section6『交錯する戦場』
誰もが疑い、どこかで「本当は大丈夫なんじゃないか」と思っていた。
だがそれは甘えだった。
《ルヴァ=ヘレイス》は、“殺すため”に存在する。
その現実が、今まさに牙をむく。
──バンッ!!
乾いた破裂音とともに、地面が裂け、鋭利な杭のような“それ”が突き出した。
寸前で跳ね退いた真の足元を、風切り音を伴ってかすめていく。
(地面だ……!)
真は即座に叫んだ。
「 不用意に動くな、足元をよく見ろ!」
叫びの最中、別の場所からも同じように地面が隆起し、もう一撃の杭が弾ける。
横にいた男をかばうように、鳴がとっさに腕を引いた。
「危ないっ!」
細い身体で、必死に支えようとする鳴。手は震えていたが、その瞳は真っ直ぐだった。
「……鳴……」
真が小さく呟く。彼の《ミロク》が視界に走る。
赤く染まった“危険”が周囲に次々と浮かび上がる。
(この領域全体が、殺しに来てる……!)
目の前で別のモブが足元から突き出た杭に脚を貫かれ、悲鳴を上げて崩れ落ちる。
鮮血が土を染め、誰かが息を呑んだ。
「こっちに来い! まだ反応が薄い場所に下がる!」
真が導くように動き出すと、残りのメンバーも必死についていく。
鳴も、足が震えながらもその後を追った。
「俺、怖いけど……ここにいたらもっと怖い……!」
その言葉は、むしろ自分自身を奮い立たせるような声だった。
――一方、その頃。
凪たちのグループでも異変が起きていた。
凪は、頭上に広がる空の“揺らぎ”に気づき、顔を上げる。
「……来るぞ。上だ!」
次の瞬間、空間が歪んだ。
気づいたときには、すでに“何か”が降下してきていた。
音もなく、質量すら感じさせずに──だが確実に命を奪う速度で。
「レイラ、下がれ!」
隼人が叫ぶと同時にレイラを抱えて横へ飛び、間一髪で直撃を避ける。
「ひっ……なに、いまの……!?」
レイラが声を上げた。
「なんか……空から、“何か”が降ってきた、ような……」
隼人が険しい表情で周囲を見渡す。
「見えねぇ。音もない。気配すらねぇ。だが確かに、“殺すつもり”で来てる」
凪は歯を食いしばる。
(可視化できない攻撃……)
何かがまた、別の地点に落ちた。
バンッ!
“それ”に当たった1人が吹き飛ばされる。地面に叩きつけられ、動かなくなる。
「……っ!」
レイラが顔を覆い、隼人が声を荒げた。
「ふざけんな……!」
凪は周囲を冷静に見回し、指示を飛ばす。
「移動する。ここは広すぎる、遮蔽もない……」
「でも、どこに……!」
「“見えないもの”に殺されるくらいなら、動いた方がいい!」
凪の声に、残った面々が頷いた。
どちらのグループにも、共通するのはひとつ──
この異世界は、“行動しない者”から死んでいく。
声を上げる間もなく、命が消える。
この世界での死は、あまりに唐突で容赦がない。
それを止められる者が、今はまだ、ひと握りしかいない──
そして次の犠牲は、もうすぐそこまで迫っていた。




