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オーバークロック・ノア  作者: くじらちさと
選別の地
25/57

section6『交錯する戦場』

誰もが疑い、どこかで「本当は大丈夫なんじゃないか」と思っていた。

だがそれは甘えだった。


《ルヴァ=ヘレイス》は、“殺すため”に存在する。

その現実が、今まさに牙をむく。

──バンッ!!


乾いた破裂音とともに、地面が裂け、鋭利な杭のような“それ”が突き出した。

寸前で跳ね退いた真の足元を、風切り音を伴ってかすめていく。


(地面だ……!)


真は即座に叫んだ。


「 不用意に動くな、足元をよく見ろ!」


叫びの最中、別の場所からも同じように地面が隆起し、もう一撃の杭が弾ける。

横にいた男をかばうように、鳴がとっさに腕を引いた。


「危ないっ!」


細い身体で、必死に支えようとする鳴。手は震えていたが、その瞳は真っ直ぐだった。


「……鳴……」


真が小さく呟く。彼の《ミロク》が視界に走る。

赤く染まった“危険”が周囲に次々と浮かび上がる。


(この領域全体が、殺しに来てる……!)


目の前で別のモブが足元から突き出た杭に脚を貫かれ、悲鳴を上げて崩れ落ちる。

鮮血が土を染め、誰かが息を呑んだ。


「こっちに来い! まだ反応が薄い場所に下がる!」


真が導くように動き出すと、残りのメンバーも必死についていく。


鳴も、足が震えながらもその後を追った。


「俺、怖いけど……ここにいたらもっと怖い……!」


その言葉は、むしろ自分自身を奮い立たせるような声だった。


――一方、その頃。


凪たちのグループでも異変が起きていた。

凪は、頭上に広がる空の“揺らぎ”に気づき、顔を上げる。


「……来るぞ。上だ!」


次の瞬間、空間が歪んだ。


気づいたときには、すでに“何か”が降下してきていた。

音もなく、質量すら感じさせずに──だが確実に命を奪う速度で。


「レイラ、下がれ!」


隼人が叫ぶと同時にレイラを抱えて横へ飛び、間一髪で直撃を避ける。


「ひっ……なに、いまの……!?」


レイラが声を上げた。


「なんか……空から、“何か”が降ってきた、ような……」


隼人が険しい表情で周囲を見渡す。


「見えねぇ。音もない。気配すらねぇ。だが確かに、“殺すつもり”で来てる」


凪は歯を食いしばる。


(可視化できない攻撃……)


何かがまた、別の地点に落ちた。


バンッ!


“それ”に当たった1人が吹き飛ばされる。地面に叩きつけられ、動かなくなる。


「……っ!」


レイラが顔を覆い、隼人が声を荒げた。


「ふざけんな……!」


凪は周囲を冷静に見回し、指示を飛ばす。


「移動する。ここは広すぎる、遮蔽もない……」


「でも、どこに……!」


「“見えないもの”に殺されるくらいなら、動いた方がいい!」


凪の声に、残った面々が頷いた。


どちらのグループにも、共通するのはひとつ──

この異世界は、“行動しない者”から死んでいく。

声を上げる間もなく、命が消える。

この世界での死は、あまりに唐突で容赦がない。


それを止められる者が、今はまだ、ひと握りしかいない──

そして次の犠牲は、もうすぐそこまで迫っていた。

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