備えあれば嬉しいな
少し歩くと目的地は直ぐに見つかった。その建物は街の景色に少し浮くくらいには、木製の外壁で所々ボロボロに見えている。
穴も空いてるけど中は一切見えない。一見すると廃墟にしか見えないけど、立てかけてある看板にミンテの工房と書かれていた。
「すみません、誰かいますk」
「やぁやぁやぁ! 誰かと思えば硝煙の匂いがするじゃあないか!」
駄目、人の話を聞かないタイプの人が来てしまった。身長二メートル超えの大柄で、カーキ色の作業服に保護メガネのような物を装着しているお姉さんが目の前に居る。
「持ってるんだろうけど紹介状はそこに置いときな! いつどんな異邦人の奴が来るかと思えば可愛いお嬢ちゃんが来るなんてツイてるねぇ!」
「あ、あの貴方は……?」
「あたし? あぁ、名前はミンテ・エルクロ。ミンテって呼んでもらってかまわないよ!」
「私はカグミです、よろしくお願いします」
「さぁさぁそんな堅苦しい挨拶は抜きにして奥に行くよ! ほらっ!」
「ぇ、わっ……?!」
紹介状を適当なボロ机に置いた途端、ミンテに俵のように抱えられて奥に連れてかれてしまった。驚いて変な声出ちゃった。
店内がどうなっているかよく分からない。奥にあった扉を通ると中は、狭い室内に座る場所が一つと、それを囲むように様々な物が置かれた机が置かれていた。
「あの、そろそろ降ろしてくれませんか?」
「んー、どこにだい? 座って客に茶を出すスペースなんてありゃしないよ?」
ニヤニヤと、碌でもなさそうな笑みを見せて私に問う。そもそもこれからどうするのかすら聞かされていない。
困っている私の返答を待つ前に、ミンテは私を抱えたまま机を飛び越えて膝の上に置いてしまった。
「それにちゃんとお嬢ちゃんには銃を見ながら決めて欲しいんだ、それがあたしの主義だからね」
「は、はい?」
「ま、見てな! お嬢ちゃんはゴツいヤツよりも拳銃が良いんだろう?」
「そう、ですけど」
言われた通り大きい銃を渡されても使い熟せる自信はない。使いやすく取り回しの効く拳銃の方が都合が良いのは確かだ。
「なら素材を出しな、とびきり良いのを作ってあげるよ! あとで少しばかり金ももらうけどね!」
「分かりました」
そう言って私は完全なドン・ラビットホーンのツノを取り出して渡した。
「ほう、良い素材持ってるじゃあないか! 燃やして倒しちまうと価値が下がるからね。完全なものは珍しい」
「ふむふむ? 良い物が出来そうなら良かったです」
「今のお嬢ちゃんでこれが倒せるなら誇って良いねぇ、このあたしが褒めてあげるよ」
「んむっ……わしゃわしゃしないでください…-」
犬を撫でるように頭をわしゃわしゃとされている。ミンテのペースに乗せられっぱなしだけど、別に悪い気はしない。
それからはどこからか取り出した、今使っている拳銃よりも一回り大きい物をミンテは作業机に置いて分解し始めた。私も必要に応じて余っていたスライムゼリーなどの素材も出して作業を見守っていた。
時々魔法陣が出てるから魔法も使ってるように見えるけど、細かいことはよく分からない。少なくとも、先程までとは違い作業に打ち込む姿は職人と思えた。
「重量のバランスは変えないで、火力が要るね? ならここをこうして……」
「はい、お任せしますね」
ずっと膝の上だったのはあれだけど、あっという間に数十分後が過ぎていた。そうして出来上がったのは、単純ながらも洗練さを感じられる230mm程度の大きさの灰色の拳銃だった。
「ふぅ、どうだい? お嬢ちゃんだけの拳銃さ! ツノは威力の底上げに使わせてもらったよ」
それと同時に性能画面が表示される。
名称:モルマリア
基礎攻撃力:50×10
装弾数:10
属性:無
武器スキル:貫通
カグミ専用にカスタムされた拳銃。通常の物よりも威力が底上げされており、反動は少ないが発砲音は少し大きい。射程はそこそこ。弾の品質によって攻撃力は変動する。
この武器は基本的には死んでも消失せず、また他人から奪われることもない。
所有者:カグミ(消失保護適用中)
製作者:ミンテ・エルクロ
名称:貫通【武器スキル】
スキル効果:MPを10消費し、貫通と唱えると次に発射される弾が命中した際に防御力の20%を無視してダメージを与える。
スキルランク(最大Ⅴ):Ⅱ
「ありがとうございます!」
「良いってことよ、あたしは趣味でやってるようなものだからねぇ! あ、代金は2000Gだ。弾も買ってくかい?」
かなりの強化なのは間違いないはず。それくらいなら直ぐに払って、今使ってるのよりも性能が高い弾を買う。
名称:鉄の弾丸
基礎攻撃力補正:5〜10
特殊効果:無
鉄で作られた弾丸。特殊効果はないが反動は少し増加する。
次の探索に十分な弾を買ったから資金は底をつきかけてるけど、今ならもう少し楽に突破できる場面が増えるだろう。
「早く実地で試してきな? 期待してるよ!」
「えぇ、それではまた」
礼をして、膝から降ろしてもらって足早に工房を出て行った。
読んで頂きありがとうございます。更新が大幅に遅れて申し訳ありません。




