのかなぁって。」


「でも、好きなんだろ?」


 彼女は応えなかった。


「もう別れよっかなぁ。」


 震える声で言う。俺は何も言えなかった。すると、美咲はこっちに振り返って、俺に抱き着いた。


「美咲?」


「私、中学の頃、聡の事好きだったんだよ、、、ねぇ、聡。先輩と別れたら、一緒にいてくれる?」


 イエスと応えてしまいそうな口元を、ぐっと噛みしめる。


「無理だな。小さい頃から、ずっと兄弟みたいに育ってきたんだぞ?今更じゃないか?」


「分かってた。聡はそういう奴だって。優しいよ。」


 彼女はまた泣いた。ひとしきり泣いたあと、


「知ってたんだ。聡、私の事好きでしょ?」


 背中に変な汗が伝う。


「あぁ。」


「そんな優しい聡に、甘えようとしちゃった。最低だね。」


「なら、彼氏に謝ってこいよ。」


 俺は、美咲を離そうとしたが、彼女の腕にグッと力が入る。


「なんで聡の事諦めちゃったんだろ、、、聡とだったら、こんな苦しい思いもしなかったのかなぁ。もうちょっとこのままでお願い。好きな女の子の泣き顔なんて、見たくないでしょ?もう少しだけ。」


「今言うなよ。ひでぇ奴だな。」


 二人は少しクスッと笑う。どれくらい時間が経っただろうか。


「ありがと。勇気もらった。」


 浴衣の乱れを正した美咲は、グーを出す。俺も応える。


「良い笑顔じゃん。」


「行ってくるね。」


 彼女は、笑って、小走りに俺の元を去った。そのあと、どうなったかは聞いていないが、そんな事はもう、どうでも良くなっていた。

 境内に戻ると、向こうのほうで、スマホを片手に、俺を探す双葉ちゃんを見つける。


「やべっ!?」


 俺は、慌ててスマホの電源を入れようとして、手から滑り落ちる。


「おいおいおいおい。聡く~ん。双葉ちゃん、ほっといて、どこ行ってたのかな?」


 亮二が俺のスマホを拾う。


「す、すまん。」


「謝る相手が違うんじゃねぇか?さすがの仏の亮二様も、怒っちゃうよ?」


 亮二は、俺の首を引き寄せ、


「どうせ美咲ちゃんだろ?黙っといてやるから、貸し一つな。」


 亮二は、双葉ちゃんと、由紀ちゃんのほうへ走り出し、


「双葉ちゅわ~ん、聡、見つけたぜ。」


 それを聞いた瞬間、双葉ちゃんが走ってくる。


「先輩!わ~ん。」


 抱き着かれた。


「心配したんですよ。」


 彼女の瞳が真っ赤に染まっている。


「ごめん。ちょっとお腹痛くなっちゃって。」


 たぶん、嘘だってバレてるだろう。

 花火が、夜空に彩りを加える。


「綺麗。」


 見上げる双葉ちゃん。それを見つめる俺、


「!?先輩、そんなに見られると、恥ずかしいです。」


「!?あっ、あぁ、ごめん。花火に照らされた双葉ちゃんの横顔に見惚れちゃって。」


 彼女が下を向く。


「横顔だけですか?」


 花火の音が体に響く。


「あっ、そんな事ないよ。双葉ちゃん、前から見ても可愛いよ。」


 彼女は、”ぷっ”と笑う。


「何ですかそれ、雰囲気台無しじゃないですか。」


「あっ、えっ。ごめんごめん。」


 花火が終わり、祭りの熱気を残した境内で、


「先輩、またメッセしますね!」


 元気に手を振って、別れを惜しむ双葉ちゃん。姿が見えなくなるまで、見送ったあと、


「振られたか?」


 亮二と男二人きり。


「告白してねぇけど、振られた。」


「双葉ちゃん、可愛いな。」


「可愛いな。亮二にしては、いい仕事した。」


「これで貸し二つな。一個は、由美子さんとのデートでいいよ。」


「人の母親を、名前で呼ぶんじゃねぇよ。」


 俺は、亮二を力いっぱい蹴った。


 だから、田舎は嫌いなんだ。



Fin

読んでいただきありがとうございます。


感想・指摘・アドバイスは大歓迎です。

悪口・誹謗中傷などは、お控えください。

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