一度目の人生
乙女ゲームとまったくしたことがない。
だけど、投稿サイトにはまり、自分でも書いていた。
いや、はずかし。
だから、流行りものの婚約破棄&溺愛ものの大まかなあらすじも知っている。
受ける要素として知識でため込んでいた。
読もうとしたこともあったけど、ちょっと最初の1ページで断念。
だって、つまらん。
だけど内容は知ってる。
大体の流れは一緒だから。
書こうとしたこともあったけど、無理だった。
なんかね。
で、俺。
どうやら、婚約破棄あーんど溺愛ものの世界に転生してしまったらしい。
でもちゃんと読んだことなかったから、実際にある物語なのかはわからない。
ただわかるのは、今、俺が危機的状況にあることだ。
俺、この世界では男爵子息。
えっと貴族では一番下のクラスね。
んで、なんでこれが婚約破棄と溺愛ものの世界かって思ったのは、まず中世ヨーロッパ風なのに生活魔法がある。
生活ね。
水洗トイレもあるし、洗濯するために水魔法なんてものもある。
勿論乾燥は風魔法、料理のための火魔法も存在する。
もちろん、攻撃とかできる普通の魔法もあるんだけど、貴族しか使えない。
貴族は魔力が高いらしい。
そういう血をもっている。
こういうもろもろの設定から、俺はこの世界は普通の異世界ではないと思った。
ちなみに、俺の置かれている状況はまさに婚約破棄あーんど溺愛のざまあシーン。
俺の役割は、ヒロインの元婚約者で、その妹と関係し、ヒロインとの婚約を破棄したゲス男。妹の夫として伯爵になれると思っていたが、継承権をもっているのはヒロインのみ。ヒロインの母が伯爵で、夫は俺みたいな男爵の身分だった。だから、後妻の子である妹は継承権を持っていない。
だけど、何を勘違いしたのか、伯爵になれると信じていたんだよね。俺。
っていうかヒロインの父、義母、異母妹、俺の家族もみんな勘違いしていた。
ヒロインは苦労していいて、俺はわかっていたはずなのに妹の色気に惑われた馬鹿な男。
おかげで今、妹と一緒にざまあされようとしている。
「そこの女、よくも私の妃を虐げてきたな。証拠はすべて上がっている。そこの男、お前も私の妃の元婚約者であり、虐待を知っておきながら何もしなかった。万死に値するといいたいところだが、妃の温情で炭鉱での労働に従事してもらうことにした。懸命に働き、己の行動を死ぬまで反省しろ」
炭鉱、まじっつか。
死ねって言っているようなもんじゃねーか!
なんだよ。俺。
なんで今思い出すんだよ。前世なんて。これから逆転なんて無理だ。
元婚約者ってだけで、王子の奴めっちゃ睨んでるし。
なんか余計なこと話したら、首飛びそう。
ああ、こんなことなら、前世なんて思い出さなければよかった。
「殿下!どうか、どうか許してください。息子は知らなかったんです。お願いします!」
「母上!」
お母さん、だめだよ。
王子めっちゃ怒ってるから!
発言許さてれてないのに!
やばいから!
「ジュード!ジュード!」
お母さん、ごめん。
妹の色気に騙された俺を許して。
ちゅうか、俺、死にたくねぇ!
いま目覚めたばっかだぞ。
「その者も炭鉱に一緒に送ってやれ!」
ああ、なんてことだ。
お母さんには罪はない。
まあ、頭は弱かったけど、罪はない!
「殿下!どうか、母に御温情を賜りたく。お願いします!」
俺は動いたらやばいって知っていたけど、立ち上がって王子にすがった。
「無礼者!」
そしたら護衛に頭を殴られ、そのまま視界が真っ暗になった。